日本食レストランで街が埋め尽くされる? バンコクで日本食レストランが増え続ける理由
──タイランド・バンコク
バンコクの未来の中心地といわれるラマ9世通り。そこにあるショッピングモール「セントラル・プラザ・グランド・ラマ9世」の6階、ダイニングゾーンに足を運んでみれば、タイ料理レストランはほんの1~2店舗、それ以外はラーメン店、日本風スパゲティー店、寿司店とほぼ全て日本食レストランである事に驚くだろう。
1999年に日本食産業会社である「オイシ・グループ」(※日系企業ではない)が、タイ人向けの日本食店をバンコクにオープンしたのを皮切りに、次々と開店する日本食レストラン。現在、バンコク市内にはタイ人が経営する大手日本食チェーンから日本の外食チェーン、リーズナブルな価格の日本食屋台まで合わせると、その数1200店舗以上という。
このタイ国内での爆発的な日本食ブームは、ここ数年のタイの健康ブームに後押しされている。日本食は、新鮮な食材を使用し、カロリーも控えめというイメージが強く、「日本食=健康食」という認識から、多くの人に好んで食されている。また、日本食の盛り付けの美しさも、「見た目が良ければ金額はいとわない」というタイ人の国民性ともマッチしている。
また、タイ人の味覚の変化も大きな理由といえるだろう。多くのタイの若者は辛いタイ料理より、マイルドな味の日本食を好むようになった。昔のように親が子供に辛い物を食べさせないからという説もあるが、実際のところ、1980年代後半から都心を中心に両親の共働きにより核家族化が増加。それと同時に、それまでは家庭で調理していた食事が、外食や買食(中食)がメインになったためと言われている。家庭で作る食事ならば、各々の家庭の辛さを楽しんでこられたが、外食となると一般的な辛さや味付けとなるので、昔に比べ強烈に辛い物を食べる事が少なくなったのだ。
2013年12月に日本貿易振興機構(JETRO)がバンコクで実地した「日本食品に対する海外消費者アンケート調査」で、好きな外国料理1位は2位の中華料理(12・8%)を大きく引き離し、日本食(66・6%)であった。2013年からは短期ではあるが、日本へのビザなし渡航も可能となり、日本を訪れる富裕層や中間所得者層にはリピーターも多い。本物の味に親しんだタイ人が増加したことからも、和食に限らず、スイーツなどの幅広い種類の日本食ブランドが続々と出店するであろうと予測される。今後もタイの日本食ブームから目が離せない。
文・写真/徳武 加奈子 編集協力/堀内 章子