もはやカジノだけではない!? 大型統合リゾートで経済構造転換へ
中華人民共和国・中華人民共和国マカオ特別行政区
マカオは1999年、ポルトガルの海外県から中国の特別行政区へと生まれ変わった。元々ポルトガルの海外領土であったことから、1999年以前にマカオで生まれた住民は、原則すべてポルトガル国籍を持ち、公用語はポルトガル語と中国語(広東語)である。
隣の香港とはフェリーで1時間、ヘリコプターでは15分で移動できるほどの近さだが、経済的な発展は香港と比べると大きな差がある。マカオ経済は、政府歳入の70%を占めると推定されるカジノ産業に長らく依存していたからだ。
今もカジノが主要産業であることには変わりないが、世界遺産のマカオ歴史地区や、F1グランプリなど国際モーターレースの開催地であることを生かし、最近、観光産業開拓に力を入れ始めた。
人口約53万人強のマカオに、年間延べ約3000万人もの観光客が訪れている(2014年度)。こうした観光客をギャンブル以外へ誘導するために、カジノを経営する企業自体が、カジノに大型ショッピングモールを併設したリゾートホテルを建設し、小売業への参入を果たしている。
例えば、サンズ・チャイナは2007年、コタイ地区に大型カジノ・リゾート「ヴェネチアン・マカオ」開業に併せ、従来マカオに存在しなかったブランドを世界中から集めた「ショップス・グランドカナル」を同時に開業した。売り場総面積約9・3万平方メートルという広大なショッピング施設の他、ホテル、レストラン、アミューズメントパークも併設。ホテル前に運河を造りゴンドラを浮かべ、あたかもベネチアにいるかのような空間を作ることで、観光客誘致に成功した。昨年のサンズの小売り売上は7000億円を上回り、これはマカオ全体の小売り売上の3分の1を占めることになった。
引き続き、2009年にメルコクラウンが同じくコタイ地区に大型カジノ・リゾート「シティ・オブ・ドリームス」を開業。その後、更に他企業も参入、4つのショッピングモールがひしめく人気リゾートエリアとなったコタイ地区は、マカオフェリーターミナルから無料シャトルバスが運行され、すべてのショッピングモールが徒歩圏内にあり、それぞれが屋内施設なので雨の日も快適に過ごせると、カジノだけでない注目の観光スポットとなった。カジノ業界はその娯楽性から、将来も需要を見込まれるが、世界的なマネーロンダリング規制強化を踏まえ、マカオ経済が多角化へと舵を切ったのは興味深い。
取材・文/中田あえみ(マカオ) 編集協力/堀内章子・宮田園子