走行距離に応じた新納税制度導入 交通渋滞を解決するための一策
──ベルギー・ブリュッセル
ブリュッセルやアントワープなどの大都市に、自動車で毎日通勤するサラリーマンたちの悩みのタネは、朝夕の交通渋滞である。両市内を走行する自動車数はざっと約40万台といわれるが、渋滞に巻き込まれることは時間の無駄のみならず、遅刻、交通事故誘発にも通じるとして懸念されてきた。
この問題を解決するため、政府及び運輸省は長年、策を講じてきた。その中で、もっとも効果的であると想定されたのは、隣国オランダで実証済みの『走行税』を課すことであった。これは各自動車にGPSを搭載することを義務付け、走行距離によって毎月の課税額を支払わせるというもの。納税義務をさけるため、人びとは自動車ではない別の通勤手段を選び、それによって渋滞を緩和させようというわけだ。
ブリュッセルを含む一部都市では2014年2月から、“pay-as‐you-drive”と称するキャンペーンと共に、このプロジェクトが進められている。たとえば、定期的な渋滞時である午前7時~9時まで及び午後3時半頃~午後6時半の時間帯に高速道路を利用した場合、基本1キロ毎に5ユーロセント(約6円)、そしてもっとも混雑する都市内であれば、最高額で9ユーロセント(約14円)を納税することになる。オランダでの前例もあり国内でも良策と謳われていたこの走行税案だが、施行を直前に控え実用化は妥当なのか否か、各方面から問われていることも事実だ。
というのは、渋滞時の走行とそれ以外の時間帯の走行、そして、都市内を走行する場合と郊外を走行する場合とでは、税の算出レートに大きな差が生じることが、問題視されているのである。こうした問題が解決され、プロジェクトが施行されれば、これまでの道路税に代わる新納税制度が導入されることになる。ちなみに、2トン以上のトラックに対してはこの走行税導入がすでに決定しているが、こうした大型車両は1キロ毎に40ユーロセント(約48円)の納税義務が生じるということで、運送会社や輸入企業から「高額すぎる」と不満の声も上がっている。政府と運輸省による苦肉の策という穿った見方さえ出されているこの制度だが、渋滞対策として有効となればゲントなど他都市でも走行税が導入される見通しだという。
導入した暁に果たして自動車数が目に見えて減少するのか、また、それによって渋滞が解決するのか否か、結論が出されるのはまだ先のようである。
文・写真/稲葉 霞織 編集協力/堀内 章子