教えて!長期株式投資さんの資産形成術 第3回「EPS(1株当たり純利益)」で企業を見極める方法

みなさんこんにちは。長期株式投資です。
この連載では、これから投資を始めたいと考えている初心者の方が無理なく基礎を身につけられるよう、順を追って体系的に解説していきます。毎月1回の更新で全12回を予定しており、最終回を迎える頃には初心者を卒業できる状態を目標としています。
また、投資のイメージをより具体的に持っていただけるよう、私の保有銘柄トップ20を毎回公開し、簡単なコメントも添えて紹介していきます。銘柄選びのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
それでは第3回では、EPS(1株当たり純利益)について学んでいきましょう。
投資の基本中の基本!EPSとは「1株あたりの儲け」を知る指標
株式投資を始めてみると、必ずといっていいほど目にする指標があります。そのひとつが「EPS(イー・ピー・エス)」です。
企業の決算資料や投資情報サイトなどでは当たり前のように掲載されていますが、初心者の方にとっては「アルファベットは難しそうだなぁ、嫌だなぁ」と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回はEPSについて、どのように投資判断に役立てることができるのか、わかりやすく解説していきます。安心して読み進めてください。
EPSとは「Earnings Per Share」の略で、日本語では「1株当たり純利益」と呼ばれます。
・Earnings=利益(稼ぎ)
・Per=~につき
・Share=株式
つまり、EPSは「1株あたり、どれだけの利益が生み出されているか」を示す指標だとイメージしていただくと理解しやすいと思います。
計算式は「当期純利益÷発行済株式数」で、企業が1年間で稼いだ純利益を、発行されている株式数で割ったものです。ただ、基本的には企業が開示している決算資料や投資関連サイトにEPSが記載されていますので、計算式そのものを覚える必要はありません。
大切なのは、この数字が「株主が持つ1株あたりに対応する利益の大きさ」を表している、という点です。その金額がそのまま配当されるわけではありませんが、企業の収益力を比較するうえで重要な指標になります。
たとえば、同じ100億円の利益を稼いだ企業でも、発行している株式数が少なければ1株あたりの利益は大きくなります。逆に株式数が多ければ、1株あたりの利益は小さくなります。
このようにEPSは、企業の稼ぐ力を「株主目線」で捉えるための便利な指標なのです。売上高や営業利益ももちろん重要ですが、最終的に株主に帰属する利益がどれだけ増えているかを知るには、EPSを見るのが最もシンプルで効果的だと考えます。
株価の割安・割高をズバリ判定!知っておきたい「株式益回り」の活用術
EPSが理解できれば、次に役立つのが「株式益回り」という考え方です。これは、株価に対してEPSがどれくらいの割合を占めているかを示す指標で、計算式は「EPS÷株価×100」です。
配当利回りが「株価に対してどれだけ配当を受け取れるか」を示すのに対し、株式益回りは「株価に対して企業がどれだけ利益を生み出しているか」を示します。
配当利回りは利益のうち配当金だけを対象に計算されますが、株式益回りは配当金に加えて内部留保(企業が事業への再投資などのために蓄える利益)も含めた「利益全体」を基準に計算されます。つまり、企業が生み出した利益全体を株価と比較するため、より本質的な割安・割高の判断ができるというわけです。
図1をご覧ください。株価が100円、EPSが10円のケースでは、EPS10円÷株価100円、つまり、10/100となりますので、株式益回りは10%になります。
次に、株価が100円、EPSが5円のケースを見ていきましょう。このケースでは、EPS5円÷株価100円、つまり、5/100となりますので、株式益回りは5%になります。
このように、株価が同じであればEPSが高いほど株式益回りも高くなります。つまり、他の条件が同じであれば、株価に対して利益を多く生み出している企業の方が割安と判断しやすいというわけです。
一般的には「株式益回りが高い=割安」、「株式益回りが低い=割高」と判断されるケースが多くなっています。株価が下がると株式益回りは上昇するため、同じ企業でも株価が安いタイミングでは投資妙味が増すことになります。
もちろん、株式益回りだけで投資判断をするのは危険ですが、企業の稼ぐ力と株価のバランスを測るうえで非常に有効な指標です。
なお、株式益回りはPERの逆数でもありますが、このPERについては第4回(次回)のコラムで解説させていただきます。
図1 EPSから割高か割安かを判断
成長の証拠を探せ!EPSの「推移」が教える企業の将来性
EPSは単年の数字だけを見ても十分ではありません。企業の実力は1年だけでは判断できず、数年単位での成長や安定性を確認することが重要です。一般的には、過去5年程度のEPSの推移をチェックすると、その企業が安定して利益を伸ばしているかどうかが見えてきます。
たとえばヒューリックのEPSは年度によって多少の変動はあるものの、長期的には右肩上がりの傾向が続いています。こうした企業は、利益を安定的に伸ばし続ける力があると判断でき、長期投資の対象として魅力的です。
一方で、EPSが長期的に下落している企業は注意が必要です。売上が伸びていても利益率が低下していたり、競争力が落ちていたりする可能性があります。EPSが減り続ける企業は株価も長期的には下落しやすいため、投資対象から外しておく方が無難なケースもあります。
EPSの推移は、インターネットで「企業名 EPS 推移」と検索すれば簡単に確認できます。会社四季報や有価証券報告書でも確認できますし、IRBANKやバフェット・コードなどの投資情報サイトにはグラフ付きで見やすく掲載されています。初心者でも扱いやすいサイトなので、気になる企業があれば一度チェックしてみるとよいでしょう。
図2 EPSの推移をチェックしよう
減配リスクを回避!配当性向から企業の「配当の余力」を読み取る
EPSと合わせて確認したいのが「配当性向」です。これは、企業が稼いだ利益のうち、どれだけの割合を株主に配当として還元しているかを示す指標で、計算式は「1株配当÷EPS」です。
配当性向が高いほど、企業は利益の多くを株主に還元していることになります。一方で、配当性向が高くなりすぎると、企業が将来の成長のために使える資金が減ってしまいます。特に配当性向が100%近くになると、利益のほぼすべてを配当に回している状態で、増配の余力がほとんどなくなってしまいます。
もちろん、単年では配当性向が高くなるのは珍しいことではありません。特別損失が発生した年などはEPSが一時的に落ち込み、配当性向が高く見えることがあります。しかし、複数年にわたって配当性向が高止まりしている企業には注意が必要です。無理な配当を続けている可能性があり、将来的に減配リスクが高まることもあります。
理想的なのは、EPSが増え続け、それに合わせて配当も増えていく企業です。利益が増えれば配当性向を無理に上げなくても増配できますし、企業の成長と株主還元が両立している状態といえます。
図3をご覧ください。たとえば、EPSが100円で配当が30円の銘柄があったとします。この場合は、1株配当30円÷EPS100円ですので、配当性向は30%となります。
次に、この会社が配当を30円から40円に増配したとしましょう。この場合は、40円÷100円となり、配当性向は40%になります。さらに40円から50円に増配すると、配当性向は50%となります。
ここでのポイントは、増配していてもEPSが成長しなければ配当性向が上昇し続け、いずれ増配の余力がなくなってしまうということです。継続的な増配を期待するのであれば、EPSも成長している企業へ投資することが重要になります。
図3 配当性向の考え方
EPSは投資判断に欠かせない指標
EPSは、企業の稼ぐ力を株主目線で測るための基本指標です。株式益回りを使えば割安・割高の判断にも役立ち、EPSの推移を見れば企業の成長力や安定性がわかります。さらに配当性向と組み合わせることで、企業がどれだけ健全に利益を配分しているかも読み取れます。
株価だけを見て投資判断をおこなうと、どうしても短期的な値動きに振り回されがちです。しかし、EPSを理解し投資判断の材料として活用することができれば、長期的に価値が増える企業を見つけやすくなります。
初心者の方は、まずはEPSというシンプルな指標から企業分析を始めてみてください。数字の意味がわかると、株式投資がぐっと立体的に見えてきて、企業を見る目が確実に育っていくはずです。
【公開】長期株式投資の現在の保有銘柄トップ20と最新の投資戦略
さて、続いて執筆者の保有銘柄トップ20のコーナーです。この連載では投資の基本を学んでいただくことに加えて、執筆者がどのような投資を行っているのかについて、保有銘柄トップ20を毎回公開しコメントを添えて紹介していきます。これにより、読者のみなさんに投資や運用の具体的なイメージを持っていただければと考えています。
前回コラムの3月13日と比べると銘柄の入れ替わりはありません。保有株数を見ると、三井住友FGへ5株、東京海上HDへ4株の追加投資をおこなっています。
決算説明資料等で繰り返し言われていますが、メガバンクは政策金利の上昇が収益の押し上げ要因となります。政策金利の上昇はまだ途上という見方が一般的で、今後の増益・増配を見込んだ追加投資となります。
東京海上HDは、投資の神様ウォーレン・バフェット氏が長年率いていたバークシャー・ハサウェイの子会社が2.49%の出資を決めたことで大きな話題となりました。発表後は株価が2営業日連続でストップ高となるなど、以前と比べるとやや割高な水準となっています。とはいえ、バークシャー・ハサウェイが独自のデューデリジェンスを行い、長期投資に値すると判断したという事実は覚えておいて損はないでしょう。目先の株価がどう動くかは分かりませんが、長期的にはバークシャー・ハサウェイのお墨付きがあると考えれば、仮に株価が下落したとしても、ある程度の精神的なゆとりを持って長期保有しやすいのではないでしょうか。
日経平均株価は高値圏で推移しており、株価だけを見ていると買いづらいと感じる読者の方も少なくないと思います。そういう時は、自分が納得できる水準を決めておき、機械的に買っていくというようにルールを決めておけばよいでしょう。例えば、三井住友FGや東京海上HDのような銘柄であれば、将来性を踏まえて配当利回りが3%を超えたら買う、といった基準を決めておく方法があります。
大切なのは優良銘柄を納得感のある株価で買い、長期保有することです。短期的な株価の動きに一喜一憂せず、長い目で投資を続けていきたいですね。
図4 保有銘柄トップ20
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
1977年生まれ、熊本県出身。「日本の配当株」専門の元サラリーマン投資家であり、1級FP技能士。2004年から株式投資をはじめ、ハイリターンを求めて新興市場にて個別銘柄の投資をするも、2006年にライブドア・ショックで大きな損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマン・ショックで壊滅的な痛手を被る。そこで、2009年からはポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5,128円と過去最高を更新。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアを実現した。これまでの投資生活で磨いた技術やノウハウをX(旧:Twitter)やブログにて配信し、個人投資家のサポートに尽力するほか、著書に『【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 経営戦略から“ほぼ永遠に儲かる企業”を探す方法』(KADOKAWA)、『マンガでわかる!超はじめての株式投資』(永岡書店)がある。
