SPYD・HDV・VYM「三本柱」で分散投資を実現。米国高配当ETF投資の実践とこれからの展望

インデックス投資、そして日本の高配当個別株投資に加え、米国ETFを活用した高配当株投資を実践する節約・投資系ユーチューバーの節約オタクふゆこ氏。SPYD・HDV・VYMの3本のETFで分散投資し、「最高値から5%以上下落したタイミングで買う」という独自ルールで運用しているという。5年間の実運用で見えてきた各ETFの個性、NISA枠の配分術、そして、将来の全世界分散型高配当ETFへの展望まで、誰でも取り入れやすい米国高配当株投資の実践方法を聞いた。
構成/岩川悟 取材・文/小林義崇 写真/塚原孝顕
「日本円だけに依存しない」ために米国投資とETFを選んだ
──ふゆこさんはインデックス投資をベースにして、日本高配当株投資も行っています。そして、日本国内だけでなく、米国への投資を考えた理由を教えてください。
ふゆこ:多くの人は日本企業に勤めていて、給料は日本円で受け取っていますよね。そのうえで日本の高配当株に投資すると、配当金もまた日本円で入ってくるわけです。つまりそれは、収入も投資も日本経済に依存している状態を意味します。投資の大原則は「分散」ですから、日本だけでなく他の国にも投資することはとても大事だと思っています。
例えば、円安が大きく進んだ局面でも、米国高配当株投資をやっていれば配当金の円換算額は増えるということが起こり得ます。もちろん逆もまた然りですが、それが分散することにあるメリットです。そのなかで、やはりアメリカは世界一の経済大国で時価総額も圧倒的ですから、米国高配当株投資をやる意味は大きいと考えています。
──その米国市場で、個別株ではなくETFを選ばれた理由は?
ふゆこ:最初は米国株の決算資料をどこから見ればいいかもわからなかったですし、いまのようにAI翻訳もなかったため英語の壁もありました。それに加えて、米国株は5倍株や10倍株が出現する一方で、下落幅もダイナミックです。日本で生活していますから、米国企業の商品やサービスを日常のなかで多く見ることができないので、数字に対して肌感覚を持ちにくいことも理由です。
その点、SPYD・HDV・VYMの3つであれば、信託報酬率が0.06%から0.08%と超低コストで、優良な高配当株に自動的に分散投資が可能です。わたしは、「リスクを抑えて、失敗をできる限り避ける」というのを投資方針として掲げているので、その観点からもETFは合理的な選択でした。
【SPYD】
SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF。S&P500構成銘柄から、配当利回り上位80銘柄を四半期ごとに抽出。高い配当利回りが特徴。
【HDV】
Iシェアーズ・コア米国高配当株ETF。「モーニングスター配当フォーカス指数」(単に利回りが高い順に並べるのではなく、モーニングスター社独自の厳しい「質」の審査をパスした企業のみで構成されているのが特徴)に連動するように設計され、財務的に健全で持続的に配当を支払う能力が高い、米国の高配当利回り企業81銘柄に投資。
【VYM】
バンガード・米国高配当株式ETF。米国市場の配当利回りが平均より高い大型・中型・小型株のなかから、収益性と健全性を兼ね備えた572銘柄を対象に、構成比率を時価総額加重平均で算出するFTSE High Dividend Yield 指数に連動したETF。
──米国個別株投資への注意点として、「S&P500からGAFAM(Google、Apple、Meta(旧Facebook)、Amazon、Microsoftの頭文字を取った言葉)を除いた残り495銘柄だけのチャートを見ると、日経平均とほとんど変わらない成長率」という指摘があります。この点についてはどうお考えですか。
ふゆこ:そうなんです。2010年以降のGAFAMの成長は目覚ましく、S&P500全体のリターンを一気に押し上げました。これは一見、「米国市場全体が力強く成長している」ように思えてしまいますよね。でも実際には、わずか5銘柄のスター銘柄が全体の数字を引っ張っていた側面がとても大きかったのです。2000年代に投資を始めたとして、S&P500の構成銘柄のなかからその5銘柄を見極めることができたかというと……わたしは正直、自信がありません。だからこそ、米国株に投資するならETFで広く分散するのが合理的だと思うのです。
米国高配当ETFへの投資は「ほったらかし」と「年4回のご褒美」が魅力
──米国高配当ETFに投資するメリットや、日本の個別株投資と比べた場合の違いなども教えてください。
ふゆこ:「ほったらかしにできる」「運用コストが安い」「年4回の配当がある」「タコ足配当(運用益が出ていないのに元本を切り崩して配当を出すこと)の心配がない」という部分がメリットですね。
なかでも、最大のメリットは「ほったらかし」にできるという点だと感じます。日本の高配当株投資では、財務分析から銘柄選びまで自分で行うことが基本ですが、米国高配当ETFは既に優良な高配当株が厳選されていて、利回りが下がった銘柄はファンド側で自動的に入れ換えてくれます。インデックスファンドと同じ感覚で、投資したあとは放置という感覚でいます。
それと、年4回の配当も大きいですよね。日本の個別株の配当は年1回から2回が一般的ですが、米国高配当ETFは四半期ごとに配当が振り込まれます。3カ月ごとの「ご褒美」は、長期投資を続けるうえで大きなモチベーションになります。株式投資は長期戦なので、証券会社の口座のデジタルな数字だけを追っていると途中で飽きてしまうことがあるのです。定期的に配当金という実感が得られることは、投資を楽しむ原動力になっています。
加えて、「タコ足配当」の心配がないことも安心材料です。一部の投資信託では運用益が出ていないのに元本を切り崩して配当を出すことがあるようですが、わたしが投資しているETFであるSPYD・HDV・VYMは、組み入れている個別株から得た配当金のみを投資家に分配する仕組みなので、そうした問題とは無縁です。
5年の保有で見えた各ETFの個性
──SPYD・HDV・VYMそれぞれを保有した実感として、「よかった」、あるいは「想定と違った」というものはありますか。
ふゆこ:それぞれ同時期に買い始めて、5年くらい保有しているのですが、率直にいうと3つを均等に買っておいてすごくよかったなと思っています。信託報酬が低く、投資業界でも「高配当ETFの定番中の定番」という安心感があります。それに、3つを均等に保有することで「ちょうどいい業界分散」ができます。
ただ、それぞれの個性がかなり違うことは5年間で強く実感しましたね。VYMとHDVはかなり安定していて、相場全体が下落しても比較的値崩れしにくい印象です。一方、SPYDは金融セクターや不動産セクターなどの景気敏感な銘柄が多いぶん、相場が全体的に下がったときに一緒に下落します。ただ、それが逆にいいところでもあるのですが、株価が下がると配当利回りが相対的に上がるので、買い増しのタイミングがわかりやすいのです。
──逆にいうと、VYMやHDVは買い増しのタイミングが掴みにくい?
ふゆこ:そうなんです。下落に強いのは嬉しいのですが、いまのわたしはどんどん買い増していきたいフェーズなので、なかなか配当利回りが上がらず買い時が見えにくいという側面はあります。将来、取り崩しの段階に入ったら安定感が心強いはずですが、いまは資産形成期なので、SPYDの値動きの大きさがむしろありがたいですね。とはいえ、3つの個性が違うからこそ、均等に持つ意味があると改めて感じています
NISA枠はインデックスをコア、高配当をサテライトで配分
──インデックス投資も日本高配当株も、さらには米国高配当ETFも全部やりたいという読者もいると思います。NISA枠が限られるなかで、どのように配分すればいいでしょうか。
ふゆこ:NISA枠を全部埋めるのであれば、まず考えるべきは「資産を増やしたい」という需要のほうが、「キャッシュフローを増やしたい」という需要よりも大きいだろうということです。高配当株も気になるという温度感の人であれば、インデックスと高配当株(日本・米国)を「2対1対1」くらいの比率で配分するバランスが考えられます。あるいは、インデックスの比率をもっと大きくして、高配当株は日米合わせて全体の2割から3割程度に抑える配分でもいいと思います。
いずれにしても、コアはインデックスで、サテライト(コア資産を補完する目的で保有する、より積極的な投資対象)が高配当という考え方です。「コア・サテライト戦略」を考える場合、優先順位の第1位はやはりインデックスにしたほうが再現性は高いといえます。
──あまりリスクを取りたくないという場合は、全部インデックスへの投資でもいいですよね。
ふゆこ:もちろんです。高配当株投資はどちらかというと下落の局面で「いくら買うか」という判断が必要になりますから、不安なときにそれをやると判断を誤る人がいるかもしれません。そう考えると、基本的にはインデックス重視のほうがおすすめしやすいですし、安心だと思います。
アメリカという国がなくなるレベルでなければルールは変えない
──今後、大きな相場変動があった場合に、米国高配当ETFの保有方針を変更する可能性はありますか?
ふゆこ:アメリカが時価総額やGDPで世界1位でなくなるといった根本的な変化があれば検討するかもしれませんが……仮に2位になってもいまのルールは基本的に変えないでしょうね。長い世界の歴史を振り返れば、国が消滅するといったことも起こり得るわけですが、アメリカがなくなるようなことは考えにくいですから。
過去200年の米国株のデータを見ると、世界大恐慌や第一次・第二次世界大戦、ベトナム戦争など、その最中は「アメリカは大丈夫か……?」と思われるような出来事が幾度もありました。しかし結局、力強くそれらのことを乗り越えてきています。だからこそ、安易にいまのルールを変えないほうがいいと考えているわけです。
──最後に、理想のポートフォリオ像をお聞かせください。
ふゆこ:低コストで全世界に分散できる高配当ETFや投資信託が出てきたらおおいに検討したいですね。わたしはインデックス投資ではS&P500よりオルカン(「eMAXIS Slim 全世界株式」の通称)派なのですが、本来は高配当株投資も世界市場に分散していくのが理想だと考えています。信頼できる「全世界分散型の高配当ETF」が登場したら、いま持っているETFから乗り換えるかもしれません。
ヨーロッパの先進国の成長率も、時期によっては日本やアメリカを上回ることがありますし、新興国にもわたしが知らないだけで財務優良な高配当銘柄があるはずです。いまは日米の調子がいいからといって、将来もそうとは限りません。世界分散をするということ自体がわたしの投資スタンスに合っているので、インデックスだけでなく高配当投資でもそれができるなら理想的です。
もしそうなったら、個別株は余裕を持った「遊び枠」として残して、コアの高配当投資は全世界型にシフトするイメージです。加えて、いまはゴールドやビットコインにも分散し始めているので、「現代ポートフォリオ理論」(1952年にハリー・マーコウィッツによって提唱された、「リスクを抑えつつ、リターンを最大化するためにはどのように資産を組み合わせるべきか」を数学的に説明した理論)の考え方を用いて、自分にとって最適なアセット比率を模索していきたいと考えています。
(プロフィール)
節約オタクふゆこ
1993年生まれ。節約・投資系YouTuber。理系の大学院修了後にエンジニアとして就職するも、将来のお金に対する不安をきっかけにお金について学び始める。奨学金477万円を返済しながら月10万円生活で年間300万円を貯金し、20代で資産1,000万円を達成。現在は脱サラしてフリーランス。2021年から運営するYouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」は登録者66万人超(2026年5月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)、『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)がある。
