「S&P500」ではなく「全世界株式」推し。節約女子のポートフォリオの考え方
節約と投資のノウハウと実践を伝える人気YouTuberである節約オタクふゆこ氏は、節約生活によって貯金50万円から4年間で資産を1,000万円に増やし、2024年4月時点では資産2,000万円を突破している。節約生活を継続しながら、資産の約8割を株式投資に当てて堅実にリターンを得る同氏の、現在のポートフォリオと投資の考え方を語ってもらった。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟 写真/塚原孝顕
貯金50万円から節約で投資資金を確保し、
4年間でリターン100万円へ
——ふゆこさんはストイックな節約生活によって、4年間で1,000万円の資産形成をされましたが、同時進行で投資もされていましたよね。目標金額の達成には、投資利益も含まれていたのでしょうか?
節約オタクふゆこ:含まれています。ただし、1,000万円に達したのが2022年で、2019年の貯金50万円から年間約300万円のペースで貯蓄をしていたので、純粋な節約効果だけでも4年間で1,000万に達しています。そのうえで投資利益も含めると、実は約1,100万円になっていたのです。まだその頃は、YouTubeの収益も微々たるものだったので、改めて投資の力を感じました。
——4年間で節約をしながら投資も行い、約100万円(約10%)のリターンを得ていたということですね。当初はどのような投資をしていたのでしょうか?
節約オタクふゆこ:2019年に転職して、過剰残業やストレスから解放されたのを機に、投資と節約についてはじめて勉強したので、それまでは本当にちんぷんかんぷんでした。投資の本や投資系YouTubeなどで学んで、米国株の成長性の高さを知り、まずは「S&P500」と「全世界株式」のインデックスファンドをつみたてNISAではじめてみました。
それから、NISA枠を超えてインデックスファンドを買い増したり、米国高配当ETF、日本高配当株にも挑戦したりしました。2022年までに資産全体のうち800万円を投資に回し、ちょうどコロナ禍からの回復もあり期待以上のリターンになりました。
「守り」重視のポートフォリオ
——現在では、さらに貯蓄も投資も進み、資産は2,000万円を超えているそうですね。現在のふゆこさんのポートフォリオを教えてください。
節約オタクふゆこ:2022年段階からは、大部分をインデックスファンドに投資していますが、S&P500ファンド(以下S&P)は据え置きで、全世界株式ファンド(全世界株式)を中心に投資しています。具体的な数値は四捨五入していますが、おおむね以下の構成です。
投資も大事ですが、それ以上に重視しているのは生活防衛資金です。わたしは無敗のファンドマネージャーでもなんでもないので、当然のことです。
わたしの場合、奨学金返済こそ抱えていましたが、アラサーの独身ですし、月間の支出も節約によって10万円程度に抑えてきました。つまり、リスク許容度が極めて高く、既に2022年時点で1年以上生活できる現金を確保しているので、余剰資金の大部分を投資に充てることができます。
そのうえで、過去の株式相場の歴史を振り返ると、20%以上の株価下落をともなう世界的な暴落は、およそ5年に一度の頻度で起こります。そのため、「暴落するのがあたりまえ」という考え方のもと、おおよそ運用資産が半分になって、約1年間寝かせておいても、生活や傷病、トラブルなどに問題のない生活防衛資金を持っておこうと考えています。今後、結婚や出産など、ライフステージが変化する場合は生活の支出額も変わるので、より保守的な考え方になると思います。
——全世界株式への投資を中心にしてS&P500を据え置きにしたのはなぜでしょうか?
節約オタクふゆこ:攻めの発想でいけば、高いリターンの可能性があるS&P500を買い増すべきだと思います。米国株は世界の時価総額の半分以上を占め、実際に過去30年のリターンがもっとも高かったからです。さらに人口も増加し、イノベーションの中心地として今後も高い成長性が期待されるでしょう。
しかし、全世界株式は全世界への時価総額加重平均型であり、以下の図のように62%もの大部分は米国が占めています。アメリカの成長性を押さえたうえで、他の先進国や新興国などの成長にも投資できる点が魅力です。
全世界株式インデックスの国・地域別構成比率(eMAXIS Slim 全世界株式)
例えば、Appleは世界トップレベルの時価総額を持つ企業ですが、主力商品のiPhoneに部品を供給する企業を国別で見ると、米国33%、韓国29%、日本10%、そしてアジア諸国が続きます。このように、米国のあらゆるサービスやプロダクトが生み出す利益の背景に、リソースとして他の先進国や新興国の利益があります。そこを押さえられるのが、全世界株式だと考えます。
また、現代ポートフォリオ理論の観点でも、もっともリスクが分散されるインデックスファンドである点を評価しています。投資に時間をかけて取り組む人は、米国株やリスクの高い新興国株でより高いリターンを狙っていいと思いますが、資産形成の手段は投資だけでなく、その時間を本業の収入アップや副業に充てる考え方もあるでしょう。そういう人にとって、投資に重要なことは安全性です。
わたし自身も資産形成を投資に全振りするわけではなく、労働収益と節約による資産形成も踏まえているので、成長性以上に投資リスクの低さを重視します。要するに、「どちらのほうがより安心して放置できるか」が重要なポイントであり、その答えが全世界株式なのです。
——新興国株に挑戦しないのも、リスク回避の観点でしょうか。
節約オタクふゆこ:むしろ、インド株をはじめとする新興国株に高い関心を持っているのですが、現在のわたしの知識やリサーチでは自信も根拠も持てないのが実情です。それでは純粋な新興国ファンドに挑むのはギャンブルになってしまいます。
投資で心を振り回されたくはないので、全世界株式に新興国が含まれていることで、「取りこぼさず投資できている」と満足できるメンタルコントロールの側面もあります。
——米国高配当ETF、日本高配当株への投資理由についてもお聞かせください。
節約オタクふゆこ:インデックスファンドのほうが将来的なリターンの期待値は高いので、あくまで投資の中心はインデックスファンドです。しかし、長期で保有し続ける以上、増えていく資産は数字だけで表されるので、その数字によって実感することができます。その点、ETFや個別銘柄株は毎年の配当金があるので投資のメリットを実感でき、長く続けるうえでメンタルにもいい影響があると思っています。
米国高配当ETFも、本音をいえば全世界株式のように世界の時価総額加重平均型で、かつ優良高配当銘柄に絞ったETFファンドがあれば理想です。あったとしても、手数料が高そうな気もしますが……。
日本株は最近になって株価が上昇していますが、これまでの低迷期にも成長性の高い業界や企業はありましたよね。まだまだ日本の個別株投資は短いキャリアなのですが、わたしなりに株式投資を勉強し、国内の成長性ある企業に投資しようと思ってリサーチを深めています。
そのリサーチの際、財務分析をして健全性が高い企業に出会えるとテンションが上がりますし、決算資料のコメントを読んで、「いい仕事をしているなあ」と共感してその企業のことが好きになるのは、国内銘柄ならではの楽しさだとも思っています。「今期が勝負どころだぞ!」などと、サポーター感覚で応援していますね。
株式投資における「根拠」の重要性を伝えていきたい
——最後に、ふゆこさんがどのように株式投資の勉強やリサーチを行っているのかを教えてください。
節約オタクふゆこ:朝起きたらグローバルな金融ニュースやマーケット情報を扱う「Bloomberg」の経済ニュースを見て、証券会社が配信するマーケットレポートに目を通します。そのあと、「日経新聞」の主要記事を15分くらいで読み上げてくれる「ながら日経」というサービスがあるので、それを聴きながら朝ご飯の準備をしていますね。それで経済の全体感とトレンドをつかむ感じです。日本高配当株も持っているので、個別銘柄の相場や日経平均をチェックするのも朝の習慣です。
節約習慣もそうなのですが、勉強やリサーチも同様で、いかにルーティン化できるかにかかっています。わたしはもともと研究職に就いていたので、学ぶことや調べることはそこまで苦にしないのですが、人間ですから忙しさや面倒臭さで後回しにしたくなることはあります。
そうであれば、ルーティン化してしまえば面倒臭さを感じる間もありませんし、体と頭が自然に動いてくれます。我慢もストレスもない理想的な状態をつくることが大切ではないでしょうか。
——日々、経済や株価を追うことで見えてくるものは?
節約オタクふゆこ:まだ2年、3年の習慣なので、大層なことは言えません。ただ、毎日それらの情報に目を通すことで、インパクトのあるニュースの背景にある社会や経済の大きな流れを感じられるようになりました。そうなると、意味もなくニュースに心を振り回されないで済みます。
メディアというのはキャッチーなニュースばかりを大きく取り上げるので、結果的に不安も期待も過剰になってしまいます。断片的なニュースだけを聞いていると、例えば「日経平均株価が過去最高? じゃあ株を買わないともったいないのでは?」と短絡的に考えてしまうのです。
でも、株価の見通しとリスクは、世界的な経済の関連性と社会の動向を踏まえ、明確な根拠をもって考えていかないといけないですよね。その重要性を、教科書的ではなく実感として理解できるのが、ニュースに目を通す価値のひとつだと考えます。
最近、新NISAのスタートや日経平均株価の最高値のニュースによって、わたしのYouTubeチャンネルの視聴者のコメントを見ても、投資熱の盛り上がりを感じています。わたしも安易に「これを買うべき」ではなく、投資判断の根拠を明確にして「考え方」を伝えていきたいと思っています。
(プロフィール)
節約オタクふゆこ
1993年生まれ。自らを「節約オタク」と称する節約・投資系YouTuber。理系の大学院修了後に開発職として電子系メーカーに就職したものの、将来のお金に対する不安を拭えなかったことがきっかけでお金について学ぶ。その後、奨学金477万円を返済しながら1カ月10万円で生活し、年間300万円を貯金、20代で資産1000万円を達成。現在は脱サラしてフリーランス。2021年から運営しているYouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」は、日常的な節約法のほか、投資についての動画も初心者向けに配信して人気を集め、チャンネル登録者数は52万人を超える(2024年4月6日時点)。初の著書『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がベストセラーに。