暴落だってワクワクに変えられる。市場に振り回されない「不安を味方にする」投資マインド

チャンネル登録者66万人超の節約・投資系ユーチューバーとして活躍する節約オタクふゆこ氏は、かつて手取り20万円、貯金はほぼゼロの会社員だった。奨学金477万円を返済しながら月10万円生活で年間300万円を貯蓄し、29歳で資産1,000万円を達成。インフルエンサーとして稼げるようになってからは、インデックス投資を軸に日米の高配当株投資も組み合わせながら資産を増やし続けている。新著『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)を上梓した同氏に、暴落時の実体験から「NISA貧乏」問題、そして、株式投資ビギナーが最初の一歩を踏み出すために必要なマインドまで、書籍では語り切れなかった投資の心構えを聞いた。
構成/岩川悟 取材・文/小林義崇 写真/塚原孝顕
株式投資開始直後に訪れた「コロナショック」
──ふゆこさんは、暴落時のメンタルの整え方について日頃から多く発信されています。「全世界株や先進国株のインデックスファンドであれば、15年以上保有すれば元本割れしない」という過去のデータを根拠に、長期投資の安心感を説かれていますね。実際に大きな下落局面を経験されたとき、どのような感情になり、どう乗り越えたのかを教えてください。
ふゆこ:最も大きかったのは、やはりコロナショックですね。わたしが投資しているインデックスファンドも短期間で30%くらい下落しました。もともとわたしが株式投資を始めたのが2019年でコロナショックが2020年3月ですから、株式投資を始めて間もない頃でした。
ただ、その頃にはすでに投資に対する理論はある程度学んでいました。過去にあった大きな下落データは頭に入っていましたし、ドルコスト平均法で積み立てているので、「下落だからこそ、より多く買える」という理屈もわかっていました。ですから、コロナショックに直面してドキドキはしたものの、「ついにきたか!これが暴落か!」という妙なワクワクもあって……(苦笑)、そこまで大きな不安は抱きませんでしたね。それなりに理論武装していたので、「このまま積み立てていけばいいだけだ」と思えたことは大きかったと思います。
──短期的にではなく長期的な視点で捉えることで、下落を乗り越えられたということでしょうか。
ふゆこ:そうだと思います。また、ちょうど当時はつみたてNISA(当時の少額投資非課税制度。2024年から「新NISA」に制度が刷新された)で月33,333円を積み立て始めてから半年ほど経った頃で、「他の投資もやってみたいな」という気持ちが芽生えていたタイミングでした。そこで、コロナショックによる下落に合わせて配当利回りが上がった銘柄を買い始めたのです。高配当株投資の出発点になったという側面もありました。
専門家の予測でも外れることは珍しくない
──インデックス投資は、投資していることを忘れるくらいがちょうどいいともいわれます。しかし実際には、トランプ大統領による関税ショックや中東情勢の悪化といった大きなニュースが次々と飛び込んできます。多くの投資家が、ニュースを見聞きするたびに不安になったり、専門家の悲観的な予測を目にして投資方針を変えたくなったりしていると思います。
ふゆこ:もちろん、株式投資をするにあたり情報は大事なのでいろいろなところから取っていますが、ひとつ大きな前提を立てています。それは、どんな専門家であっても、予想は外れているという真実です。すべての予想が当たるような専門家が存在したら、その人は莫大な利益をあげているはずです。でも……実際にはそうではありませんよね。それこそ、「インデックスに勝てるアクティブファンドは1割しかない」ともいわれるほどです。
だから、例えば専門家が「円安になる」「日本株が下がる」と発言しているのを見ても、背景にある論理を知る勉強にはなりますが、それによって自分の投資行動を変えることはしません。
──しかし、「不安にならないで」と言葉でいうのは簡単ですが、実際に含み損を見てしまうと心理的に揺さぶられる人は多いですよね。そうした不安との向き合い方について、ふゆこさんの考えを教えてください。
ふゆこ:結局、どんな投資でもリスクがあり、ほとんどすべてのものにリスクが存在しています。貯金だって「円に集中投資している」というリスクを持っていますし、「無リスク資産」と呼ばれる国債にだって、国が破綻するというリスクが絶対にないとは言い切れません。つまり、リスクから逃れることはできないわけです。
だとすると、「リスク=不安」と考えるのではなく、「どこまでなら取れるリスクなのか」を整理して、取れるリスクは取るし、取れないリスクは取らない。その線引きを自分で見つけていくことが大事だと思います。線引きは人によって違いますし、経験のなかで探っていくものですから、株式投資をするにしても、最初は少額から始めて、自分のリスク許容度を確認していくのがいいのではないでしょうか。
「NISA貧乏」にならないためのお金の使い方
──最近は、「NISA貧乏」(NISA制度を活用した投資にお金を回しすぎて、日常の生活費が圧迫される状態)というワードも話題になっています。ふゆこさんは、投資に回す金額と生活に使う金額の比率をどのように決めていますか?
ふゆこ:いまはNISAで月30万円をインデックス投資に積み立てたうえで、生活のために使うお金を確保し、余ったお金はすべて投資の予備資金にあてています。比率を厳密に決めているというよりは、「余った部分は全部投資」という感覚ですね。それでいて、投資のために我慢しているという感覚はまったくありません。
──かつての月10万円生活の時代と比べると、お金の使い方に変化は?
ふゆこ:一番変わったのは、「時間単価」を考えるようになったことです。例えば、時間をかけてポイ活をして1,000円を得るなら、1時間集中して仕事をしたほうが得だからやらない、という判断です。もっと日常生活に密着した部分なら、それこそロボット掃除機や食洗機のような時短家電を導入するメリットも大きくなっていますよね。一方、基礎的な生活費はいまも月8万円から10万円くらいに抑えていて、タワマンに引っ越したとか、旅行にたくさん行っているわけではありません。
──かつて会社員時代には、生活費以外のすべてを投資に回し、外食ゼロ、服もほとんど買わないという生活をされていたそうですが、それは傍から見れば「NISA貧乏」にも見えます。苦しくはなかったですか?
ふゆこ:傍から見たらそう映るかもしれませんが、わたし自身はすごく楽しかったんです。そもそも、節約という行為が面白かった。自分を“実験体”にして、「この支出を減らしたらどんな気持ちになるのかな?」といった具合に試していく感覚です。家賃6万6,000円の新築アパートから家賃4万円の木造アパートに引っ越したら、「住めば都で最高じゃん!」と思うようなこともありました。ただ、食費を月7,000円まで下げたら「さすがに苦しいな……」となって、「少し上げたほうがいいな」と調整することもありましたね(苦笑)。
そうやって試行錯誤するなかで、自分の人生における優先順位が見えてきました。だから節約は、わたしにとって「自己分析」であったということです。資産形成の過程そのものが面白いと思えたことが、節約生活を続けられた理由だと思います。
投資の成功に必要なのは、才能でもセンスでもない
──YouTubeのチャンネル登録者は66万人を超え、視聴者からの相談も増えたと推測します。どのような悩みが寄せられますか?
ふゆこ:「毎月いくら投資すればいいですか」という質問が多い印象ですね。これには「攻め」と「守り」のふたつの視点があるのですが、攻め、つまり「希望する資産に到達するには、いくらを何年投資すればいい」という計算は、積立シミュレーションを活用すればすぐにできます。
でも、わたしがより大事にしているのは「守り」のほうなのです。過去の暴落データを参考にすると、全世界株や米国株のインデックスであれば、最大損失率は50%ともいわれています。だから、「投資している額が半減しても大丈夫かどうか」を軸に考えることをいつもおすすめしています。例えば、「年間50万円くらいなら減っても積み立てを続けられる」という人であれば、100万円投資していいという計算ですね。ただ、最初からそこまでリスクを取れる人は少ないので、少額から始めて徐々にリスク許容度を確認していくことが大切です。
──最後に、これから投資を始めようとしている人に向けてメッセージをお願いします。
ふゆこ:株式投資の成功に必要なのは、「才能でもセンスでもなく再現性」だと思っています。わたし自身も株式投資を始める前は、「株式投資なんかやって大丈夫なの?」「こんなのギャンブルじゃん」という不安と、「このままの人生ではヤバそうだ……」という危機感の板挟みにいました。年金もそこまであてにできなさそうだし、終身雇用で退職金がたくさんもらえる時代でもないからです。きっと多くの人が、同じような心境ですよね。
株式投資を始めるとき、最初の一歩は誰だって怖いはずです。でも、実際にやってみると実感が徐々に掴めてきます。わたし自身も、最初は100円でもプラスになったとき「本当にプラスになるんだ!」とびっくりしましたし、初めて配当金が口座に振り込まれたときは「不労所得って本当に実在するんだ!」と衝撃を受けました。
いうまでもなく、株式投資にはいいときもあれば悪いときもあります。ただ、長い目で見ればずっと右肩上がりできていることは間違いありません。
NISAの環境が整備され、わたしがコアにしているインデックス投資(オルカン=「eMAXIS Slim 全世界株式」)をはじめ、再現性が高く、インフレ率以上のリターンが期待できて、ほったらかしでいい投資手法が確立されているというのはすごく恵まれた状況だと感じます。市場環境に一喜一憂せず、自分の生活が苦しくならないよう配慮しながら、資産形成を楽しんでほしいと思います。
(プロフィール)
節約オタクふゆこ
1993年生まれ。節約・投資系YouTuber。理系の大学院修了後にエンジニアとして就職するも、将来のお金に対する不安をきっかけにお金について学び始める。奨学金477万円を返済しながら月10万円生活で年間300万円を貯金し、20代で資産1,000万円を達成。現在は脱サラしてフリーランス。2021年から運営するYouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」は登録者66万人超(2026年5月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)、『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)がある。
