高配当株投資で資産をどう増やせばいいのか。「株式保有後」に持つべきマインドと管理方法

高配当株投資では購入時の銘柄選びが重要だが、その保有株をどのように管理し、買い増しや売却を検討するかも重要なポイントになる。約18年におよぶ高配当株投資によって、2023年に資産1億円を突破した個人投資家の「長期株式投資」氏に、保有してから持つべきマインドや株式の管理方法についてアドバイスをもらった。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
保有銘柄の「投資理由」と「保有方針」を把握する
──高配当株投資を実際にはじめてみた個人投資家に、保有株を管理するうえでのアドバイスはありますか?
長期株式投資:ひとつは、「投資理由」の記録です。高配当株投資をはじめた当初は銘柄数も多くはないですし、それぞれの銘柄に対して「なにを期待して買ったか」は覚えていられると思います。しかし、年数も経って保有銘柄数も増えてくると、次第にわからなくなってしまうのです。
ですから、保有銘柄を証券口座のマイページだけで管理するのではなく、Excelなどにリストアップし、「買った理由」をメモしておくといいでしょう。どういう成長シナリオや収益性を想定して買ったのかを見返せれば、現在の状況との相違がわかって売却か継続保有かの検討ができます。
もうひとつは、銘柄ごとの「保有方針」を明確にしておくことです。保有銘柄を「永久」「長期」「中期」「売却検討」の4つに分類しておくことで、買い増しを行う際の優先度が明確になります。以下の表は、わたしの保有銘柄上位の表ですが、このように保有方針を管理する項目をつくるといいかもしれません。
──具体的にはどのような基準で分類されているのでしょう?
長期株式投資:わたしが「永久」に格付けする銘柄は、確かな経営資源を持ち、業界をリードする安定企業です。例えばJT、「たばこ」という独占事業をグローバルに展開していますし、NTTは世界屈指の通信技術を保有する企業です。商社では、三菱商事と三井物産は、何十年もかけて築き上げてきた資源事業の資産があり、他の商社とは資産の厚みが違います。
こうしたストロングポイントは、他社が簡単に追いつけるものではありません。世界一の投資家として知られるウォーレン・バフェット氏は、「誰がやっても競争力を発揮できる会社」を選ぶことが重要だと述べていますが、まさに経営陣が変わっても変わらず市場をリードできる盤石な企業です。
そのうえで、実際に十年程度保有して「将来にわたって大丈夫だろう」と自分自身が確信を持てた会社は「永久」保有としています。購入時に過去のEPSの推移を見れば業績の安定感は見えますが、自分が長く保有することで、中期経営計画のKPIの達成度や、経済環境が変動したときの安定感など、より精緻に企業の強さを実感できます。そうして信頼を置いた銘柄は、基本的に売却を検討することはなく買い増しを進める銘柄とします。
「長期」は、まだ永久保有の確信には至らないけれど長く保有できそうだと判断している銘柄です。わたし自身、かなりの保有株数を持ちながら「長期」と位置づける積水ハウスは、国内外で累計建築戸数世界一の確かな実績を持つ会社ですが、保有歴がまだ5年程度と浅いため「長期」に留まっています。
「中期」は「試しに買ってみた」段階の銘柄として位置づけています。わたしは現在、130銘柄ほど保有していますが、半分以上は100株以下での保有です。株主優待が目的の銘柄を除けば、実験的に買ってみてどのような値動きをするのかを観察する目的で買っているので、1株で保有しているものもあるほどです。
当初は期待して買ってみたけれど、数年保有してみて想定から外れている銘柄や、業績悪化が続くようなら「売却検討」にスライドさせています。これはあくまでわたしの保有方針の考え方ですから、みなさんはみなさんなりの基準で保有方針を考えてほしいと思います。
暴落時の心構えと分散投資によるリスクヘッジ
──高配当株投資において、相場の暴落は大きく買い増しを進めるチャンスであることは間違いありません。しかし、特に投資ビギナーの場合、資産の減衰に恐怖し「狼狽売り」してしまうケースも見られます。長期株式投資さんは、どのような心構えと準備をして暴落に対応していますか?
長期株式投資:株式投資をはじめたばかりの人であれば、大前提として、株価の暴落は「普通に起こること」と認識することです。相場全体が暴落するときには、自分の保有株の株価も下がり、資産が減少していくことに恐怖を覚えるのは仕方のないことです。でも、それで狼狽売りして損失を確定させてしまったら、投資による資産形成は頓挫します。
わたしも2008年のリーマンショックでは、約600万円の含み損を抱えて一時的に資産が半減しました。メンタル的にはつらいものがありますが、日経平均が3分の1程度になったのですから、それはもう、自分だけでなく日本株全体がマイナスになっている状態です。でも、そこから大企業も中小企業も巻き返しを図り、時間の経過とともに株価は回復します。暴落に対しては、「そういうもの」と思って我慢するだけです。
むしろ、暴落や下落相場は、「本来の企業価値に比して、一時的に株価が大幅割安になる」重要な買い増しのチャンスです。その意味では、投資資金に余裕を持っておき、先の「永久」保有に格付けした銘柄を買い増すタイミングだと考えるべきでしょう。
──暴落や下落相場を見越した分散投資は行っていますか?
長期株式投資:おおまかにではありますが、景気敏感株(シクリカル銘柄)とディフェンシブ銘柄に分類して、全体のバランスを取るようにしています。ディフェンシブ株は株価暴落時でも下落幅が限定的である一方、暴騰局面や上昇相場でも上昇幅は限定的なので、資産額の変動を抑えることができます。
先の保有銘柄トップ10でいえば、NTTやJTなどはディフェンシブ株の代表格であり、たとえ日経平均株価が半値まで落ち込んだとしても、現在の水準から半値になることは考えにくいでしょう。一方、シクリカル株であるINPEXなどのエネルギー産業は原油価格に連動して値動きが激しくなりますし、商社も経済情勢の影響を大きく受けます。
長く続けて経験を積めば投資判断は楽になる
──長期株式投資さんが株の売却を検討するのは、どのようなタイミングですか?
長期株式投資:基本的に、当初の投資前提が崩れた場合です。実際に今年は評価額で保有銘柄トップ10に入るほど保有していた、あるサービス業の株式を売却しました。この銘柄は、購入時にはPBRで0.7倍、配当利回り4%超のディープバリュー株だったのです。しかし、購入時より株価が2倍になって配当利回りが2%台に落ち、減配こそしませんが配当が3年間据え置きになったのです。
ですから、別に業績が悪化したわけでもないのですが、「安くて高配当」という当初の前提が崩れたので、「売却検討」のリストに入れることを判断しました。
──業績や見通しも悪化していないなら保有し続けるという選択肢もあると思うのですが、そこは長期株式投資さんのルールなのですね。
長期株式投資:そうですね。株式を買うときには、財務指標や事業内容、経営基盤をしっかりと調べて、ストーリーを描くことが大事だと考えています。ですから、それを下回るのなら売却し、よりよいストーリーが描ける銘柄に投資するということです。先の暴落時の対応についても、購入段階から暴落時の値動きも想定してストーリーを描いておけば、狼狽売りのようなメンタルのブレを防ぐことができます。
──ただ、投資経験が少ない個人投資家の場合は、先行きを想定するのは難しいことに思えます。
長期株式投資:慣れないうちは、将来的な成長イメージを描くことが難しくて当然です。よって、「想定と違ったから売却する」というのも、投資に慣れてからで十分だと思います。ただし、初心者であっても、株を買った企業の将来的な成長をイメージすること自体は大切です。スポーツなどもそうではありませんか? 実践してミスを検証しながら、精度を高めていくことが成長につながりますし、そうやって自分なりの投資スタイルができあがっていくと考えます。
初めはわからないことばかりで、損失の可能性も見通し切れず、「大きな損失をしてしまったら自分はどうなるのか……」と不安な人もいるでしょう。でも、それは最初のうちだけです。株式投資の経験を積んで、様々なケースを実際に経験し、財務指標などから株価の見通しなどを立てられるようになると判断が楽になります。
知識と経験を積むことで、「こうなった場合は売却する」「こうなった場合は買い増しする」といった投資判断をルール化できるので、悩むことが少なくなるのです。本来、高配当株投資はメンタルを削って行うものではなく、ゆるやかに行うものだと思っています。あまり気張らず、結果を求め過ぎずに、投資家としての成長を楽しんでください。
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
1977年生まれ、熊本県出身。「日本の配当株」専門の元サラリーマン投資家であり、1級FP技能士。2004年から株式投資をはじめ、ハイリターンを求めて新興市場にて個別銘柄の投資をするも、2006年にライブドアショックで大きな損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマンショックで壊滅的な痛手を被る。そこで、2009年からはポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5,128円と過去最高を更新。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアを実現した。これまでの投資生活で磨いた技術やノウハウをX(旧:Twitter)やブログにて配信し、個人投資家のサポートに尽力するほか、著書に『【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 経営戦略から“ほぼ永遠に儲かる企業”を探す方法』(KADOKAWA)、『マンガでわかる! 超はじめての株式投資』(永岡書店)がある。
