教えて!長期株式投資さんの資産形成術 第4回「PER(株価収益率)」を活用して割安な銘柄を見抜けるようになろう!

みなさんこんにちは。長期株式投資です。
この連載では、これから投資を始めたいと考えている初心者の方が、無理なく基礎を身につけられるよう、全12回にわたって株式投資の重要ポイントを体系的に解説していきます。毎月1回の更新で全12回を予定しており、最終回を迎える頃には、読者のみなさんが初心者を卒業できる状態になっていることを目標としています。
また、投資のイメージをより具体的に持っていただけるよう、毎回、私の保有銘柄トップ20を公開し、簡単なコメントも添えて紹介していきます。銘柄選びのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
今回は第4回として、株式投資の世界で最もよく使われる指標のひとつであるPER(株価収益率)について学んでいきましょう。PERは、基本的な指標でありながらも、奥が深く、使いこなせるようになると企業分析の精度が一段上がります。
PERとは何か?「株価が利益の何倍か」を示す指標
株式投資を始めると、必ずといっていいほど目にするのがPERという指標です。
PERは、「Price(株価)」「Earnings(利益)」「Ratio(比率)」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。
計算式はとてもシンプルで、株価をEPS(1株利益)で割るだけです。
たとえば株価が1,500円でEPSが100円なら、PERは15倍になります。この「何倍か」という感覚が、PERを理解するうえでとても大切です。株価が利益の15年分、20年分、あるいは10年分で買われている──そんなイメージを持つと、PERの意味がぐっとつかみやすくなります。
一般的には、PER15倍前後が適正水準とされ、10倍以下なら割安、20倍以上なら割高と判断されることが多く見られます。ただし、これはあくまで目安であり、企業の業種や成長性によって大きく変わります。
たとえば、成長期待の高いハイテク企業はPERが高くなりやすく、逆に成熟産業であるエネルギー企業はPERが低くなりやすい傾向があります。同じPER15倍でも、ハイテク企業では「割安」、エネルギー企業では「割高」と判断されることもあるほどです。
つまり、PERを見るときは「同じ業種・同じ規模の企業と比較する」ことがとても重要になります。
PERと株式益回りの関係
第3回の連載で「株式益回り」について学びましたが、実はこの株式益回りはPERの逆数になっています。
PERが15倍であれば、株式益回りは1/15、つまり約6.7%です。この6.7%という数字は、過去の株式市場の平均リターンと近い水準であることから、PER15倍前後が妥当な水準とされる根拠のひとつになっています。
PERと株式益回りは表裏一体の関係にあり、どちらを使っても「株価が利益に対して高いのか、低いのか」を判断できます。ただ、実務ではPERのほうが一般的に広く使われており、個人投資家同士の会話でもPERを基準にして話が進むことが多いように感じます。
PERは株価の変動で毎日変わる
PERは「株価 ÷ EPS」で求められるため、株価が動けばPERも動きます。株価が上がればPERも上がり、株価が下がればPERも下がります。つまり、PERは株価と同じように日々変化していく指標です。
たとえば、株価が2,000円でEPSが200円の企業(PERは10倍)があったとして、株価が2,000円から4,000円に上昇すれば、PERは10倍から20倍に上昇します。逆に株価が1,000円に下がれば、PERは5倍になります。このように、PERは株価の動きに敏感に反応します。
また、業績が一定であれば、株価が下落したタイミングのほうが低いPERで投資できるため、割安に買えるという見方もできます。そのため、PERを見るときは「今の株価水準が利益に対して高いのか、低いのか」を常に意識することが大切です。
さらに、株価は市場のセンチメント(投資家心理)によって大きく動くことがあります。決算内容が良くても株価が下がることもあれば、逆に業績が悪くても株価が上がることもあります。こうした短期的な値動きに惑わされず、PERを通じて「利益と株価のバランス」を冷静に見ることが、長期投資ではとても重要です。
異常値となっているPERをどう読む?「5年平均EPS」で判断する方法
企業の業績は、景気や一時的な要因によって大きくぶれることがあります。特に、特別損失などの影響でEPSが一時的に大きく落ち込むと、PERが50倍や100倍といった極端な数字になってしまうことがあります。こうした場合、単年のPERだけでは企業の実力を正しく判断できません。
そこで有効なのが、過去5年程度の平均EPSを使ってPERを算出する方法です。たとえばINPEXの場合、過去5年の平均EPSが289円だとします。仮に株価が4,000円とするならば、5年平均EPSを使ったPERは約14倍となり、単年EPSで計算した場合よりも実態に近い判断ができます。
企業の利益は短期的には大きく変動しますが、長期的には平均値に近づく傾向があります。そのため、複数年の平均EPSを使うことで、より安定した投資判断が可能になります。
また、平均EPSを使うメリットは「景気循環の影響をならせる」点にもあります。景気が良い年はEPSが跳ね上がり、景気が悪い年はEPSが落ち込みますが、平均値を使うことで企業の本来の実力に近い数字を把握できるのです。
PERが低いのに株価が下がる?「バリュートラップ」に注意
PERが低いと「割安だ」と思って投資したくなりますが、ここには大きな落とし穴があります。それがバリュートラップです。バリュートラップとは、PERが低くて安いと思って買ったのに、実は安くなかった──そんな状況のことです。典型的なケースを見てみましょう。
ある企業の株価が2,000円、EPSが200円、PERが10倍だったとします。割安だと思って投資したところ、その後、業績が悪化してEPSが半分の100円に落ち込みました。EPSが下がったためPERは20倍に上昇し、同時に株価も下落してしまいます。最終的に株価が1,000円まで下がったとしても、PERは当初の10倍に戻るだけで、株価は大きく下がったままです。
このように、PERが低い理由が「業績悪化」だった場合、株価はさらに下落する可能性が高くなります。
バリュートラップを避けるためには、業績が安定している企業を選ぶことが何より重要です。EPSが長期的に成長している企業であれば、仮に株価が下落しても、利益の裏付けが株価の下支えとなり、下落幅が限定的になることが多いためです。
また、安定配当銘柄は株価が下落すると配当利回りが上昇するため、株価下落のクッションとして働くことがあります。こうした企業は、長期投資において非常に心強い存在です。
PERは「企業の利益に対して株価が高いか安いか」を測る基本指標
PERは株式投資の世界で最もよく使われる指標のひとつですが、万能ではありません。大切なのは、PERの背景にある「利益の質」や「業績の安定性」をしっかり見ることです。
今回のポイントを整理してみましょう。
PERは株価が利益の何倍で買われているかを示す指標であり、一般的には15倍前後が適正水準とされます。ただし、業種や企業の成長性によって適正な水準は変わるので、同業他社との比較が欠かせません。
また、業績が一時的に悪化している企業ではPERが異常値になることがあるため、複数年の平均EPSを使って判断する方法も有効です。そして、PERが低いからといって安心するのではなく、その背景にある業績の動きをしっかり確認することが、バリュートラップを避けるうえで重要になります。
【公開】長期株式投資の現在の保有銘柄トップ20と投資戦略
さて、続いて執筆者の保有銘柄トップ20のコーナーです。この連載では投資の基本を学んでいただくことに加えて、執筆者がどのような投資を行っているのかについて、保有銘柄トップ20を毎回公開しコメントを添えて紹介していきます。これにより、読者のみなさんに投資や運用の具体的なイメージを持っていただければと考えています。
前回(4月10日)と比較すると、買い増しによって西日本旅客鉄道(JR西日本)がTOP20に加わり、前回の評価額が20番目だったコマツが外れています。JR西日本は「中期経営計画2030」において株主資本配当率(DOE)3.5%程度を目安とし、機会を捉えた自己株式取得にも言及しており、株主還元に積極的な姿勢を示しています。同業他社と比較して配当利回りが高いこと、DOE3.5%を目安としており減配リスクが低いことに加え、1枚で50%割引となる鉄道優待券(自社営業路線内)も魅力的です。JR西日本の営業エリアにお住まいであれば、投資対象として検討してみる価値があるかもしれません。
他には、NTTを79株買い増ししています。大型の連続増配株でありながら、株価が低迷していることから配当利回りは高くなっており、長い目で見れば悪くないという判断からの追加投資です。また、東京海上HDを1株のみですが追加投資しています。
減配リスクの低い銘柄を、配当利回りが高いタイミング(自分が納得できる水準)で投資できれば、長期的には良い結果につながりやすいと考えています。どのような条件であれば自分が納得して投資できるのか、一度整理してみることは決して無駄になりませんので、投資の際にはぜひ意識してみてください。
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
1977年生まれ、熊本県出身。「日本の配当株」専門の元サラリーマン投資家であり、1級FP技能士。2004年から株式投資をはじめ、ハイリターンを求めて新興市場にて個別銘柄の投資をするも、2006年にライブドア・ショックで大きな損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマン・ショックで壊滅的な痛手を被る。そこで、2009年からはポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5,128円と過去最高を更新。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアを実現した。これまでの投資生活で磨いた技術やノウハウをX(旧:Twitter)やブログにて配信し、個人投資家のサポートに尽力するほか、著書に『【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 経営戦略から“ほぼ永遠に儲かる企業”を探す方法』(KADOKAWA)、『マンガでわかる!超はじめての株式投資』(永岡書店)がある。



