第110回『個人投資家のための会社説明会 in 東京』開催レポート

2026年5月27日、京王プラザホテル新宿にて個人投資家向け会社説明会が開催された。
登壇したのは、アルインコ株式会社、BRANU株式会社、株式会社TAKARA & COMPANYの3社である。各社の事業戦略を報告する。
アルインコ株式会社
大規模建設現場の安全課題を解決収益構造の多角化で成長へ
アルインコ株式会社 代表取締役社長 小林 宣夫 氏
最初に登壇したのは、アルインコ株式会社(証券コード5933/東証プライム)小林宣夫代表取締役社長だ。同社は1938年に自転車部品の製造を行う井上鉄工所として大阪で創業した老舗だ。社名のアルインコ(ALINCO)は、アルミの元素記号(AL)、創業家である井上家(IN)、そしてコーポレーション(CO)を組み合わせた造語である。かつてはテレビ通販を広く展開し、人気クイズ番組のメインスポンサーを務めた歴史も持つ。現在は建設用足場の製造・販売・レンタルを主軸に、住宅機器や無線機等の多角的な事業を国内外19社で運営している。
直近の2026年3月期実績は売上高626億3200万円、2期連続で過去最高の売上高を更新している。国内の建設投資額は1992年の84兆円をピークに減少したが、2010年の42兆円を底に現在はインフラ更新需要や再開発により増加傾向にある。同社の強みは、建設現場の安全を支える新型足場「アルバトロス」などの製品群で高いシェアを持つ点にある。アルバトロスは従来のわく組足場に比べ、支柱材と横架材に分解できるため、輸送や保管の効率が極めて高い。半導体工場向けには、クリーンルームの清浄度を保つため塗装ではなくメッキ処理をした高所作業台を提供し、高い評価を得ている。特定小電力無線機の分野でもニッチトップの地位を確立している。
今後の見通しについて小林氏は、価格改定や2026年3月より営業本部や物流本部、DX推進室を新設し、事業部間の連携強化で、さらなる利益確保を図るとした。成長戦略としては、コア事業の進化に加え、人的資本やDXへの投資を強化する。中期経営計画2027の最終年度となる2027年3月期は、売上高652億円、経常利益32億円を掲げ、3期連続の過去最高更新を目指す方針だ。足元では中東情勢による資材価格高騰が見られるが、価格改定や為替予約の活用で柔軟に対応する。
株主還元については、連結配当性向目標40%に加え、累進配当を導入している。過去18年間で一度も減配がなく、2027年3月期は前期比1円増配の年間45円配当を予定している。さらに、110万株・総額10億円を上限とした自己株式取得を決定し、総還元性向は86.5%に達する。3月20日時点の株主を対象に、保有株数に応じて1000円から8000円分のVJAギフトカードを贈呈する株主優待制度も継続しており、安定した利益還元に努める姿勢を強調した。小林氏は、ニッチマーケットでトップ企業になる目標は不変であると力強く締めくくった。
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BRANU株式会社
中小建設業のDXを支援産業構造を塗り替える変革

BRANU株式会社 代表取締役 名富 達也 氏
次の登壇者はBRANU株式会社(証券コード460A/東証グロース)代表取締役の名富達也氏。テクノロジーで建設業界をアップデートするビジョンを語った。名富氏は1981年生まれ、2003年に大学を卒業後、IT企業での建設セクター担当を経て2009年に同社を創業した。同社は中小建設企業に特化した「CAREECON」などの建設DXプラットフォームを展開する。2025年10月期実績は売上高21億2200万円、営業利益3億3100万円となった。
建設業界は、働き方改革による残業規制や高齢化による労働力不足が深刻で、中小企業の92.6%がDX未着手という巨大な市場余白がある。同社の優位性は、オンラインでは接触が困難な経営者に直接足を運ぶ営業ノウハウと、集客から施工・経営管理まで一気通貫で解決するオールインワンの製品群にある。国内最大手建材商社の渡辺パイプとの提携により、全国48万社へリーチできる体制も整えている。渡辺パイプは売上高4456億円を超える巨大な販路を持つ。中小建設企業の設備投資額は9633億円に上り、将来的には建設DX市場は2兆円から5兆円規模になると予測している。
成長戦略の骨子として名富氏は、営業基盤の拡充、プロダクトの強化、新領域の展開を挙げた。特に生成AIをプロダクト開発全般に組み込む「AI駆動開発」への移行により、開発生産性を約2倍に向上させた。また、蓄積された6000社の顧客データを活用する「BRANU BRAINプロジェクト」を活用してプロダクトの自動化やAIエージェント化を推進し、社員の生産性を飛躍的に高める戦略である。AIエージェントが経営相談や見積作成を支援する未来像を描く。新領域では成果報酬型の採用サイト「キャリコンジョブ」を育成し、次の事業の柱とする。
2026年10月期は売上高28億円、売上高成長率30%以上の維持を数値目標とした。人的投資やAI開発を先行させるため一時的に利益率は停滞するが、中長期的な投資回収を志向すると名富氏は説明。第1四半期は与信リスクの高い案件精査の影響で新規獲得が予想を下回ったが、商談の精緻な選別により第2四半期以降のリカバリーは可能であると語る。また、仙台支店を開設し仙台市長同席で立地表明式を行うなど地域密着型の支援も強化している。株主還元は重要課題と認識しており、近い将来の配当実施を検討している。単なるベンダーではなく「変革の旗手となる」と名富氏は宣言した。今後、国内の建設DX化を強力に牽引していく。
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株式会社TAKARA & COMPANY
企業の成長をITで支援13期連続増収の成長基盤とは
株式会社TAKARA & COMPANY 代表取締役社長 堆 誠一郎 氏
最後は、株式会社TAKARA&COMPANY(証券コード7921/東証プライム)の堆誠一郎代表取締役社長が登壇して説明を行った。同社は、ディスクロージャーを起点に企業の成長を支援するテック企業である。1952年に宝商会が誕生、1960年に宝印刷として設立され、日本初のフィナンシャルプリンターとして、上場企業の有価証券報告書作成等を支援してきた。創業者である野村正道氏の大蔵省(現金融庁)での経験が原点となっている。2025年5月期実績は、連結売上高296億7800万円、営業利益40億4800万円であり、13期連続の増収を達成した。売上構成比はディスクロージャー関連が73.3%、通訳・翻訳事業が26.7%となる。
業界では、サステナビリティ情報の開示義務化やグローバル投資家との対話ニーズの拡大が進んでおり、情報開示の重要性は高まっている。同社の強みは、法定開示書類で約50%のシェアを誇る安定した顧客基盤と、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」にある。同システムは会計データを取り込み、自動集計や矛盾チェックを瞬時に行う「取り込む・整える・開示する」の3ステップが特徴で、上場企業の約半数が導入という高シェアを持つ。
成長戦略では、M&Aを重要な戦略に据え、ブランディング等の周辺領域への進出による事業ポートフォリオの拡張を図ると堆氏は説明した。また、日立製作所と共同開発した「WizLabo Synapse」により、非財務情報と財務データの一元管理を支援する。2027年から義務化されるSSBJ基準への対応も支援する方針だ。ディスクロージャー翻訳事業も受注件数4400件を突破し、プライム市場における和英同時開示が強力な追い風となっている。通訳・翻訳事業の中核を担うサイマル・グループとの連携が、この強みの根源だ。中期経営計画2026の最終年度目標は、売上高330億円、営業利益44億円、ROE10%とした。
株主還元は安定配当を基本方針とし、配当性向は50%程度を目安とする。2026年5月期は年間120円の配当を予想している。また、成長投資に100億円を配分するキャピタルアロケーションを計画しており、2025年7月には諮問機関としてグループ資本戦略検討委員会を設置した。
個人投資家向けには「ジャパニーズインベスター」等の媒体を通じた情報発信に注力しており、社会になくてはならない企業を目指し提供サービスの質にこだわりオンリーワン企業を目指すと、堆氏は力強く語る。企業の永続的な成長を支援し、株主の期待に全力で応える意思を明確にした。
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