プロの知識で賢く資産を増やす!投資ビギナーのための「成長投資枠」戦略――米国株の強さの本質と これからの投資戦略

新NISAの「つみたて投資枠」を活用したインデックス投資は、資産形成の「キホンのキ」となるものとして知られる。ただ、それだけでは投資の本当の面白さは広がらない。とはいえ、新NISAの「成長投資枠」を使い、国内外の個別株や株式以外のETFなど多様な投資の可能性を見出していくには、確かな知識が必要だ。本連載では、投資の幅を広げたい投資ビギナーに向け、各分野のプロが大切な知識や戦略を伝授する。
第2回テーマ
米国株の強さの本質とこれからの投資戦略
今回の先生
エモリファンドマネジメント株式会社 代表取締役
江守 哲
住友商事でロンドン駐在後、Metallgesellschaft社(現J.P.モルガン)を経て、三井物産子会社で日本初の「コモディティ・ストラテジスト」として活躍。人気のYouTubeチャンネル「江守哲の米国株投資チャンネル」を配信するほか、著書多数。
なぜ、米国株は成長性が高いのか?
シンプルな話で、他のどの国よりも世界中から投資が集まるからです。株価の本質は「人気投票」であり、投資家が成長を期待し、あるいは安心して資金を投じるからこそ株価が上昇するわけですが、その期待値において米国はダントツなのです。
米国に投資が集中する第1の理由は、世界標準を創造する圧倒的な企業の存在にあります。WindowsやiPhoneのように、新しいアイデアに事業性と収益性を持たせ、プラットフォームや新規格を世界中に普及させる力は他国の追随を許しません。その代表格といえるのが、マグニフィセント・セブン(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ、エヌビディア、テスラ)と呼ばれるハイテク業界のトップ銘柄です。
第2の理由は、世界中から人材が集まることです。例えば、グーグルの親会社アルファベットの最高経営責任者であるスンダー・ピチャイ氏はインド出身であり、渡米してスタンフォード大学で学び、実力主義の米国企業で高く評価された好例です。米国企業は人材をすぐ解雇する反面、有能な人材には破格の報酬を用意しますし、人種の壁もありません。世界中の天才・秀才が米国の大学で才覚を伸ばし、米国の企業や研究機関で活躍する。その成功を見て、世界中の若者が米国を目指す好循環が成長性やイノベーションを支えています。
それに加え、市場の安心感が大きいと思います。ニューヨーク市場には、手堅く投資できる時価総額(株価×発行株式枚数)が巨大なグローバル企業がひしめき、世界中の投資家が集まって売買をします。よって、流動性も高いのです。機関投資家は巨額の取引をするため、巨額の株数を売却しても相応の買い手がいる流動性が重要であり、米国市場はそれができる世界経済の中心といえます。
米国株への投資方法はどうあるべきか?
NISAの「つみたて投資枠」であれば、S&P500に連動したファンドを買うのが米国株投資の王道です。米国経済を牽引する主要企業500銘柄を、少額でもいっぺんに買える分散効果の高いファンドであり、過去30年で見ても年率10%以上の高いリターンが期待できます。
そのうえで、積み立て投資の最重要ポイントは「継続」です。S&P500さえ延々と右肩上がりで成長しているわけではなく、マイナス成長の年もありますし、2008年のリーマンショックのように、10年に一度のスパンで大暴落を起こすこともあり得ます。そうしたときに、不安に駆られて売るのは最悪な行為です。ITバブル後のように回復に6年以上かかることもありますが、米国市場は何度でも回復・成長してきました。低迷期は「安く買える時期」と捉え、積み立てを続けることが肝心です。
また、「つみたて投資枠」では、オルカンなどの全世界株式も定番のインデックスとして知られます。全世界の時価総額上位企業に分散投資できますが、その内訳は60%以上が米国株です。そのため、米国市場の影響を強く受けることを覚えておきましょう。
その「つみたて投資枠」を投資の土台としたうえで、「成長投資枠」でも米国株にチャレンジする場合、個別株投資をわたしはおすすめしません。米国の個別株はボラティリティが大きく、一日で10%も価格が動くこともざらにあり、激しい値動きやニュースを毎日チェックしていたら気になって仕事も手につかなくなるでしょう。
それなら、わたしはETF(上場投資信託)のほうが無難だと考えます。S&P500のようなインデックスに連動したETFもあれば、運用会社が独自の基準で銘柄をセレクトしたETFもあり、いずれにせよ複数銘柄がセットになっているので、値動きのリスク分散効果が期待できます。
それだけでなく、リサーチの手間も省けます。個別株投資では個々の企業の財務分析や事業の成長性を調べ、ニュースを追わないといけませんが、これを英語圏の米国株で行うのは兼業投資家には重荷でしょう。ETFなら運用会社が優良な銘柄を選び、適宜入れ替えてくれます。例えば、配当利回りの高い優良株を集めた高配当ETFなら、運用を任せてインカムゲイン(分配金)を目的とした投資ができます。
また、米国のハイテク銘柄に絞り込んだ「NYSE FANG+」インデックスに連動したETFのように、セクターを絞ったETFもあります。自分で米国の経済指標などを調べてセクター単位で市場予測を行うのなら、個別株投資よりは効率的でしょう。
米国株の優位は今後も継続するのか?
投資家によって意見が分かれますが、2000年代以降、ハイテク銘柄に牽引されてきた米国経済の成長性は遅くとも2030年頃には鈍化するとわたしは考えます。その理由は、多面的です。トランプ政権は特定国への技術輸出の制限や、西半球(米大陸)の安定と支配を重視する方針を示すなど内向きの政策にあり、米国企業の強みであるイノベーションやグローバリズムが阻害されるリスクがあります。また、米ドルはこれまでの発行数量の多さから価値を落とし、基軸通貨としての信頼を失い続けています。つまり、覇権国としての限界が近いのです。
さらに、すでに米国株は買われ過ぎてS&P500のPER(株価収益率)は20倍以上に達しています。PERは企業の収益力に対して株価が何倍かを示す指標で、高いほど実態に対して割高を意味します。23倍に達する時期もあり、過去の水準で見て割高ですが、さらに深掘りしてS&P500の時価総額上位100銘柄で見ると、約3割の銘柄がPER50倍を超えます。
要するに、ハイテク株を中心としたバブルの状態にあり、いつか弾けて暴落し、停滞期に落ち込むリスクがあるわけです。わたしは、2030年代は投資家にとって次なる投資先を模索する期間となり、2040年頃には新興国のなかでもインド市場の台頭を予測しています。ただし、かつて世界の覇権を握ったイギリスが現在も先進国の上位であるように、米国も「圧倒的ではなくなる」に過ぎず、世界一位の経済大国の座はそうそう揺るがないでしょう。ですから、「S&P500は手放せ」というわけではありません。
みなさんに意識してほしいのが、過去に米国が圧倒的な成長を遂げたからといって、この先も同じではないということです。米国株、日本株、ゴールド、インドをはじめ新興国など、分散型のポートフォリオであらゆる可能性に備えることが大切なのです。
※この記事は2026年4月25日発行のジャパニーズ インベスター129号に掲載されたものです。
