初心者の投資戦略は、インデックス投資だけとは限らない。時間を味方につける配当株投資の考え方

キャピタルゲイン(売却益)よりもインカムゲイン(配当金など)による利益を狙う投資は、一般的に「高配当株投資」と呼ばれる。しかし、個人投資家の配当太郎氏は、高配当であることより長期安定成長による連続増配の可能性を重視し、「配当株投資」あるいは「増配株投資」を推奨し実践している。投資初心者が「配当株投資」をはじめるにあたっての注意点や、ステップの踏み方についてアドバイスをお願いした。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
インデックス投資と増配株投資、どちらをはじめるべきか
——投資初心者が株式投資をはじめるにあたり、多くの場合、インデックスファンドへの積立投資が推奨されます。配当株投資に主軸を置く配当太郎さんは、初心者が最初にはじめる株式投資についてどのようにお考えでしょう?
配当太郎:わたし自身も、インデックス投資を否定するつもりはまったくありません。インデックスファンドへの積立投資というのは、株式投資への知識がなくても、手間をかけず高い確度で市場平均の実績を得ることができ、複利の力で資産形成を実現できる優れた現代の発明品だと考えているからです。
一方、インデックス投資では20年後、30年後のキャピタルゲイン(売却益)を目的とするため、その過程においては、お金を支出するばかりになります。分配金を受け取れるインデックスファンドもなかには存在しますが、「S&P500」や「オルカン」といった多くの人が投資するインデックスファンドは、支出のみの傾向にあるというわけです。
その点、インカムゲインを目的とする配当株投資はキャッシュフローを高められる点がメリットです。一般的な配当利回りを3%とすれば、投資元本1,000万円で年間約30万円、3,000万円で年間100万円近い配当金が得られ、労働収入とは別に収入の柱になってくれる点が魅力です。
——リスクとリターンの観点で意識するべき点は?
配当太郎:過去の確かな成長実績を誇るインデックスファンドへの投資に比べ、個別株による配当株投資は投資家の選択次第ですから、いうまでもなくリスクもリターンも不安定です。ですから、小型株よりは日本を代表する大型株を中心に、「最低でも10年から20年くらいは、なにがあっても安心できる企業」を選ぶ必要が出てきます。
そのうえで、安定的な成長も期待できる銘柄を選ぶことで、インカムゲインでは配当金の増配、キャピタルゲインでも株価の上昇による含み益が期待でき、トータルで高いリターンを得られるチャンスが生まれます。
また、そうした銘柄さえしっかり選ぶことができれば、インデックス投資と同様に配当株投資も投資元本を高めることに専念し、株式そのものは「ほったらかし」で構わないのです。逆をいえば、「ほったらかしにしても安心できる」くらい稼ぐ力があり、長期安定的な銘柄を選ぶことがポイントといえるでしょう。
配当株投資の3つのステップ
——配当太郎さんは、投資初心者に向けて「配当株投資における3つのステップ」を提示されています。解説をお願いします。
配当太郎:この3ステップでは、最終目標を「年間配当100万円」としていて、そこに向けた中間ステップの目安を示しています。特段なにもせずに毎年100万円が入ってくるなんて、夢のような状況ですよね?
しかし、そのためにはかなり大きな投資元本が必要ですし、時間だってかかります。正直、最初のうちは配当額も小さく、漠然とはじめていてはモチベーションも上がらないでしょう。ですから、小さな目標を設定してひとつずつクリアすることで、モチベーションを維持していく試みです。
まず、ステップ①は「100万円で株を買ってみる」です。キャピタルゲインを狙う投資であれば、株価が1カ月で10%の値上がりをすれば、10万円の投資に対して1万円の利益を得ることができます。しかし、配当株投資の場合、10万円、20万円の投資元本では年間で数千円の配当金にしかならず、そのメリットを実感することは難しいでしょう。
ですから、配当株投資では最初の目標を「100万円の投資による年2万円から3万円の配当収益」に設定するのがいいと考えます。すでに100万円以上の余剰資金を持っているのなら、それを投じてみましょう。投資資金が少ないのであれば、コツコツ積み上げていくしかありません。そこまでは、あまりメリット・デメリットを考えず、投資額を積み上げていくことに専念するのがいいと思います。
——大型株では1株3,000円以上することも多く、100株単位では高額な資金が必要ですよね。1株単位から買える単元未満株を活用していく戦略がいいでしょうか?
配当太郎:単元未満株の活用はいいと思いますが、注意点は「安易に銘柄を増やし過ぎないこと」です。1株単位なら高額の大型株でも数千円で買うことができますが、それゆえにいろいろな銘柄を買ってみたくなってしまい、20銘柄、30銘柄と種類を増やしてしまう傾向があるのです。多くの種類の銘柄を持つことは高揚感がありますし、「いろいろ買ってみて、優れたものを残そう」とも考えるかもしれません。
しかし、こう考えてみてください。家庭菜園をはじめる際、20種、30種もの作物を一気に育てませんよね?まずは、育てやすそうな種苗を2種類から3種買ってきてはじめると思います。そうして、「このくらいの風でも倒れてしまうのか」とか「結構、病気になりやすいんだな」と、作物ごとの特性を体験して育て方を学んでいくはずです。
株式投資も同様です。20銘柄も30銘柄も持ってしまうと、管理も学習もできなくなってしまいますし、保有銘柄の株価が下落したときも原因を把握できなくなってしまいます。将来的に回復が見込まれる一時的な下落なのか、本質的な企業価値に対する市場の評価なのかを見極めないと、いつまで経っても株価は伸びず、配当収益も生み出さない銘柄を抱えることになりかねません。
投資初心者にとって大事なことは、保有銘柄を通じて市場環境と業績、株価の関係を学んでいくことにあります。そして、企業が様々な市場環境の変化に対してどのような経営を行って企業価値を高めていくのかをしっかりと見守り、理解度を高めていくことが大切です。また、株主還元に対する方針の変化なども見ていく必要がありますね。
そのためには、わたしは最初の100万円で持つべき株は、100株単位で2銘柄から3銘柄が適切だと考えています。
——しかし、20銘柄、30銘柄と買い集めることは分散投資であり、様々な市況変化に対するリスクヘッジになるという考え方もあります。
配当太郎:なにを優先するかだと思います。リスクヘッジのための分散投資をしたいのなら、個別銘柄株ではなく高配当ETFなどのファンドを買ったほうが賢明でしょう。しかし、自分の目で成長し、増配し続ける銘柄を選んでお付き合いをしていくのですから、個々の銘柄に対する解像度を高めていくことが大事ですよね。
10年以上の時間をかけて配当収入を育てていく
——ステップ②では「年12万円、1カ月あたり1万円の配当金」を目標としています。このステップが意味することについて解説をお願いします。
配当太郎:ステップ①から粛々と持ち株数を増やしていくのですが、次の目標はステップ②「年12万円、1カ月あたり1万円の配当金」くらいがひとつの目処になると考えます。月1万円の配当収入を継続的に得られることで、「今月も1万円を自分の好きなように使っていいんだ」という心の余裕を感じることができるでしょう。贅沢な食事をするのでもいいですし、好きなものを買うのでも構いませんが、配当金のありがたみを実感できる金額だと思うのです。
ただし、「1カ月あたり1万円の配当金」というと、ふだんから有名投資家のYouTubeや本に触れている人や、配当収入でFIREを目指したいと考える人からすれば、スケールが小さく思えるかもしれません。
とはいうものの、それは投資メディアの情報に慣れ過ぎていて、感覚が麻痺している側面があると思います。配当利回りを3%で考えた場合、月1万円の配当金を得るには約400万円の投資元本が必要になりますが、一般的に考えたら「株式を400万円も保有している」というのは本来すごいことですよね?
国税庁が公表する最新の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本の平均年収は過去最高の478万円とされますが、他の統計では中央値は400万円を切るというデータもあります。年収分の余剰資産をつくるというのは、決して簡単なことではありません。わたしは、極端な投資の成功や積極的な副業による入金などがなければ、ステップ②の資産400万円に無理なく到達するためには、10年近い時間が必要だと見積もっているほどです。
様々な株式投資メディアでは、短期間で1,000万円、2,000万円を形成する成功体験が多く語られますが、それは一般的なことではありませんし、それだけのリスクも伴います。大事なことは、時間がかかってもいいので無理なく粛々と投資を続けていくことにあるのです。
——しかし、10年を見据えて取り組むというのは、なかなか気が長い話ですね……。ステップ②で10年かかるなら、配当収入が10倍になるステップ③の達成には、どれほどの時間がかかるのでしょう?
配当太郎:「時間がかかる」とネガティブに捉えるのではなく、「時間の力を味方にしている」と考えたほうがいいと思いませんか?インデックス投資と同様に、配当株投資も時間の力が利益を大きくしてくれます。
近年では、国内銘柄でも株主還元の意識が高まっており、前年同期比で配当を20%、30%と増やす銘柄は多くなっています。ですから、想像してみてください。
いま、あなたは10万円の配当金が得られる状態だとします。保有銘柄が20%の増配をした場合、配当金は12万円に増えます。その増配が4年も続けば、放っておいても配当金は20万円を超えて2倍になります。さらに、6年で3倍、8年で4倍、9年で5倍、10年で6倍と、増配による配当金の伸びは加速度的に高くなっていくのです。
そこまでうまく連続増配してくれるとは限りませんが、その10年のあいだに、労働収入を入金し、さらに配当金も再投資して投資元本を増やしていけば、それ以上に配当収入は増えていく可能性はあります。また、増配する銘柄は株価も伸びているはずです。
ですから、ステップ③の「年間配当100万円」は配当利回り3%の場合、投資元本で3,000万円程度が必要になり、ステップ②の投資元本300万円からは距離があるように感じますが、着実に増配する銘柄を選んで投資を行えば、時間の力が到達に導いてくれるのです。加速度的に投資元本と配当金は増加しますから、ステップ②への到達よりも、ステップ③への到達のほうが思ったより早いかもしれません。
——「配当金100万円」は最終ゴールではなく、むしろ本格的にFIREなどを見据えることができる「はじまり」の金額になるのですね。
配当太郎:そうですね。配当金200万円もすぐに到達してしまうでしょうし、自分の年収相当の配当金を得ることもそう遠くないはずです。ただし、この段階に至って注意してほしいことは「浮き足立たないこと」です。
高額な配当収入を得て、高額な投資元本を持つことは、メンタルに与える影響も大きくなります。お金の使い方が狂ってしまったり、暴落などで「失うこと」を極度に恐れてメンタルヘルスを損なったりするようでは、以降の投資生活に支障をきたしてしまいかねません。
高い配当収入も、盤石な投資元本も、わたしは人生の安心と生活の安定のためにあると考えています。今後、インフレで物価上昇が続いていく経済環境のなかで、労働収入だけに頼らずに生きていくための大切な収入源です。それが、人生を不安にさせる材料になっては本末転倒でしょう。
その点では、ステップ①〜ステップ③までの10年かそれ以上の時間は、修行でもあると思います。株式投資に慣れ、市場動向に一喜一憂しない、お金の増減に左右されないメンタルをじっくり育てておくことが大切なのです。
配当太郎(はいとうたろう)
30代の個人投資家。学生時代に株式投資をはじめ、リーマン・ショックを経て配当株投資(増配株投資)に目覚める。大型株を中心に投資し、保有銘柄の9割は配当金が年々増える「増配銘柄」が占める。株式投資に関する情報を発信するX(旧Twitter)のフォロワーは23万人超(2025年10月現在)。著書に『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
