大気汚染対策に効果はあるか!? 蘇州の公共自転車レンタル
──中国・蘇州市
大気汚染問題が深刻な中国で、公共自転車のレンタルシステムを充実させ、二酸化炭素排出の軽減に取り組んでいる街がある。東洋のベニスとも呼ばれる古都、蘇州である。
蘇州は上海から高速鉄道で20分の水郷の街。風情ある旧市街には世界遺産の古典庭園も数多く、中国国内でも満足度の高い観光地として知られている。その一方で市内には、工業園区をはじめとする開発地区があり、工業団地としての一面も持つ。世界各国の製造工場を積極的に誘致した蘇州は、市全体で600万だった人口が、この4年で1000万人を突破した。工場や道路だけでなく、大型マンションや高級住宅街の建設も続々と行われている。
蘇州の街を訪れる大勢の観光客に加え、開発地区を中心とした人口の増加と、建設工事による交通渋滞、それに伴う排気ガスを軽減しようと始まったのが、公共自転車のレンタルシステムである。蘇州市民は10人民元(約160円)の手数料、外国人居住者や観光客は保証金200人民元(約3200円)を加えて申し込むと、その場でICカードが発行される。このカードを自転車脇の支柱にかざすとロックが解除され、自転車の出し入れができる仕組み。カードを手に入れれば、中国語のわからない外国人でも簡単に利用できると好評だ。
貸出所は、駅周辺だけでなくオフィスビル、スーパー、市場や住宅地に設置され、その数は現在2000以上。実際に通勤や買い物、オフィスからの移動にと、日常的に使い勝手が良い。利用時間は一回につき60分まで。時間内に貸出所に立ち寄ればよく、その際、貸出時間はリセットされる。各貸出所には近隣貸出所の位置情報や、利用状況を確認できる機械があり、ホームページでも自転車の残り台数がリアルタイムで表示されるなど、サービス内容も充実している。
中国では、自転車専用車線を確保している道路が多いが、特に蘇州は車道や歩道が独立した形で整備されているのも魅力。しかし、自家用車の所有率が上がり、スクーターのような電動二輪車が猛スピードで疾走するのが今日の中国の姿。昔ながらの自転車の姿はほとんど見かけず、自転車大国だった頃の面影はもう無い。
便利になった人々の生活に、足こぎ自転車への大幅な回帰はもはや実現しがたい理想像なのか。この環境保護対策が、焼け石に水とならないよう、蘇州の人々にまずはその未来を託すしかない。
文・写真/いせもとゆかり 編集協力/堀内 章子