教えて!長期株式投資さんの資産形成術 第1回 資産形成の概要を理解しよう!

長期株式投資が教える、インフレ時代の資産形成に株式が適している理由
私は2023年3月に会社を早期退職して、現在は株式を保有することによって得られる配当金を主な収入源として生活しています。会社員時代には安定した給与収入がありましたが、退職後はコツコツと積み上げてきた資産からの収入で暮らすというライフスタイルへと移行しました。
2004年に株式投資を始めて以来、ライブドア・ショック(2006年)、サブプライム危機(2007年)、リーマン・ショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、チャイナショック(2015年)、コロナショック(2020年)と、幾度もの暴落を経験してきました。それでも投資を続けた結果、2025年には税引き後で年間約580万円の配当金を受け取れるようになっています。
現在の日本では長期にわたって続いたデフレから脱却し、インフレが常態化しつつある時代に入ったといえるでしょう。現金をそのまま保有していると、購買力が徐々に減少していくことは避けられません。つまり、銀行口座にお金を預けているだけでは、購買力ベースで資産の価値が目減りしてしまうのです。
インフレ対策としては、株式や不動産、ゴールドなどを保有することが代表的な方法です。株式においては、企業の売上や利益は物価上昇に連動しやすいため、株価もインフレ局面で上昇する傾向があります。不動産はインフレ下でも価値が下がりにくく、家賃収入は物価上昇に連動しやすいという特徴があります。ゴールドは価値保存の手段として古くから利用されてきました。通貨価値が下がる局面でも、ゴールドの価値は相対的に維持されやすいとされています。
このようにインフレ対策としては様々な投資先がありますが、長期的な資産形成を目指すのであれば、株式投資が適していると考えています。というのも、歴史的に見て株式は長期的に最も高いリターンを示してきたからです。
図1をご覧ください。この図では、1801年に投資した1ドルの価値が220年後にいくらになったかを示しています。株式は約233万倍へと増加しています。長期債は約2000倍、短期債は245倍、ゴールドは約4倍に増加しました。他方、現金はインフレの影響で購買力に換算するとわずか0.043ドルまで低下しています。このことはインフレ時代に現金を保有し続けることのリスクを如実に示しています。
図1 実質トータルリターン指数(1801年~2021年)
出典:ジェレミー・シーゲル、ジェレミー・シュワルツ著『株式投資 第6版』(日経BP)
株式投資のメリットや、インフレ時代に現金を保有し続けることのリスクについて、ご理解いただけたのではないでしょうか。
現在、株式投資に関する情報はインターネット上に溢れており、SNSやブログ、動画配信などを通じて、誰でも簡単に情報を入手することができます。しかし、投資経験の浅い個人投資家にとっては、自分のレベルに合った情報かどうかを見極めるのは難しく、知識が断片的になりがちです。その結果、基本を身につけるまでに必要以上の時間を要している可能性があります。体系的に株式投資を学ぶことができるコンテンツは依然として少なく、この点に課題を感じていました。
そんな中で、中長期の投資を目指す方向性はジャパニーズ インベスターと親和性が高いこともあり、この連載を執筆させていただくことになりました。本連載では投資の基礎を体系的に学ぶことができます。継続的な学習により、読者のみなさんが1年後には株式投資の基礎を習得した個人投資家になっていただくことを目標としています。
本連載は毎月1回のペースで、全12回を予定しています。
第1回 資産形成の概要を理解しよう!
第2回 株式投資における配当利回りを理解しよう!
第3回 EPS(1株当たり純利益)を理解し、業績をチェックしよう!
第4回 PER(株価収益率)を活用して割安な銘柄を見抜けるようになろう!
第5回 PBR(株価純資産倍率)を理解し、下落相場を乗り切る力を身につけよう!
第6回 実際に株式投資を始めてみよう!
第7回 自己資本比率と信用格付を活用して財務健全性をチェックしよう!
第8回 売上高営業利益率を理解して企業の競争力をチェックしよう!
第9回 ROEとROAを理解して企業の資本効率を見極めよう!
第10回 決算短信サマリーを理解して株式投資に役立てよう!(前編)
第11回 決算短信サマリーを理解して株式投資に役立てよう!(後編)
最終回 有価証券報告書を株式投資に活かそう!
私は2023年4月から2024年3月にかけて、オンラインで株式投資を中心とした資産形成に関する学習教室を運営し、多くの受講生に1年間を通じて学んでいただきました。その経験を踏まえて、初心者の方にも一層分かりやすい内容にしていきたいと考えています。また、今回の取り組みは当時の受講生にとっても良い復習の機会になると考えています。ぜひこれからの1年間もご一緒いただけましたら幸いです。
長期株式投資の失敗と成功:配当金3000万円超えまでの道のり
さて、ここで執筆者の投資経験について触れておきたいと思います。
私は大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)で学生生活を送りましたが、在学中に金融教育を受ける機会はありませんでした。社会人になってからも株式を直接扱う部署で働いた経験はなく、投資の知識はすべて独学で積み上げてきました。
もちろん、最初は不安もありました。「本当に自分にできるのだろうか」と迷ったこともあります。しかし、少しずつ学び、実践を重ねるうちに、株式投資は特別な人だけのものではなく、誰にでも開かれた世界だと実感するようになりました。大切なのは、正しい方法を守り、焦らず続けることです。
投資は決して難しいものではありません。特別な教育や職務経験がなくても始められますし、続けていくことができます。はじめの一歩が、未来をより豊かにするきっかけになるはずです。
私は2004年に株式投資を始めました。最初は新興市場の銘柄へ投資していましたが、その後に起きたライブドア・ショックで大きな損失を経験しています。当時は、投資雑誌の理論株価を参考に「まだ上昇余地がありそうだ」と感じて投資するなど、十分な根拠を持たずに雰囲気で投資をしていたのです。基本的な投資指標を理解していれば、こうした失敗をある程度は回避できたはずだと今では考えています。
この大きな失敗をきっかけに新興市場での投資は控えるようになり、2008年頃からは配当を意識した投資へと切り替えました。それ以来は一貫した方針の下で運用を続けられています。
図2をご覧ください。私は2008年から受け取った配当の記録をつけていますが、2008年に十数万円だった金額が2025年には600万円近くにまで増加しています。「ちりも積もれば山となる」とはまさにこのことで、2008年からの累積配当は3000万円を超えました。
図2 2008年からの受取配当額の推移(税抜き後)
株式投資において、短期間で大きなリターンを得ることは容易ではありません。その一方で、長い時間をかけて投資を続けていれば相応のリターンを得られる可能性が高まります。私が20年以上の投資経験を通じて確信するようになったのは、株式投資は長く続けることで成果が現れるものだということです。
株式投資は難しそうだと感じて、なかなかはじめの一歩を踏み出せない読者の方も少なくないでしょう。ご安心ください。小学校で習う足し算、引き算、掛け算、割り算ができれば、投資の基本を身につけることは十分に可能です。思っているほど難しいものではありません。ぜひ時間をかけて、ゆっくりと取り組んでみてください。
【公開】長期株式投資の保有銘柄トップ20とポートフォリオ戦略
本連載では投資の基本を学んでいただくことに加えて、執筆者がどのような投資を行っているのかについて、保有銘柄トップ20を毎回公開しコメントを添えて紹介していきます。これにより、読者みなさんに投資や運用の具体的なイメージを持っていただければと考えています。
図3では、私が現在保有している銘柄のうち、評価額上位20銘柄を高い順に掲載しています。保有方針は、遠い将来にわたっても売却する予定のない銘柄を「永久」、少なくとも数年単位で保有を継続する予定の銘柄を「長期」、現在のところ売却の予定はないが状況次第では売却を検討する可能性のある銘柄を「中期」、売却を検討している銘柄を「売却検討」というふうに分類しています。
本連載では保有銘柄トップ20の情報を毎回アップデートして掲載するのとともに、直近で行った売買についても解説を加えたいと考えています。この点、投資初心者の方はもちろん、ある程度の投資経験をお持ちの中級者の方にも楽しんでいただける内容にしていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。
それではみなさん、来月から1年間一緒に頑張っていきましょう!
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
1977年生まれ、熊本県出身。「日本の配当株」専門の元サラリーマン投資家であり、1級FP技能士。2004年から株式投資をはじめ、ハイリターンを求めて新興市場にて個別銘柄の投資をするも、2006年にライブドア・ショックで大きな損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマン・ショックで壊滅的な痛手を被る。そこで、2009年からはポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5,128円と過去最高を更新。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアを実現した。これまでの投資生活で磨いた技術やノウハウをX(旧:Twitter)やブログにて配信し、個人投資家のサポートに尽力するほか、著書に『【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 経営戦略から“ほぼ永遠に儲かる企業”を探す方法』(KADOKAWA)、『マンガでわかる! 超はじめての株式投資』(永岡書店)がある。
