【2026年金相場見通し】5,000ドルは夢じゃない——金を押し上げる「構造的5要因」とは何か

・2025年の金相場上昇(年間パフォーマンスは1979年以降で最高※1)は、2026年には鈍化する公算が大きく、従来よりも高い1オンス4,000~4,500ドルのレンジでの値固めとなる可能性があります。
・金価格を支える構造的な強気サイクル要因として、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和、中央銀行と個人からの旺盛な需要、上場投資信託(ETF)への資金流入、株式/債券の相関性の高まり、世界的な債務懸念などが挙げられます。
・戦略的資産再配分と地政学的要因が金価格を1オンス5,000ドルに到達させる追い風となる可能性があります。
金の強気サイクルを後押しする5つの要因
2026年に金価格が1オンス5,000ドルに達する可能性があるかと問われれば、1994年8月と、英国の伝説的ロックバンド、オアシス(2025年に大規模な世界ツアーを実施しました)のデビューアルバムのタイトル「Definitely Maybe(絶対、たぶん)」が思い出されます。
構造的な強気サイクルの中盤で、5つの構造的要因が引き続き金市況を形成しています。それらのトレンドは、2026年に反転する可能性は低く、全体として金価格にとって支援的な環境を示唆しています。重要な点として、それらの要因は、一時的に金需要を押し上げる可能性のある短期的要因(ボラティリティの急上昇、リスク資産の急落、スタグフレーション懸念など)とは別物です:
1.フィアット通貨(不換通貨)の代替資産としての役割(alt-fiat)と世界的なディベースメント取引:世界の部門別債務は2025年半ばに340兆ドルに増加し、注目すべきことに、そのうち政府債務の割合も過去最高の30%に達しました※2。世界の国内総生産(GDP)の3~4倍に上る債務水準は投資家の間に懸念を引き起こしています。記録的な債務と根強いインフレが長期債利回りを押し上げるなか、金はデュレーション・リスクと通貨価値の下落に対する魅力的なヘッジ手段となっています。
2.株式/債券の相関性の高まり:コロナ禍後のインフレ急騰とFRBの引き締めサイクルの中で、米国の株式/債券の相関性は30年ぶりの高水準に上昇しました※3。2025年には相関がやや低下したものの、2000年代と2010年代に支配的だった逆相関の関係に戻るかどうかは不明です。一方、金/米ドル(USD)は依然として負の相関傾向が続いています。株式と債券の相関性が歴史的な高水準にとどまった場合、投資家が伝統的な60/40または70/30ポートフォリオの代替を模索するなか、分散化手段とレフトテール(下方リスク)・ヘッジの手段としての金の役割はいっそう重要となるでしょう。
図表1:米国の株式/債券および米ドル/金の四半期ごとの対数正規リターンのローリング3年相関性
出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(1990-2025年)。注︓米国株式にはS&P500指数を、米国債券には、投資適格の米ドル建て固定金利課税債券市場のパフォーマンスを測定するブルームバーグ米国総合指数を使用しています。金にはロンドン貴金属市場協会(LBMA)スポット価格終値、米ドルにはドル指数(DXY)を使用しています。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
3.金ETFによる保有量の再増加と世界的な資産再配分サイクル:金は金融資産であり現物資産でもあります。2020年のリセッションの後、4年近くにわたって金ETF保有者は持分を売却し、金現物の供給を市場にもたらしました。2025年には金ETFに対する投資家の需要が回復し、原資産である金の価格を下支えし、現物の需給をタイト化させています。2026年も金ETFの成長余地は大きいと思われます(ETF需要に関するセクションを参照)。金ETFへの資金流入は、その他の金消費分野と競合するため、需要の適正化のためにスポット価格の上昇が必要となる可能性があります。
4.FRBの緩和と米国の政策が米ドルに影響:FRBは緩和姿勢に移行しており、2026年にはよりハト派的な新議長が任命されそうです。これは、トランプ政権の言説や「解放の日」後の米国の国際関与の縮小と共に、米ドル安を示唆しています。政策金利の低下は利息を生まない資産を保有することの機会費用を低下させる一方、FRBの利下げは、2025年11月時点の運用資産が過去最高の7.5兆米ドル※4に達しているマネーマーケットファンドからの幾分かの資産再配分を誘発する可能性があります。また、FRBの金融緩和は、諸外国との金利差縮小と流動性拡大を通じて米ドル安を誘発する傾向にあります(FRBの金融緩和に関するセクションを参照)。FRBの金融緩和局面と米ドル安基調は、金にとって二重の追い風となります。これは、直接的に実質利回りの低下を通じて、またデノミネーション(通貨価値の低下)効果を介して作用します。
図表2:第2次トランプ政権下で米ドル建て金価格はその他G10通貨建てをアウトパフォーム
出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、データは2025年11月21日時点。注︓USD=米ドル、EUR=ユーロ、JPY=円、GBP=英ポンド、CHF=スイスフラン、SEK=スウェーデン・クローナ、NOK=ノルウェー・クローネ、CAD=カナダドル、AUD=オーストラリアドル、NZD=ニュージーランドドル。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
5.旺盛な現物需要:2023-24年の記録的ペースを下回ってはいるものの、中国のリテール金需要と新興国市場の中央銀行による旺盛な金購入は、依然として金への追い風となっています(中央銀行とアジア太平洋[APAC]に関するセクションを参照)。2025年下期に、中国の金現物需要は記録的な高価格にもかかわらず予想を上振れしました。公的部門の金購入は価格弾力性が低く、金需要の底堅さを示唆しています。中央銀行と中国のリテールからの旺盛な金現物需要は、前者は非循環的で、後者は固有の要因であり、ともに金価格を下支えし、下方リスクを緩和しています。
パンデミック後に金の価格レジームはどう変化したのか
パンデミック後のレジーム変化は、金相場をより高いレンジに移行させています。過去5年間の価格サイクルに着目すると、3つの明確なフェーズがあったことが分かります。
図表3:金の強気サイクルの解剖
出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年11月20日時点
市場の相対的規模を考慮すると、資産再配分ストーリーの信ぴょう性が増します。当社は、金への投資残高を約14兆ドルと推定しています※5(中央銀行の保有分、現物の延べ棒およびコイン、ETF、店頭取引(OTC)のポジションを含む)。それに対し、世界の国債投資残高は100兆ドル超※6、株式市場時価総額は2025年第4四半期時点で約150兆ドル※7となっています。
国債および株式投資残高のわずか1%が金に再配分されるとすれば、約2.5兆ドルに相当します。これは、金現物市場が既にタイトな状況で、金への投資残高が18%増加することを意味します。
そうしたシフトは、金価格を下支えし、1オンス5,000ドル到達への追い風となる可能性があります。
ETF需要:金相場上昇の次の原動力
2025年初めに当社が予想した通り、金ETFへの資金流入は金の需給バランスを大幅にタイト化させ、今年のアウトパフォーマンスの主因となっており、現在の金保有量増加サイクルは金相場上昇にさらに寄与する見込みです。
これまでに、金ETFは、
・世界全体で5カ月連続で純資金流入を記録し、
・年初来の流入額は720億ドル(金674トン相当)の大台に達し、
・2カ月を残し、これまでの過去最高である2020年の約500億ドル(同893トン)を上回っています※8。
北米のファンドが資金流入を主導しています:
・年初来の流入額は過去最高の430億ドル※9
・2025年第3四半期の米国のファンドへの流入額は160億ドル(同137トン)※10
・米国は世界の流入額の62%を占めています※11
インドのETF投資家基盤も加速的に拡大しています:
・年初来の流入額は過去最高の約29億ドルに達しており、
・これは2020-24年の累計流入額30億ドル※12に匹敵します。
当社は、金ETFへの堅調な資金流入が続くとみています。金市場が過去12年間で最大の1日下落率を記録しても、主要な米国上場金ETFが資金流出を報告することはありませんでした※13。実際、北米のファンドは3億3,400万ドル(同2.3トン)の純流入を記録し、金ETFへの需要の強さが浮き彫りとなりました※14。
図表4:金ETFによる保有量の再増加サイクルと2026年の資金フロー・シナリオ
出所:ワールド・ゴールド・カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年10月31日時点。
注目すべき点として、現在のサイクルの持続期間は過去のサイクル1の35%、サイクル2の31%、金保有増加量は同45%、35%に相当します※15。
過去の平均ペースである約8.75トン/週に基づくと、2026年のランレートごとの流入量は以下のように推定されます:
・25% 114t
・50% 228t
・75% 341t
・100% 455t
出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年10月31日時点。
ランレート100%でさえ、今サイクル開始以降(2024年5月-2026年)の流入量は2008-12年の合計よりも543トン少なく、2016-20年の合計を1,061トン下回ります※16。従って、2025年の流入量は2020年以降で最高となっている一方※17、金ETFの全体的な保有量(トンベース)は依然としてパンデミック時のピークを下回っており、金への資産配分が過剰ではないことを示唆しています。
図表5:世界の金ETFの保有量増加サイクル(サイクル開始以降の累計資金流入量)
出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ワールド・ゴールド・カウンシル、2025年10月31日時点。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
FRBの緩和政策:金にとって二重の追い風
FRBの経済見通し(Summary of Economic Projections:SEP)は、政策当局者らが想定する政策金利の最終的な落ち着きどころを探る指針となります。ニュースでは次の金利決定に大きく焦点が当てられがちですが、SEPはFRBの長期的な考え方に関する洞察を与えてくれます。
歴史的にみて、FF金利はサイクルの中で変動するものの、SEPの長期予測に向かって収れんする傾向があります(図表6)。現在、政策金利は同予測を優に上回っており、特に労働市場の状況が悪化した場合、2026年も緩和が継続されることを示唆しています。
成長鈍化と労働市場の軟化により、景気刺激の必要性が増す可能性があります。歴史的にみて、利下げは、利息を生まない資産を保有することの機会費用を低下させることで金のサポート要因となっています。
FRBの議長交代が間近に迫っていることは、市場にさらなる不確実性をもたらしています。パウエル現議長の任期は2026年5月で終了するため、金利見通しのボラティリティが高まる可能性があります。初期の兆候からは、後任がよりハト派的な人物となり、経済指標の軟化により素早く対応する可能性があることが示唆されています。
もう一つの重要なファクターは、FRBのバランスシート戦略の変化です。量的引き締め(QT)終了の決定は、バランスシート縮小からより支援的なスタンスへの転換点です※18。最近の流動性ファシリティの利用状況(約500億ドルの常設レポ利用※19を含む)は、資金調達ストレスが生じた際にFRBが準備金を注入する用意があることを示しています。それらのオペレーションは量的緩和(QE)とは呼ばれていませんが、システム内の流動性を増加させることでQEと同様の働きをします。
FRBが引き締めから流動性の供給にシフトする際には、金価格が上昇するのが通常です。
関税に関する判決は債券を圧迫し、金のサポート要因となる可能性
FRBの政策は引き続き金にとって支援的な環境を作り出している一方、最近の関税に関する判決によって形成される財政の動向は、債券に新たな圧力を及ぼし、金の魅力をさらに高める可能性があります。
関税権限を制限する最高裁の判決を受け、投資家は連邦政府の歳入見通しを見直しています。2026年に関税関連収入が減少すれば、財務省は歳入不足をカバーするため国債増発を余儀なくされ、イールドカーブの長期ゾーンの供給増につながりそうです。
これは、FRBが利下げを進めるなかでもタームプレミアムが上昇する可能性があることを意味します。この政策ミスマッチ(長期ゾーンの引き締まりと短期ゾーンの緩和)は、FRBが金融環境を安定化させるためにより積極的に利下げを行う後押しとなる可能性があります。そうした環境は実質利回りを低下させ、価値保存手段としての金の役割を強化する傾向にあります。
利下げ、新FRB議長の下での中立金利の推計値引き下げ、財政ストレスによるタームプレミアムの上昇、より景気支援的なバランスシート運営は、いずれも2026年の米ドル安を示唆しています。2025年最初の7~8カ月間に見られたように、米ドル安は金に対するセンチメントを押し上げる傾向にあります※20。世界市場において、金は米ドル建てで価格設定されるため、ドル安は(他の条件が全て等しければ)金価格を上昇させ、世界の購買力を拡大させ、金需要への強力な追い風を生み出します。
図表6:現在のFF金利とSEPの長期予測との大きな差は2026年も緩和が続くことを示唆
出所:セントルイス連邦準備銀行のEconomic Resources & Data、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、データは2025年11月30日時点。
新興国市場を中心とした中央銀行による旺盛な金購入
価格弾力性が低い中央銀行の購入は、引き続き金の安定的な需要源となっており、金価格の下値を押し上げ、下落方向へのボラティリティを緩和しています。当社は、金の積み増しが続き、世界金融危機以降17年連続で公的部門の純購入が記録されると予想しています。
中央銀行の金購入ペースは2四半期にわたって鈍化した後、2025年第3四半期に再加速し、純購入量は約220トン。
これは、
・前四半期(172トン)比で28%増加し、
・過去5年間の四半期平均(207トン)を6%上回り、
・前年同期(199.5トン)比では10%増加しました※21。
年初来の中央銀行からの需要は634トンと、過去3年間の同期間を下回っているものの、2022年以前の同期間の平均(400~500トン)を優に上回っています※22。
新興国市場の中央銀行は依然として公的部門の金需要のけん引役となっています。例えば、
・ポーランド:年初来で最大の金購入者となっているポーランド国立銀行は、10月に購入を再開し、15トンを買い増しました※23。これにより総保有量は530トンに増加し、外貨準備に占める金の割合は26%と、目標の30%に近付いています※24。
・ブラジル:ブラジル中央銀行は2年間の休止の後に金購入を再開し、過去2カ月間で保有量を31トン積み増しています※25。これにより金準備は161トンとなり、外貨準備全体の6%を占めています※26。
・中国:中国人民銀行は12カ月連続で金を購入し、2024年末以降に保有量を25トン積み増しています※27。現在、中国の外貨準備に占める金の割合は8%と、1年前の5.5%から上昇しています※28。
2026年の中央銀行からの金需要を推定するため、当社はまず2025年第3四半期を通じた純購入量634トン(報告ベース)と、過去の季節的パターンを反映した第4四半期の予測を基に、2025通年の需要を845トンと推定しました※29。それに過去の前年比推移を当てはめると、2026年の需要は756~1,100トンの範囲内となる可能性があります。その場合、2026年は、1971年以降で金需要が最も大きかった上位5年のうちの1年となります※30。
図表7:1994年以降の中央銀行の純購入量と2026年予測
出所:ICEベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド・ゴールド・カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2025年11月18日時点。注:2025年の推定値は、同年第3四半期の純購入量634トン(報告ベース)と、2011-24年の年間需要に占める第4四半期の平均比率(25%)から導出した第4四半期の推定需要量に基づいています。2026年の予測値は、2011-25年の公的部門需要の前年比伸び率を適用して導出しており、基本シナリオではその平均値、強気シナリオでは80パーセンタイル値、弱気シナリオでは20パーセンタイル値を使用しています。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
APACでは政策主導/固有のサポート要因が存在
アジア太平洋(APAC)の金市場は、ETFと広範なリテール投資家と機関投資家の需要に支えられ、2026年に力強い成長を遂げる見込みです。地政学上の変化と脱ドル化は分散投資を後押ししており、中国、インド、日本がそうしたトレンドを主導しています。
中国:機関投資家の需要と政策変化
中国では近年、株式および不動産市場の低迷を背景に金投資需要が急増しています。景気不透明感と貿易摩擦の中で、金はポートフォリオのヘッジとして機能しています。
2025年初め、保険会社10社に対して総資産の最大1%を金に投資することを認める試験的プログラムが開始されました。これまでに、そのうち6社が上海金取引所に口座を開設しています※31。中国人民銀行がそれらの上限を引き上げた場合、機関投資家の金需要がさらに拡大する可能性があります。
中国が9月に発表した、外国政府が保有する金準備の保管国としての役割を担うという計画※32は、準備資産の分散化と制裁からの防衛を模索する新興国市場の中央銀行による新規の金購入を促す可能性があります。この動きは、外国政府が保有する金をロンドンやニューヨークから移動させるというより、新たな需要を生み出すことを狙いとしており、地政学的戦略と、人民元主導での脱ドル化の推進を反映しています。中国における高価格は宝飾品向けの金需要に水を差す可能性がある一方、ETFへの強い関心と、若者の間での「金豆」(豆粒大の純金)の人気※33に支えられ、2026年も旺盛な金投資需要が持続すると思われます。
インド:経済成長とリテール需要のトレンド
インド経済は急成長軌道に乗っており、アセットマネジャーは金へのエクスポージャーを拡大しています。所得の増加、インフレヘッジ、ルピー安、婚礼や祝祭などの文化的伝統といった構造的要因が金の需要を支えています。最近の規制改革は、税制を簡素化することで金をベースとする金融商品の魅力をさらに高めています。
インドの金ETFの運用資産額(AUM)は2020年以降に15.5倍に急増して109億ドルに達し、世界の金ETFのAUMを上回る伸びを示しています※34。金を含むマルチアセット・ファンドも、個人投資家からの資金流入を後押ししています。現地価格の上昇に伴い宝飾品向け需要は軟化する可能性がありますが、構造的要因と金融リテラシーの向上により、旺盛な投資需要が持続すると思われます。
日本:投資需要と通貨動向
円安、少額投資非課税制度(NISA)、記録的な金価格の高騰に後押しされ、2025年の日本における金需要は投資へとシフトしました。日本銀行が12月の利上げを示唆しているにもかかわらず、円は対米ドルでG10通貨の中で最弱となっており、第4四半期に4.3%下落しています※35。
宝飾品需要は弱いものの、家計と機関投資家が円安とマクロ不確実性に対するヘッジを講じるなか、投資経路(特に投資信託とETF)を通じて金への旺盛な資金流入が見られています。金価格が記録的高水準にあるにもかかわらず、日本籍の金投資信託およびETFは2025年初来で金123トン分の純資金流入を記録しており、これは2024通年の5.5倍に相当します※36。
高市首相の下での日本の成長促進政策と金融緩和は、円安と低い実質金利が続くことを示唆しており、これは2026年に金需要の伸びを支える可能性があります。機関投資家の金保有が限定的であることは金への戦略的資産配分を促し、たとえ2025年の熱狂的なペースから伸びが鈍化するとしても2024年以前の水準を構造的に上回る金需要が維持される可能性があります。
図表8:投資信託とETFへの旺盛な資金流入が日本の金投資需要を後押し
出所:ワールド・ゴールド・カウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2020年1月1日-2025年11月14日。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
2026年の金価格見通し:基本/強気/弱気シナリオ
2025年に見られた金相場の上昇は2026年には鈍化する公算が大きい一方、2026年に1オンス5,000ドルに到達する可能性は3,000ドルに下落する可能性よりも高そうです。また、パンデミック後のレジームにおける1オンス2,000ドルに代わり、4,000ドルが新たな下値となる可能性があります。
基本シナリオ(確率50%):4,000~4,500ドル
保守的な基本シナリオとしては、2026年に金価格は値固めをしつつじり高となり、価格リターンは恐らく1桁台後半か2桁台前半になると想定されます。これは、1978-1979年に並外れたリターンを記録した後の1980年の金相場上昇と一致します。
この基本シナリオでは、FRBは12月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合の後、2026年下期/新議長任命まで利下げを休止する可能性があると想定しています。米ドルは緩やかに下落しますが、米国の経済成長も特に低調だった2025年上期に比べて回復します。中央銀行と中国の個人からの需要は2025年の水準の3%以内となる一方、金ETFへの資金流入は2025年のペースの25~75%の範囲内となります。
強気シナリオ(確率30%):4,500~5,000ドル
当社は強気バイアスを維持しており、金価格が1オンス5,000ドルに到達する確率を30%とみています。このアップサイド・シナリオでは、2026年の中央銀行と中国の個人からの需要は2025年と同水準となり、ETFへの資金流入は2025年のペースの75~100%になると想定しています。米ドル下落トレンドの再加速、リスク資産のボラティリティ/流動性ショック、または米国のスタグフレーション懸念が発生した場合は、最終的に1オンス5,000ドル以上まで金相場の上昇を加速させる可能性があります。
世界的なフィアット通貨の代替資産(alt-fiat)/ディベースメント取引の背後にある構造的テーマ、米政府債務/財政赤字拡大の可能性、米国の国際関与の縮小は、2026年に金価格が5,000ドル超に達する可能性があることを示唆しています。特に、記録的高水準の世界価格が金現物需要の妨げとならず、資産再配分というテーマが金へのエクスポージャー拡大を後押しする場合はなおさらです。
弱気シナリオ(確率20%):3,500~4,000ドル
特に人工知能(AI)が生産性向上と投資利益をもたらした場合、2026年に米ドル相場が反発または安定化し、経済成長が改善する可能性があることは当社も認識しています。金にとってのこの弱気シナリオ下でさえ、米国と世界の債務負担といった構造的要因が解消される兆しが見られるわけではありませんが、米ドル安によるデノミネーション効果と「米国の成長例外主義」への回帰は金に対するセンチメントに打撃を与え、利益確定売りを誘発する可能性が高いと思われます。
記録的高水準の金価格がAPACの現物需要を阻害する可能性(2025年第3四半期は全体的にそれを示唆する有意義な兆候は見られませんでした)もリスク要因です。しかし、1オンス3,500~3,700ドルでの「押し目買い」のための潤沢なキャッシュが待機していると思われます。
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脚注
※1 ブルームバーグ・ファイナンス,L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※2 国際金融協会(IIF)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年6月30日時点。
※3 ブルームバーグ・ファイナンス,L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※4 米投資信託協会 2025年9月30日時点。
※5 国際決済銀行(BIS)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※6 IIF、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※7 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※8 ワールド ゴールド カウンシル 2025年10月31日時点。
※9 ワールド ゴールド カウンシル 2025年10月31日時点。
※10 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※11 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※12 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P. 2025年11月7日時点。
※13 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月6日時点。
※14 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月6日時点。
※15 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※16 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※17 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※18 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※19 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※20 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※21 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※22 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※23 国際通貨基金(IMF) 2025年10月31日時点。
※24 IMF 2025年10月31日時点。
※25 IMF 2025年10月31日時点。
※26 IMF 2025年10月31日時点。
※27 中国人民銀行(PBOC) 2025年10月31日時点。
※28 PBOC 2025年10月31日時点。
※29 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※30 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※31 上海金取引所 2025年10月31日時点
※32 ブルームバーグ・ファイナンス,L.P. 2025年9月23日時点
※33 「金豆」(豆粒大の純金)、しばしば1~10グラムの重さ
※34 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点
※35 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月14日時点。
※36 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月14日時点。
◆用語集
弱気相場 有価証券の価格が下落し、ネガティブな投資家心理が強まる局面。正確な測り方は様々ですが、少なくとも2カ月にわたって広範な市場指数が高値から20%下落した場合、多くの人々から弱気相場と見なされます。この用語は、熊が爪で獲物を襲う際に腕を振り下ろすイメージから派生しています。
強気相場 市場の上昇局面を指し、一部では2年連続での上昇と定義されています。この用語は、雄牛がツノを振り上げるイメージから派生しています。
相関係数 相関係数は、2つの変数間の線形関係の強さの統計的尺度です。値の範囲は-1から+1で示されます。
ディベースメント取引 財政拡張や継続的な金融緩和で通貨の購買力が目減りしやすい局面に備え、金・コモディティ・インフレ連動債などの“通貨に強い”資産を分散して組み入れる投資戦略のこと。
上場投資信託(ETF) ETFは、原資産(通常は指数)へのエクスポージャーを提供するオープンエンド型ファンドです。個別株と同様に、ETFは取引所で終日売買されます。投資信託とは異なり、ETFは空売りと信用買いが可能で、多くの場合は付随するオプションが存在します。
フェデラル・ファンド(FF)金利 銀行とその他の預金金融機関が(通常はオーバーナイトベースで)互いに資金を貸し借りする金利。
フィアット通貨 政府が法定通貨であると宣言した貨幣ですが、現物のコモディティで裏付けられていません。フィアット通貨の価値は、歴史的に、その材料として使用されている金や銀などの価値ではなく、需要と供給に連動しており、その国の信頼と信用のみに基づいて決まります。
国内総生産(GDP) 特定の期間に、その国で生産された財やサービスの総額を示す指標。一国の経済に関する健全性を示す重要な指標で、報道や政府によってしばしば引用されます。
インフレ 一定の期間での経済の財とサービスの価格における全般的な上昇で、通貨単位あたりの購買力の喪失につながります。インフレは多くの場合、通貨供給量が経済成長を上回るペースで増加するときに起こります。中央銀行は経済を円滑に運営するため、インフレの抑制やデフレの回避を目指します。
量的緩和(QE):金利を低下させ、借入を促進し、経済活動を刺激するために中央銀行が国債を購入する例外的な金融政策措置。量的緩和は、短期金利がゼロか、ゼロに接近している場合に検討され、新規紙幣の印刷を伴うものではありません。量的緩和は、貸出と流動性の拡大を促すために、金融機関に資本を大量に供給することでマネーサプライを増加させます。
金のスポット価格 スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
米国債 中央政府の債務であり、「政府証券」としても知られる国債は、一国の信用力と課税力に裏打ちされているため、債務不履行のリスクはほとんどないか、全くないとみなされています。
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*2025年6月末時点、ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産です。SSGA FDはSSGAの関連会社です。すべての運用資産残高は監査前の数値です。
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