プロの知識で賢く資産を増やす!投資ビギナーのための「成長投資枠」戦略――高金利・株高時代に債券投資とどう向き合うか

NISAの「つみたて投資枠」を活用したインデックス投資は、資産形成の「キホンのキ」となるものとして知られる。ただ、それだけでは投資の本当の面白さは広がらない。とはいえ、NISAの「成長投資枠」を使い、国内外の個別株や株式以外のETFなど多様な投資の可能性を見出していくには、確かな知識が必要だ。本連載では、投資の幅を広げたい投資ビギナーに向け、各分野のプロが大切な知識や戦略を伝授する。
第3回テーマ
高金利・株高時代に債券投資とどう向き合うか
今回の先生
資産運用YouTuber「BANK ACADEMY」運営
小林 亮平
横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行し法人営業に携わる。同行退社後、ブログやSNSで株式投資による資産運用の入門知識を発信。現在は、チャンネル登録者数90万人(2026年5月時点)を誇るYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」を運営する。
なぜ債券価格は上がらないのか
比較的「安全な資産」として知られる債券ですが、近年は厳しい状況が続いています。きっかけのひとつになったのが、コロナショック後の世界的なインフレです。コロナ禍初期には景気悪化への懸念から大規模な金融緩和(利下げ)が行われ、米国長期国債などの価格は一時上昇しました。しかし、その後は世界的なインフレが進行。各国は物価上昇を抑えるため、急ピッチで利上げを進めることになったのです。
この利上げにより債券価格が下落した理由は単純です。例えば、年利1%の債券を持っていたとして、その後に年利5%の債券が登場したら、多くの人は後者を選びます。すると、以前の1%の債券は人気がなくなり、価格が下がっていきます。
要するに、金利と債券価格はシーソーのような関係にあるのです。金利が上がると債券価格は下がり、逆に金利が下がると債券価格は上がりやすくなります。
現在のアメリカは、中東情勢の緊迫化など不安材料を抱えながらも、景気そのものは比較的、底堅く推移しています。そのため、FRB(米連邦準備制度理事会)も利下げのペースに対して慎重です。トランプ大統領は利下げを求める発言を繰り返していますが、FRBはインフレ再燃への警戒感を強く抱いているようです。こうした状況が続く限り、債券価格も上昇しにくい構図が続きます。「そろそろ債券は買いどき」といわれながらも、期待されたほど反発しない状態が続いているのはこのためです。
ただ、だからといって債券が不要というわけではありません。債券の役割は、「大きく利益を狙う」ことよりも、「資産全体の値動きを抑える」ことにあります。NISAではオルカンやS&P500など、株式中心で運用している人も多いですが、それは相場が好調だからこそ成立している側面があります。仮に相場が大きく崩れたとき、株式だけだと資産全体の下落幅も大きくなります。債券を組み合わせておくことで、そのダメージをやわらげることができるのです。
近年はAI関連株などを中心に、米国株へ積極的に投資する流れが強まっています。ただ、相場が好調なときほど、「リスクを取り過ぎている」という感覚が薄れやすくなるのも事実。だからこそ、値動きの異なる資産を組み合わせながら運用する視点が、これまで以上に重要になっていると感じます。
GPIFも実践する分散投資の考え方
冒頭でも触れましたが、債券というと「値動きが小さい安全資産」というイメージを持つ人も多いでしょう。ただ、実際には種類によって特徴が大きく異なります。特に値動きに影響するのが、「期間」です。短期債は比較的値動きが穏やかですが、長期債は金利変動の影響を強く受けます。
例えば、20年、30年といった長期国債は、現在の金利が長期間固定される商品です。そのため、金利が上昇すると価格が大きく下がりやすく、逆に利下げ局面では大きく上昇しやすい特徴があります。先述の通り、コロナショックの際には、株式市場が大きく下落するなかで、米国長期国債の価格は上昇しました。
わたしの父も、コロナ前から米国長期国債を組み込んだポートフォリオを保有していました。米国株、米国長期国債、ゴールドを3分の1ずつ保有していたのですが、コロナショック時には株式の下落を長期国債がカバーしてくれました。株だけを保有していた場合よりも、トータルの下落幅をかなり抑えられたのです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も株式だけではなく、国内外の債券を組み合わせて運用しています。大きな資産を長期で守りながら増やすためには、値動きの異なる資産を分散して持つことが不可欠だからです。
もちろん、コロナ後は長期国債も厳しい状況が続いています。ただ、それでも、「株式が下がったときに別の資産が支えてくれる」という意味で、分散する価値は大きいでしょう。債券は派手に利益を狙う商品ではありませんが、資産全体を安定させるうえでは重要な存在であることは間違いありません。
NISAで債券をどう活用するか
では、NISAで債券を取り入れる場合、どのような商品を選べばいいのでしょうか。
初心者にとって使いやすいのは、やはりETFや投資信託になります。米国債ETFでは「TLT」や「AGG」などが有名で、比較的多くの投資家に好まれています。TLTは米国長期国債を中心に組み入れたETFで、金利変動の影響を比較的強く受けます。一方、AGGは短期から長期まで幅広い債券を組み合わせた総合型で、分散性の高さが特徴です。
他にも「EDV」など、さらに値動きの大きい長期債ETFに注目する人もいます。いまは債券価格が大きく下がっているため、「ここから利下げ局面になれば反発するのでは」という期待を持つ投資家も少なくありません。ただ、高金利環境が想定以上に長引いていることで、思うように上昇しない状態が続いているのが実情です。
とはいえ、債券ETFには価格変動だけではなく、「利回りを受け取れる」というメリットもあります。債券自体の価格が下がっていたとしても、一定の分配金が入ってくることで、長期的に見ると下落分をある程度カバーできるケースも往々にしてあります。そのため、特に50代や60代のように、「安定的に資産を守りながら運用したい」という人にとっては、十分に合理的な選択肢になると思います。
投資信託なら、「eMAXIS Slim」シリーズの先進国債券や、株式と債券をまとめて保有できるバランス型ファンドも選択肢になるでしょう。GPIFの運用方針にならったいわゆる4資産均等型のように、株式と債券を自動的に分散してくれる商品は、初心者にもわかりやすく取り入れやすいのではないでしょうか。
運用の基本は、値動きの異なる資産を組み合わせることです。20代、30代など若いうちは株式中心で積極的に増やし、50代、60代とリタイアが近づくにつれて債券の比率を高めて「守り」を固めるといった、ライフステージに応じた使いわけが有効です。
つみたて投資枠で運用の土台をしっかりつくったら、成長投資枠を上手に使い、自分に合った最適なバランスのポートフォリオを目指してほしいと思います。
※この記事は2026年7月25日発行のジャパニーズ インベスター130号に掲載されたものです。
