資産1,000万円までの「土台づくり」戦略。大型株から中小型株へシフトする、配当太郎流ロードマップ

個人投資家の配当太郎氏は、保有する銘柄の約9割が増配株であり、年間配当額を着々と増やしてきた。その投資手法は、いわゆる、配当利回りが高い銘柄を狙う「高配当株投資」と異なる、将来的な増配を期待する「配当株投資」だ。増配銘柄を見つけ出すポイントはどこにあるのだろうか。大型株から中小型株までを見通す視点を、わかりやすく解説してもらった。
配当株投資は、まず大型株から
——配当株投資をはじめたい個人投資家に向けて、銘柄選びのアドバイスをお願いします。
配当太郎:銘柄探しには、ふたつの考え方があります。まずひとつは、世間的にも「配当株の定番」といわれるような、投資家の信頼が高い大型株です。EPS(1株当たり利益)を伸ばし、新規での参入障壁が高く、かつ増配実績もある業界トップを走るような企業ですね。
言い方を変えれば、「稼ぐ力」+「安定感」+「実績」のある企業です。わたしは具体的な保有銘柄を公開していないのですが、メインで保有しているのは10銘柄に満たない大型株で、永久保有を前提に、買い増しによって資産を積み上げています。
もうひとつは、稼ぐ力のある中小型株です。ある程度の分析が必要になるため株式投資ビギナーの人にはおすすめし難いのですが、業績もよく、しっかりと株主還元する企業を「会社四季報」などをくまなく見て探しています。早い段階で投資することで増配の恩恵を受けることができ、高い配当利回りに成長する可能性を秘めています。
——これから取り組む場合は、「稼ぐ力」+「安定感」+「実績」のある大型株からはじめるのがいいですか?
配当太郎:知識や経験を身につけていない人が、「会社四季報」や様々な株式情報サイトなどで財務情報や事業について調べることは、決して無駄ではありません。しかし、そこから明確な投資基準を見出すことは難しいのではないでしょうか。
「学ぶ」という言葉は「真似る」が語源といわれるように、まずは多くの投資家が「配当株投資の定番」というような大型株から2銘柄、3銘柄を選んで投資をし、その銘柄の事業や業績、値動きを学んでいくのがいいでしょう。そのことを思えば、自分が興味のある業界がいいですよね。
例えば、わたしは自動車が好きなので、自動車の性能やドライバーに好まれる魅力について高い解像度をもって理解することができます。ですから、例えばトヨタやホンダといった業界トップ銘柄に投資した場合、当期の取り組みと業績の関係性や事業投資による将来性、競合企業に対するストロングポイントなども、関心のない業界に比べて確実に理解度が高まります。
長期安定的な配当収益を得る大型株の考え方
——「稼ぐ力」+「安定感」+「実績」のある大型株の選び方について、配当太郎さんは著書『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)で以下の4つの着眼点を挙げています。解説をお願いします。
配当太郎:あらゆる業界で、デジタルサービスの発展や規制緩和によって新規参入障壁は崩されつつあります。また、自動車業界を例に挙げれば、内燃機関であるエンジンは独自技術の塊であり、その部品を高い精度で生み出すサプライチェーンが長年にわたり高い新規参入障壁となってきました。しかし、EV化によってモーター駆動に置き換わったことで、新規参入の余地が生まれたケースもあります。
それでも、高いシェアを誇る業界のリーディングカンパニーは、他社の追随を許さない高度化・差別化されたビジネスを展開し、そう簡単に新規参入企業が追い越せない地盤を築いているものです。
通信キャリアはその好例でしょう。通信網を持つNTT、ソフトバンク、KDDIの3社による寡占状態にあるわけです。近年、格安SIMへの参入は増加していますが、その3社の通信網を借りているに過ぎません。2019年に楽天モバイルが新規参入し、KDDIの通信網を併用しつつ自社通信網を整備していますが、黒字化を見通すまでの道のりは多難であったでしょう。
また、通信キャリア業界は利益率の高い「ストック型ビジネス」の典型でもあります。ストック型ビジネスとは、長期利用を前提としたサービスを提供し、継続的に収益を得られるビジネスモデルのことです。スマホやインターネット通信は生活に欠かせないインフラであり需要はなくなりませんから、新規参入障壁が高い限りリーディングカンパニーの収益力は安泰だと見ることができます。
「稼ぐ力」+「安定感」を持つ通信キャリア業界で、さらに株主還元に意欲的で配当や増配の「実績」も兼ね備えている企業であれば、まさに配当株投資向きといえます。
——『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』では、同様に参入障壁が高くストック型ビジネスを展開する例として、通信キャリアの他にも、銀行、損害保険を挙げています。
配当太郎:業界をリードする企業、つまりメガバンク、メガ損保は長期安定的に稼ぐ力を持っており、株主還元に対しても積極的です。同著では、具体的な企業名も掲載していますので参考にしてほしいと思います。
また、ストック型ビジネスとはいえませんが、総合商社もピックアップしています。特定分野に特化した「専門商社」とは異なり、多様な領域にまたがる「総合商社」は日本特有の業態とされます。世界中で様々なビジネスを生み出し、地下資源の権益ビジネスを展開するなど、グローバルで「稼ぐ力」に優れています。
なお、世界的に有名な投資家のウォーレン・バフェットも、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の5大商社を保有しています。さらに、2024年には、「純利益の3分の1を配当に回し、内部留保の大半を事業投資や自社株買いに回している」として5大商社を絶賛しただけでなく、2025年には同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイの株主総会において「(5大商社の株を)今後50年は売却を考えないだろう」と発言しています。
ここまでに触れた業種に限らず、先に挙げた➀~➃の4つのポイントがあてはまる企業は存在します。大まかな考え方として、「なければ困るサービスを提供している業種」を想像してください。自動車や家電など、需要の尽きないインフラを提供している業種が浮かぶのではないでしょうか。また、そのなかで「子どもが就職したら素直に喜べる企業」をイメージしてみましょう。おそらくそれは、誰もが知る業界のリーディングカンパニーであり、企業イメージやブランドも高いはずです。そのようなことから、企業リサーチをしてみるといいかもしれません。
中小型株への投資では「ストーリー」を見出す
——中小型株の配当株投資についての考え方をお聞かせください。「高配当株投資」であれば、配当利回りの高さでスクリーニングをかけて探すことが一般的ですが、違いはありますか?
配当太郎:現時点における配当利回りを重視する「高配当株投資」であればそうなるでしょう。しかしわたしは、将来的な増配を期待する「配当株投資」を行っていますから、現時点の配当利回りは低めでもよく、「2%あればいい」と思っています。これを「3.5%以上」「4%以上」としてしまうと、将来的に増配するお宝銘柄を見逃してしまうと考えるからです。それはもちろん、「営業利益率」や「EPS」など、あらゆる財務指標にもいえることです。
だからこそ、泥臭く「会社四季報」などを使って財務指標を広く見渡し、可能性を感じた企業のサイトから財務諸表や決算発表を見るだけでなく、いろいろなIR資料にも目を通しています。そうして、その企業におけるこれからの「ストーリー」を探しているのです。
——「ストーリー」とはどのような意味ですか?
配当太郎:例えばですが、IPO以来、急速に伸びてきた成長株で考えてみます。革新的なサービスで注目を浴び利益を事業投資に回して拡大を続けている段階では、配当利回りは0、または低い傾向にあるはずです。その成長性を市場が折り込むため株価は上がり、PER(株価収益率)は年々高まっていくでしょう。しかし、そうした銘柄のPERが鈍化してきているとしたらどうでしょうか?
業績自体は伸びるものの、サービスの普及によって市場が飽和し始め、成長性が投資家の期待値に達しないものになっている可能性があります。もしかしたら、ニッチな領域ながら高いシェアを確保し続け、寡占市場のもと安定成長のフェーズに移行していくのではないか?そうしたストーリーの途上にあるのなら、その企業は今後、キャピタルゲインよりインカムゲインで株式投資を募るため、株主還元に注力していくことが想像できるわけです。
様々なIR資料から、そうした企業のストーリーを読み取り早い段階で投資することができれば、増配によって高い配当利回りの銘柄へと成長してくれます。
——経験を要する簡単ではない投資判断かもしれませんが、継続していくことでそうした目は養われていくように感じました。
配当太郎:そうですね。高い実績を出そうとして、あせる必要はありません。じっくり学んでいくことが大事だと思います。
2024年の東証によるPBR改善勧告以来、これまで株主還元に積極的でなかった多くの銘柄が還元政策を打ち出し、すでに多くの投資家に買われて株価は上がっていきました。もちろん、これから株主還元にシフトする銘柄もあるでしょうが、その兆候を「営業利益率が●%だから」「PERが●倍だから」というように、財務指標を明快な基準に照らして判断できるほど簡単ではないでしょう。多角的な観点で、ストーリーを予測することが欠かせないと感じています。
話を総括しますが、株式投資の経験が浅い人であれば、まずは大型株による安定的な配当収益を狙うのがいいと思います。資産1,000万円までは安定型の大型株で土台をつくっていくイメージで、それから中小型株の配当株投資に少額でチャレンジするくらいが理想ではないでしょうか。経験を積み重ね、自分なりの勉強を継続し、しっかり資産を築けることを願っています。
配当太郎(はいとうたろう)
30代の個人投資家。学生時代に株式投資をはじめ、リーマン・ショックを経て配当株投資(増配株投資)に目覚める。大型株を中心に投資し、保有銘柄の9割は配当金が年々増える「増配銘柄」が占める。株式投資に関する情報を発信するX(旧Twitter)のフォロワーは23万人超(2025年10月現在)。著書に『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
