教えて!長期株式投資さんの資産形成術 第6回 実際に株式投資を始めてみよう!

みなさんこんにちは。長期株式投資です。
この連載では、これから投資を始めたいと考えている初心者の方が、無理なく基礎を身につけられるよう、全12回にわたって株式投資の重要ポイントを体系的に解説していきます。毎月1回の更新で全12回を予定しており、最終回を迎える頃には、読者のみなさんが初心者を卒業できる状態になっていることを目標としています。
また、投資のイメージをより具体的に持っていただけるよう、毎回、私の保有銘柄トップ20を公開し、簡単なコメントも添えて紹介していきます。銘柄選びのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
第6回となる今回は、いよいよ実際に最初の一歩が踏み出せるよう、日本を代表する企業の特徴を知り、さらに具体的な運用方法について学んでいきましょう。
日本株で「長期投資の軸」をつくる!銘柄選びの基本的な考え方
株式投資を始めてみると、「どんな銘柄なら安心して長く持てるのか」という問いに必ず向き合うことになります。短期的な値動きに振り回されるのではなく、企業の本質的な強みを見極め、時間を味方につけて資産を育てていく。そのためには、企業の特徴や財務体質、株主還元の姿勢を理解し、自分なりの判断軸を持つことが欠かせません。
日本には世界に誇れる企業が数多く存在しますが、その中から「長期で持ちたい企業」を選ぶには、短期的な株価の動きではなく、企業の中身を丁寧に見ていく姿勢が大切です。日本株には、派手さはなくても堅実に利益を積み上げてきた企業が多く、長期投資との相性が非常に良いという特徴があります。話題性よりも企業の積み上げる力を重視する投資家にとって、日本市場には魅力的な銘柄が豊富に揃っています。
長期保有に向く企業とは何か
長期投資に向いた企業の条件として、まず挙げられるのが「安定した収益基盤」と「継続的な株主還元」です。
たとえば、エネルギー開発大手のINPEXは、原油価格や為替レートを前提にした業績予想を丁寧に開示し、配当下限を明示することで株主に安心感を与えています。世界的な資源価格の影響を受けやすい業種ではありますが、事業規模と財務基盤の厚さは長期投資家にとって魅力です。
生活必需品の分野では、花王のように長年にわたり増配を続けてきた企業があります。近年は業績が伸び悩んでいるものの、36年連続増配という実績は、企業文化としての株主還元意識の高さを示しています。医薬品分野では、たとえばアステラス製薬や大塚ホールディングス等の企業は、安定した収益基盤と継続的な増配、自社株買いなどを通じて株主に報いてきました。ただし、アステラス製薬は主力薬の特許切れが控えているなど、長期投資では事業構造の変化にも注意が必要です。
景気敏感株の中にも、長期投資の対象として検討できる企業があります。ブリヂストンやコマツ、クボタといった世界的なメーカーは、景気後退局面では業績が落ち込む傾向にあるものの、長期的には世界需要の拡大を背景に安定した成長を続けてきました。特にクボタは景気敏感株に分類されながらも、実質的には累進配当を続け、自社株買いにも積極的です。景気に左右されやすい企業であっても、長期的な需要が見込める産業であれば、投資対象として十分に検討できます。こうした企業は、景気の波に揺られながらも、長い目で見れば確かな成長を積み上げていく力を持っています。
総合商社・金融・通信──日本の「安定収益」を支える代表的な高配当株
総合商社は、ここ数年で長期投資家からの評価が大きく高まった分野です。伊藤忠商事、三井物産、三菱商事はいずれも累進配当政策を掲げ、資源・非資源のバランスを取りながら安定した利益成長を実現しています。総合商社は事業ポートフォリオが幅広く、景気変動の影響を受けにくい収益構造を持つようになってきた点も魅力的です。世界中の事業に分散しているため、どこかの地域が不調でも別の地域が補うという強みがあります。
銀行株では三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなどが累進配当を明確に打ち出し、金利環境の変化を追い風に収益力を高めています。金融機関は景気の影響を受けやすい一方で、安定した配当政策を掲げる企業も多く、長期投資の柱として検討できます。
また、東京海上ホールディングス、NTT、KDDIといった企業も、事業基盤の堅牢さや安定したキャッシュフローを背景に、長期保有に向いた銘柄として知られています。保険や通信、インフラ系の企業は、景気変動の影響を受けにくく、ポートフォリオの「土台」として機能してくれます。こうした企業を数銘柄組み入れておくことで、相場全体が荒れたときでもポートフォリオの安定感が増します。
一方で、ソニーグループやファーストリテイリング、キーエンス、任天堂などの日本を代表する企業も長期投資の候補になりますが、株価水準や業績の変動幅、配当方針などを踏まえて慎重に判断する必要があります。株価が高水準にある企業は、優れた企業であっても投資タイミングを見極めることが重要です。良い企業=良い投資先とは限らず、「良い企業を、良い価格で買う」ことが長期投資の基本になります。
指標を使って株価の妥当性をチェックする
銘柄選びの際には、これまで学んできた指標を活用することが役立ちます。配当利回りが高く、配当性向が無理のない範囲に収まっているか。EPSが安定して、長期的に右肩上がりで推移しているか。PERやPBRの値が過去のレンジと比べて割安(低い)な水準にあるか。こうした視点を組み合わせることで、企業の本質的な価値と市場の評価とのギャップを見つけやすくなります。
特にPBRは、企業の純資産という「土台」を基準にしているため、下落相場でこそ威力を発揮します。日経平均のPBRが過去の暴落時にどこまで下がったかを知っておくと、相場全体の悲観度を測るうえで役立ちます。
年齢に応じた「現金比率」の目安と、少額からの分散投資ステップ
銘柄選びと同じくらい大切なのが、投資全体の設計です。特に現金比率は、長期投資における「精神安定剤」のような役割を果たしてくれます。一般的には、自分の年齢と同じ値の割合を現金で保有するという考え方があります。たとえば、30歳なら30%を現金、70%を株式。70歳なら70%を現金、30%を株式という具合です。若い時期には多少の失敗は許容されることから株式の比率を高めに設定し、年齢を重ねるにつれて現金の比率を増やしていくことで、不測の事態にも対応しやすくなります。
実際の運用ステップとしては、まず少額で多くの銘柄に触れることから始めるのが良いでしょう。たとえば、1日1銘柄ずつ、あるいは週に1銘柄ずつ、20銘柄程度に分散して1株ずつ投資していく方法があります。少額であれば、株価が下がったときの心理的な負担も小さく、投資を続けやすくなります。また、20銘柄程度に分散することで、個別企業に特有のリスクを抑える効果も期待できます。
次のステップでは、各銘柄への投資金額を均等に近づけていきます。株価が下がった銘柄を少しずつ買い増すことで、平均取得単価が下がり、含み損からの回復が早くなることがあります。
さらに、年に一度はポートフォリオ全体を見直し、現金比率が目標から大きく外れていないかを確認します。株価が上昇して株式比率が高まりすぎた場合は、追加投資を控えて現金を積み上げる。逆に株価が下落して株式比率が低下した場合は、少しずつ買い増してバランスを整えるようにします(リバランスと呼ばれています)。また、売却を伴わずに買い増しのみで全体を調整する「ノーセルリバランス」という方法もあり、長期投資家にとっては有効な選択肢です。
株式投資は「続けた人」が最終的には報われる
長期投資の基本は、焦らず、無理をせず、淡々と続けることにあります。現金比率を意識しながら、少額で多くの銘柄に触れ、時間をかけて投資金額を均等に整えていく。こうした積み重ねが、将来の大きな成果につながっていきます。
日本には、世界に誇れる企業が数多く存在します。それぞれの企業の特徴や強みを理解し、自分なりの基準を持って投資を続けていくことで、長期的に安定した資産形成が実現しやすくなるはずです。投資は「一度の大勝ち」ではなく、「長く続けた人が最終的には報われる」世界です。自分のペースで、しかし着実に歩みを進めていきましょう。
長期株式投資の現在の保有銘柄トップ20
さて、続いて執筆者の保有銘柄トップ20のコーナーです。この連載では投資の基本を学んでいただくことに加えて、執筆者がどのような投資を行っているのかについて、保有銘柄トップ20を毎回公開しコメントを添えて紹介していきます。これにより、読者みなさんに投資や運用の具体的なイメージを持っていただければと考えています。
前回(6月5日)から銘柄の変更はありません。NTTへ20株、INPEXへ1株の追加投資を行っています。花王が株式を2分割しているため、株数は500株から1,000株へと増加していますが、株式分割それ自体は企業価値を高めるわけではありませんので、評価額に大きな変動はありません。
花王のIRでは、株式分割の目的として以下のように記載されています。
株式分割により、投資単位当たりの金額を引き下げることで、当社の「豊かな共生世界の実現」というパーパスに共感いただける個人投資家をはじめとした投資家の皆様がより投資しやすい環境を整え、投資家層のさらなる拡大を図ることを目的とするものです。
ポイントは、投資単位当たりの金額を引き下げることで、投資しやすい環境を整え、投資家層のさらなる拡大を図る、というところにあります。平たく言えば、買いやすくすることで株主を増やすということですね。このことを流動性が高まる、などと呼ぶこともあります。
もう20年以上前の話になりますが、2006年に発生したライブドアショックの前には、株式分割を発表しただけで株価が急騰するというようなことがよく起こりました。前述の通り、株式分割それ自体が企業価値を高めるわけではないため、仮にそのようなことが起こったとしても冷静に相場と向き合っていきたいですね。
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
1977年生まれ、熊本県出身。「日本の配当株」専門の元サラリーマン投資家であり、1級FP技能士。2004年から株式投資をはじめ、ハイリターンを求めて新興市場にて個別銘柄の投資をするも、2006年にライブドア・ショックで大きな損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマン・ショックで壊滅的な痛手を被る。そこで、2009年からはポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5,128円と過去最高を更新。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアを実現した。これまでの投資生活で磨いた技術やノウハウをX(旧:Twitter)やブログにて配信し、個人投資家のサポートに尽力するほか、著書に『【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 経営戦略から“ほぼ永遠に儲かる企業”を探す方法』(KADOKAWA)、『マンガでわかる!超はじめての株式投資』(永岡書店)がある。


