AIバブル崩壊を恐れる必要はない。米国市場を牽引するハイテク企業における成長の必然性

過去20年にわたって、いわゆる「GAFAM」を中心とするハイテク株が牽引してきた米国市場は、いま現在、エヌビディアを中心とする「AIブーム」の渦中にある。この急激な株価上昇は「AIバブル」として不安視され、近い将来の崩壊リスクも囁かれる。ナスダック企業およびGAFAM企業の一角で長年働き、ハイテク業界の構造を熟知する米国株投資家・ロジャーパパ氏は、「AIは一過性のブームではない。成長は続く」と断言する。米国ハイテク株の現在地と、今後の市場展望を伺った。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
「AIバブル」崩壊を恐れる必要はない
——過去20年の米国市場を振り返ると、GAFAMを中心とするハイテク銘柄の成長が市場を牽引してきたといえます。一方、現在はAIバブルの崩壊など、ハイテク銘柄の急落が市場に及ぼす影響を恐れる声も聞かれます。ロジャーパパさんは、ハイテク銘柄の現状について、どう考えていますか?
ロジャーパパ:結論からいえば、なにも恐れることはないと考えます。いまは「AIブーム」により、エヌビディアを中心としたAI関連銘柄の成長が注目されていますが、この10年、20年のハイテク業界における成長の一端に過ぎないからです。
わたしは2021年までの9年間、アマゾンで働いていたのですが、アマゾンは2014年からアレクサを販売していますし、アップルのSiriはもっと早くから存在しました。AIの研究と利用の歴史はずっと前から始まっていて、業界の内側から見れば「ブーム」と呼べるような一過性のものではありません。
2022年にChatGPTが発表されAIの利便性が明確になったことで、エヌビディアの急伸と半導体関連株の成長が起こり、AIの市場規模も関連株の時価総額もかつての何十倍にも膨れ上がりました。それが「AIバブル」として不安視されていますが、考えてみてほしいのです。バブルが弾けたら、AIは終わるのでしょうか?
2000年代のITバブルが弾けたとき、ハイテク銘柄は軒並み暴落しましたし、S&P500の株価も約半分にまで下がりました。しかし、インターネットはそれで終焉を迎えたわけではありません。インターネットは発展し続け、そこに関連するGAFAMを始めとするハイテク銘柄は当時を大きく上回る成長を遂げてきました。
同様に、AIバブルが弾けたとしても、それは一時的な暴落に過ぎません。また、あくまで株式市場のなかの話であって、実態的なAIへの需要が消えるわけではないのです。巨大ハイテク企業によるAIの研究と活用は進み、エヌビディアをはじめとする半導体製品の需要は高まり続けてきました。そして、AIの発展によってセキュリティ関連株が高騰しているように、新たな市場を生み出しながら、AIを中心にハイテク産業は今後も拡大の一途をたどっていくはずです。
——短期投資なら戦々恐々とすべき状況かもしれませんが、中長期の投資であれば心配することはないということですね。
ロジャーパパ:そうです。AIバブルという言葉に踊らされず、自身の投資する銘柄の成長ストーリーと、投資戦略について考えることがなにより大切です。
エヌビディアを例に挙げれば、総売上に占める粗利益率が75%もあります。これはつまり、100万円でつくったGPUを400万円で売っているような強かなビジネスモデルです。しかも、その主な購入先はGAFAMをはじめとする巨大テクノロジー企業で、顧客基盤も盤石です。
今後もインターネットやWebサービス、AIの発展とともにGAFAMが成長していく以上、エヌビディアを中心に世界の半導体関連銘柄とも紐づくAI市場も、長期的には成長の一途にあると見ています。
莫大な投資によって高い成長性を実現し続ける
——GAFAM、さらにテスラとエヌビディア加えた「マブニフィセント・セブン(M7)」を中心とした米国ハイテク銘柄の成長性についてはどう考えますか?
ロジャーパパ:人口動態、企業の人材戦略など様々なファクターがありますが、圧倒的な成長投資(事業成長に向けた投資)に触れておきたいと思います。
例えば、アマゾンは巨額の成長投資によって世界屈指の巨大企業に成長しましたが、それは現在も継続されていて、2025年だけでアマゾンは1,000億ドル(約15兆円)もの成長投資を行っています。一企業の投資額として凄まじい規模といえるでしょう。次いでメタも75億ドル(約11兆円)の投資を行っています。
アマゾンの成長投資の一例を挙げると、FC(フルフィルメントセンター=物流センター)と技術革新です。日本では全国各地にFCを立ち上げ、首都圏の需給に対応しやすい神奈川県内では5カ所ものFCが設置されているほどです。
なかでも、2024年に設置された相模原FCは、国内最大級の東京ドーム3個分の広大な敷地を持ちますが、ここに最先端のアマゾンロボティクスを導入し、商品棚が働く人の元へ動くことで、業務の負荷軽減と出荷・入荷時間の短縮を実現しています。この技術は2022年に日本で初めて成功し、現在は世界中のFCで導入が進んでいます。
こうした、ダイナミックでありながら、着実な成長に資する投資を続けてきたからこそ、米国のハイテク産業は成長してきたのです。その規模がさらに拡大し、他の追随を許さないのなら、今後も米国ハイテク企業が米国経済、ひいては世界経済を牽引していくことは必然であると考えます。
もちろん、「無理な投資をしている」わけでもありません。アマゾンの2025年度の営業キャッシュフローは1,300億ドル(約20兆円)あり、そのうちの1,000億ドル(約15兆円)を投じているに過ぎないことも重要な視点です。
——そうはいっても、利益に占める成長投資の配分は高いですね。
ロジャーパパ:確かにそうなのですが、米国企業の基本姿勢には、利益が出れば株主に還元するか、成長投資に充てるというものがあります。日本企業のように利益が出たら留保しようという考えではありません。米国企業では、日本のように叩き上げの社員が昇進して役員になるではなく、外部のプロ経営者が集まり運営されます。すると、経営者としての成果が強く求められるため、株主還元か成長するための投資を行うという流れになるのは必然といえます。
また、風土としても惜しみなく投資するぶん、従業員に求めるリターンが大きい傾向はあると思います。わたしがアマゾンで日本法人の戦略に携わったときの話ですが、とある戦略の予算として100億円を要求したところ、「200億円出すから3倍の成果を出せ」といわれたのです。
結果として、そこまでのリターンを出せるほど当時の日本のマーケットは大きくなかったので、100億円分の追加は固辞しました。受けてしまって目標未達となれば、「パフォーマンスが低い」として簡単にクビになってしまうのも米国企業の風土です。
米国ハイテク企業の成長を支える日本企業の強み
——ここまで、米国ハイテク企業の成長要因と展望を伺いました。少し視点を変えて、これだけ大きな市場に拡大した米国のハイテク産業が、日本市場に与える影響について伺います。2025年12月11日時点で日経平均株価は5万円を超える株高にありますが、その株高を牽引しているのは半導体関連銘柄です。そして、その商品やサービスの供給先は、エヌビディアをはじめとする米国のハイテク企業ですよね。日米のハイテク企業のつながりを、ロジャーパパさんはどのように見ていますか?
ロジャーパパ:大事な視点は、以前のように「日米の企業が競い合う」関係ではないということです。先に成長投資額に触れましたが、米国企業のように10兆円、15兆円を投資することなど、いまの日本企業にはできませんから、対決姿勢では到底敵いません。
いま、日本企業に求められているのは、米国企業とのコラボレーションなのです。先日、moomoo(ムームー)証券のイベントでエヌビディア日本代表・大崎真孝さんの講演を拝聴したのですが、「なぜ、米国ハイテク企業が日本支社を持つか?」というと「日本企業とのコラボが必要だから」とおっしゃっていました。
先に語った、アマゾンの物流センターにおけるロボティクス技術もそうです。米国の先端技術を日本でかたちにして、それを世界に横展開していますよね。イノベーションは米国企業の得意分野ですが、カスタマイズは日本企業の得意分野なのです。日本企業の丁寧な仕事とニーズを汲んで着地させる能力を、米国のハイテク企業は必要としているわけです。ですから、米国ハイテク企業の成長が続くことは、日本市場にとってもメリットといえるでしょう。
——日本企業が米国ハイテク産業の恩恵を受けているだけでなく、米国側にとっても日本の技術・技能が必要不可欠なのですね。
ロジャーパパ:特に、日本の半導体の製造装置・材料メーカーや、計測・検査の領域のサービスでも日本の精度の高い仕事は信頼されていて、米国ハイテク産業を下支えするファクターのひとつといえるでしょう。
それは、ハイテク産業に限ったことではないですよね。今年、ドバイにも行って現地の不動産業界の方々ともお話をしたのですが、日本の大工や鳶、電気工事士といった、高い技能を持ち、信頼できる職人を強く求めていました。
実際に現地のマンションなどの物件も見たのですが、お風呂場の床に水はけのための勾配があり違和感を覚えました。「ほぼ水平の床なのに、水が排水溝に向かって流れていく」ことは日本ではあたりまえでも、国外に出ればとんでもなく高い技術・技能なのです。
ハイテク産業に話を戻します。米国企業は人材戦略においても、成長志向です。特に成長性の高いハイテク産業では、基本方針として毎年パフォーマンスを定量的に評価し、下から20%の社員は解雇してしまいます。そうしてスキルの低い人を排除する代わりに、高パフォーマンスの社員の給料は青天井のごとく引き上げ、世界中から有能な人材を集めているのです。
しかし、それだと若手は育ちませんし、組織に対する忠誠心にも疑問が残ります。実際、高い専門スキルとプロジェクトマネジメントスキルを持つ30代、40代のベテラン人材は取り合いになっており、米国ハイテク企業を渡り歩いている実態があります。
一方、日本にはじっくり人を育てる風土があるからこそ、現場人材は高い技術・技能水準を安定的に保ち、組織的に顧客の課題解決に真摯に取り組むプロフェッショナル精神が育まれるのかもしれません。
わたし自身は、今後も圧倒的な成長性を誇る米国株への投資を行います。しかし、日本株に焦点を当てて投資をするのであれば、「米国ハイテク産業の発展を支える日本企業」という視点で、様々な可能性を見ていくのも面白いと思います。
ロジャーパパ
ナスダック企業3社で管理職として20年勤務した後、2021年にサイドFIRE生活を開始。米国株投資歴12年。米国株投資の実績や銘柄紹介、投資戦略などをわかりやすく配信するYouTubeチャンネル「ロジャーパパ米国株投資」は、チャンネル登録者数15万人以上、総再生回数2,000万再生を突破。著書に『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する!FIRE最強の教科書』(SBクリエイティブ)がある。
