投資をやるなら知っておきたい、「成功する長期投資家」に共通する33の特徴
「新NISA」をきっかけに株式投資をはじめた人や、ある程度の投資経験を積んだが、いまいち成果が出ていない人は、投資に対する向き合い方を考えてみてはどうだろうか。株式投資アドバイザーであり、「つばめ投資顧問」代表を務める栫井駿介氏に、自身で考案した「成功する投資家に共通する33の特徴」をもとに、成功する投資家のマインドや習慣、重視すべきスキルについて解説をお願いした。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟 写真/藤巻祐介
「成功する投資家」には、共通するマインドやスキルがある
——栫井さんは「つばめ投資顧問」のYouTubeチャンネル『つばめ投資顧問の長期投資大学』で、「成功する投資家に共通する33の特徴」という動画を公開されていましたよね。投資家のマインドを分析したとても興味深いコンテンツだと思うのですが、投資家なら誰もが気になる「33の特徴」をどうリストアップしたのでしょう。
栫井駿介:わたし自身、学生時代から書物を中心に投資の偉人から学んできましたし、現代の成功している投資家からも学んできました。さらに、当社の顧問には投資家として成功を収めた方々を迎え、身近に深く会話できる環境にいます。
そうしたなかで、ふと「成功している人たちのメンタリティや行動習慣には共通点がある」と思い立ちまとめてみたのが、「33の特徴」です。あくまで主観的なピックアップであり、エビデンスのあるものではありません。しかし、仕事上でおつきあいのある投資家や、YouTubeで交流のある投資家、あるいはウォーレン・バフェットやピーター・リンチといった偉人たちの考え方と照らしても、芯を捉えているのではないかと自負しています。
——以下は「成功する投資家に共通する33の特徴」のリストですが、栫井さんご自身もこの特徴にあてはまることが多いですか?
栫井駿介:わたしは、あまりあてはまっていない項目が多いですね……(苦笑)。もちろん、実績を積み重ねてきた投資家たちも、すべてがあてはまっているわけではありません。
例えば、1番の「倹約家である」は、ウォーレン・バフェットに代表されるように優れた投資家に多い特徴ですが、わたし自身は倹約家といえません。しかし、生活防衛資金を除く資産のほとんどを投資にあてることで、結果的に浪費ができないような状況をつくり出しています。また、3番の「楽天家である」もあてはまりませんが、「楽天的でありたい」とは常日頃から思っています。
そのように、「自分にあてはまらない特徴」を見つけて、自分のなかにも課題を感じるのであれば、意識変容の機会としてみてはいかがでしょうか。
優れた投資家は「楽天的に」将来を見通し、「我が道」を信じる
——上記の33項目は、あらためて見るとかなりのボリュームがあります。このなかで、栫井さんが「もっとも重要」だと考える投資家のマインドや素養についてお聞かせください。
栫井駿介:3番「楽天家である」、5番「損切りができる」、6番「我が道をゆく」、9番「何十年も継続する」、14番「決算書が読める」あたりが重要な項目ではないでしょうか。
まず、3番「楽天家である」については、いうまでもなく投資にはリスクがつきものです。そのリスクをキャッチできていないのは問題外ですが、わかったうえで歩を踏み出さなければ投資などできません。
投資を学べば学ぶほどリスクに対する理解度は高まりますし、それこそ長期投資においては10年、20年という先行き不透明の未来を信じるのですから、楽天的なメンタルは必要ではないでしょうか。だからといって大博打を許容するわけではなく、リサーチを徹底的に行い、根拠ある投資判断ができるかが重要です。
——6番「わが道を行く」にも通ずるメンタリティですね。
栫井駿介:そうかもしれません。投資をしていると、「雑音」がたくさん聞こえてきます。例えば、いまは株価が低迷して市場の評価は低くても、「この企業には価値がある」と信じ、根拠を持って投資をしたとします。でも、SNSなどで「あの企業は終わっている」といわれたり、ニュースで競合企業のほうがフィーチャーされていたりと、心を惑わされる情報はいくらでも出てきます。
それで不安になって手放してしまうと、結局は大多数の「投資しなかった」投資家と同じ判断になってしまいます。株式投資では、大多数と同じことをしていたら大きな成果は残せません。
また、それなりの金額を投じているわけですから、雑音に振り回されているようでは、メンタルも不安定になります。「みんなと違ってもいい。自分の考えを信じる」という決意や心意気を持って、投資にあたることが大切なのだと考えます。
それは、9番の「何十年も継続する」にも関連するでしょう。短期的に大勝負をかける投資スタンスもありますが、多くの投資家は長期投資で成功を掴んでいます。「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェットは現在93歳ですが、現在の資産の大部分は60歳を超えてから積み上げたものだといわれています。60歳からと聞くと年齢は若くありませんが、それでも30年以上積み上げてきたからこそ、大富豪になれたのです。いうまでもなく、味方にすべきは複利です。複利の特性上、保有期間が長ければ長いほど、加速度的に利益が増えていきます。
関連して、何十年も投資を継続しているといい瞬間だけでなく、悪い瞬間も訪れます。そのことを前提に考えると、ストレス耐性も重要なポイントではないでしょうか。
「模倣」からはじまり、自分の理論を確立する
——「我が道を行く」ことの大切さは理解できるのですが、投資ビギナーは模倣から学んでいくことも大事ですよね? その点についてはいかがでしょうか。
栫井駿介:「つばめ投資顧問」も、まさに投資ビギナーの方には、わたしたちの投資から学んでいただくことをおすすめしています。大事なことは、他の投資家に追随することではなく、その背景にある考え方をトレースしていくことにあります。自分で投資をしない安全圏から座学的に学ぶのではなく、実際に自分でお金を投じて模倣してみることで、気づくことはたくさんあります。
楽天的になるにも、我が道をいくにも、投資の根拠に自信を持てるだけの知識と経験は欠かせません。ケーススタディで経験を積みながら、14番の「決算書が読める」ように勉強を重ね、やがて自分の考えで投資のトライ&エラーを積み重ねて洗練させていくことだと思います。
——投資ビギナーが成長するうえで、5番の「損切りができる」ことが「投資ビギナーを脱するポイント」にもなりそうです。
栫井駿介:人間には、損失を避けたいと思うあまり、合理的ではない判断をしてしまう「プロスペクト理論」という心理がありますが、その心理を超えて合理的な判断をする経験が大切です。わたしの経験を振り返っても、はじめて損切りができたことで、それ以降も自分の考える合理性に基づいた判断ができるようになりました。
——ちなみに、栫井さんは損切りのルールや基準などは設けていますか?
栫井駿介:「買値より何%下がったら売る」というルールを設ける投資家は多いですよね。わたしの場合はそうではなく、「成長する」と思っていたのに思惑が外れた時点で、含み損に関係なく売却を検討します。
「売却すべきかどうか」に絶対的な基準を設け難いので、保有銘柄を20銘柄に限定して、買いたい新しい銘柄を見つけたときに、20銘柄のなかからパッとしないものを入れ替えるようにしています。それこそ、JリーグのJ1、J2のチーム入れ替えのようなイメージですね。
その意味では、投資ビギナーは一極集中の買い方はせず、分散投資をすることが大切かもしれません。複数の銘柄に均等に投資すれば、成長性が低い銘柄を損切りしてもダメージは少なく、安心して売却することができます。
先にも述べたように、長期投資は長く保有し続けることでリスクヘッジすることができるほか、複利効果による資産増大が見込まれます。インデックス投資であれば、ひたすら積み立てるだけですが、個別銘柄株では勉強を重ね、自分のポートフォリオを改善し続ける努力が必要でしょう。
その過程で手痛い失敗をすることもありますが、そこで感情的になって一気に取り返そうとするのではなく、長期的な視点に立ち、失敗を糧として最後に笑えるよう成長していきたいものですね。
栫井駿介(かこい しゅんすけ)
1986年5月31日生まれ、鹿児島県出身。つばめ投資顧問代表、投資系YouTuber。東京大学経済学部卒業、豪BOND大学MBA修了。大手証券会社勤務を経て、2016年、つばめ投資顧問設立。現在は700名超の個人投資家を相手に、堅実かつ実践的な長期投資のアドバイスを行っている。YouTuberとしても活動し、登録者は13.1万人(2024年6月時点)。ひとりでも多くの人に長期投資のよさを広め、実践してもらうことを夢見て発信を続けている。著書に『1社15分で本質をつかむ プロの企業分析』(クロスメディア・パブリッシング)、共著に『株式VS不動産 投資するならどっち?』(筑摩書房)などがある。
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