投資候補の9割が脱落する「8ステップ」で厳選。失敗しにくい日本高配当株の選び方

インデックス投資を資産形成の柱としながら、日本の高配当個別株にも投資する節約・投資系ユーチューバーの節約オタクふゆこ氏。著書『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)では、配当利回り3.75%以上を入口に、赤字回数・財務指標・配当性向・競合比較といった8つのステップで投資候補を絞り込む独自の銘柄選定プロセスを公開した。同氏に、高配当株投資の魅力とリサーチの実践法、今後の運用方針を聞いた。
構成/岩川悟 取材・文/小林義崇 写真/塚原孝顕
個別株投資にはダイヤの原石を見つける喜びがある
──「資産形成はインデックス投資だけで十分」という考え方がある一方で、ふゆこさんはあえて日本の高配当個別株に投資しています。その理由を教えてください。
ふゆこ:高配当株投資に興味を持ったきっかけは、「FIRE」(「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を合わせた言葉で、「経済的自立」と「早期リタイア」を意味する)したいという気持ちが大きかったからです。FIREを実現している先人たちの発信を見ていると、不動産投資や高配当株投資を通じて、自動的に振り込まれるキャッシュフローを増やしている人が多かったのです。「FIREを目指すなら、キャッシュフロー型の投資もしていったほうがいいのかもしれない」と思ったのが最初の動機ですね。
それに、インデックス投資に少しだけ物足りなさも感じてしまいました。「資産が増えている」という実感は、あくまでも画面上の数字だけで得られるものです。少しだけ売却するのも手ですが、せっかく増えた資産には手をつけたくありません。FIREを実現した多くの先人たちが、「高配当株投資や不動産投資で不労所得を得ることを、早いうちから経験しておいたほうがいい」といっていることが気になっていました。
──実際に個別株を自分で選ぶなかで、インデックス投資とはまた違う面白さを感じていますか。
ふゆこ:それはまったく異なるものですね。有名な高配当株に関しては、「定番銘柄」として多くの人が知っているのでそこに特別な発見はないわけですが、ニッチな高配当銘柄を見つけたときの「ダイヤの原石を見つけた!」という感覚がたまりません。日本の小型株のなかには、財務優良なのに知名度がそこまでなく、株価が上がらないために配当利回りが高いお宝銘柄があり、そうした銘柄を自分で探り当てる面白さ、醍醐味があります。
インデックス投資は「これをやればいい」という答えがある程度見えていますが、高配当株のニッチな銘柄は本当に自分で判断しなければなりません。リスクを負っている感覚もあるし、頼るところもない。でも、それがすごく「自分でやっている感」があって楽しいし、実際にリターンも出ているので、自分で分析して学んでいる実感を得られます。
自分自身の分析を信じて買った2銘柄
──著書に掲載されている、個別株を厳選するための8ステップはかなりシビアな選別プロセスです。最初に「配当利回り3.75%以上」でスクリーニングした後、「過去15年以内に赤字決算が2回以上ある企業は除外」するだけで候補の9割近くが脱落するとのことですが、その厳しいフィルターをくぐり抜けた銘柄のなかで、「これを選んでよかった」と特に感じているものはありますか。
ふゆこ:まず挙げたいのが、菊水ホールディングス(6912)です。この銘柄は、他の高配当株ブロガーやユーチューバーがあまり取り上げておらず、自分の分析で判断して買った銘柄でした。いまは株価が上がって配当利回りが少し下がっていますが、株価は買値から約2倍です。配当もちゃんと出ていて業績も右肩上がりですし、自分で見つけた銘柄だからこそ、「買ってよかった」という思いがひときわ強いですね。
──もう1銘柄挙げるとすれば?
ふゆこ:三菱HCキャピタル(8593)を挙げたいと思います。2020年に高配当株投資を始めたばかりの頃に買った銘柄で、正直なところ、それまでは名前もよく知らない会社でした。でも、著書で解説した8ステップの基準に沿って分析してみたら財務がよかったので、思い切って買ってみたのです。結果的に株価は約1.8倍になり、配当も安定して出ています。いまではとても人気の銘柄ですが、当時は株価が低かったので配当利回りも4%から4.5%くらいありました。
三菱HCキャピタルに関しては、「知らない会社だから怖い」と思っていたけれど、重要なのはそこではなく、財務の健全性や業績の安定性を見極めることだと教えてくれた銘柄だったと振り返ることができます。8ステップの基準に沿って分析すれば、知識が少ない頃の判断でも大きな失敗は避けられるということを理解しました。
月約1時間のリサーチで「宝探し」をルーティン化
──もう少し深掘りしていきます。銘柄選びの具体的な手順を詳しく教えてください。
ふゆこ:「Yahoo!ファイナンス」の配当利回りランキングを上から順に見て、配当利回り3.75%以上の銘柄をピックアップします。次にIRバンク(上場企業の財務データを時系列で確認できるウェブサイト)で過去15年以内に赤字があったかどうかをチェックします。先の話にあったように、ここで多くの銘柄が脱落しますね。
IRバンクでの財務チェックをクリアしたら、売上高や営業利益率の推移が右肩上がりかどうかを確認します。そこまでOKであれば、決算資料や売上高の国別内訳、特定企業への依存度などを見ます。場合によっては、売上先の企業の財務まで確認することもありますね。さらに、企業のウェブサイトでIR情報や中期経営計画、統合報告書を読み込み、最後に日経電子版などで不祥事がないかを検索します。ここまで自分で判断してからスプレッドシートにメモを残し、最後に他の高配当株ブロガーなどの分析をチェックするのが基本的なプロセスです。
ブロガーなどの分析を最後に見るのは、最初から見てしまうと、その意見や考えに判断が引っ張られてしまうからです。まず自分の目で分析して結論を出してから、他の人の見方と比較する。自分の判断との差分があったら、その根拠を考察するようにしています。
──月にどのくらいの時間をリサーチに費やしていますか。
ふゆこ:全然多くなくて、月に約1時間程度集中して行うというルーティンですね。これは、自分のなかでの宝探しのような時間といえます。過去にチェック済みの銘柄は省くため、新たに見る銘柄はそれほど多くありません。最初は何時間もかかっていましたが、毎月コツコツやっているうちに「この条件なら残す」「これは除外」という判断が自然と速くなりました。
高配当株投資ではETFの活用も一手となる
──ふゆこさんが高配当株投資を始めてからは、株価全体が好調でその恩恵も受けられたそうですね。成績もよかったと推測します。今後、相場が下落基調に転じた際、運用方針を変える可能性はありますか。
ふゆこ:基本的にはないと思いますが、ひとつだけ変わり得るとすれば「買い時」の判断基準ではないでしょうか。PER(株価収益率。株価が1株あたり利益の何倍になっているかを示す指標)15倍以下・PBR(株価純資産倍率。株価が1株あたりの純資産の何倍になっているかを示す指標)1.5倍以下を買い時の目安にしていましたが、日本株全体が上昇する相場環境になってきていて、もっと高い水準があたりまえになっていく可能性もあります。よって、そのあたりの基準値は変わるかもしれません。
ただ、ポートフォリオ全体で配当利回り4%以上をキープするという基準は変えないと思います。ですから、配当利回りは重視するはずです。もちろん財務優良であることが前提ですが、高配当株の魅力は利回りの高さであることに変わりないので、その判断基準だけは守っていくと考えます。また、下落局面で売却するということはまずないですね。むしろ、買い時だと捉えます。
──日本高配当株からリターンを得るうえでは、例えば、日経平均高配当株50指数連動型ETF(株と同じようにリアルタイムで売買できる上場投資信託)なども選択肢に入ると思いますが、個別株とETFはどのように使い分ければいいと考えますか?
ふゆこ:正直なところ、多くの人にとっての最適解は分析などの手間がかからないETFだと思っています。いまは信託報酬などのコストもそこまで高くないですし、内容も優良ですからね。ですから、最初はETFから始めて、自分が投資しているETFのなかに含まれている銘柄を分析したくなったら、個別株に進むという順番がいいのではないでしょうか。
一方、「自分で勉強するのが好きだ」という人はいきなり個別株に行ってしまってもいいと思います。ただ、どうしても分析に時間がかかるので、時間をかけたくない人はETFのほうが向いているでしょう。わたし自身は最初からいきなり個別株に飛び込みましたが、大事なのは、自分の性格や使える時間に合った投資手法を選ぶことです。「誰でも取り組める再現性の高い投資手法」をベースにするなら、ETFはその入口として最適だと思います。
(プロフィール)
節約オタクふゆこ
1993年生まれ。節約・投資系YouTuber。理系の大学院修了後にエンジニアとして就職するも、将来のお金に対する不安をきっかけにお金について学び始める。奨学金477万円を返済しながら月10万円生活で年間300万円を貯金し、20代で資産1,000万円を達成。現在は脱サラしてフリーランス。2021年から運営するYouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」は登録者66万人超(2026年5月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)、『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)がある。
