プロの知識で賢く資産を増やす!投資ビギナーのための「成長投資枠」戦略――ゴールド(金)を持つ重要性と価格上昇の理由

新NISAの「つみたて投資枠」を活用したインデックス投資は、資産形成の「キホンのキ」となるものとして知られる。ただ、それだけでは投資の本当の面白さは広がらない。とはいえ、新NISAの「成長投資枠」を使い、国内外の個別株や株式以外のETFなど多様な投資の可能性を見出していくには、確かな知識が必要だ。本連載では、投資の幅を広げたい投資ビギナーに向け、各分野のプロが大切な知識や戦略を伝授する。
第1回テーマ
ゴールド(金)を持つ重要性と価格上昇の理由
今回の先生
エモリファンドマネジメント株式会社 代表取締役
江守 哲
住友商事でロンドン駐在後、Metallgesellschaft社(現J.P.モルガン)を経て、三井物産子会社で日本初の「コモディティ・ストラテジスト」として活躍。人気のYouTubeチャンネル「江守哲の米国株投資チャンネル」を配信するほか、著書多数。
「ゴールド」にはなぜ価値があるのか?
ゴールドには貴金属や宝飾品としての需要だけでなく、「現金の代わりとなる資産」として世界的に大きな需要があります。ゴールドそのものは法定通貨ではないので、実際の買い物をすることはできません。しかし、「通貨と同等、またはそれ以上の価値があるもの」として扱われています。その最大の理由は、価値が落ちにくいからです。
例えば、日本の通貨であれば「円高」「円安」といって価値が上下動しますし、株式はボラティリティが高くなります。しかし、ゴールドは市場の動きにそこまで振り回されず、価値が安定しているのです。むしろ、直近20年を見れば、その価値は上がる一方です。
富裕層は「資産の10%はゴールドで持つ」などポートフォリオに工夫をしています。リーマンショックのような株式の暴落が起きてもゴールドの価値は安定しており、仮にインフレが進行して通貨の価値が下がっても、ゴールドの価値は変わらないか、むしろ上昇していきます。まさに、「守りの資産」の王道なのです。
もちろん、需要が減ればゴールドの価格だって下がります。それでも、希少性が高い資源であることに変わりはなく、通貨のように自由に供給量を増やすこともできません。また、ゴールドは生産コストが価値の下限になります。現在(2025年12月時点)の金価格は1oz(トロイオンス)あたり4000ドルを超えていますが、ゴールドを採掘して精錬する生産コストは2000から2500ドルとされるため、それ以上に下がることはないといえます。
補足ですが、ゴールドの価格は国内市場では「1gあたり◯◯円」で表されますが、世界では1oz(約31.1g)あたりの米ドル価格で表すことも覚えておきましょう。
ゴールドの価値がいま上昇している理由は?
1999年に252ドル/ozだったゴールドですが、現在では4000ドルを超えます。つまり、この25年間で15倍に上昇したというわけです。
なぜそこまで上昇したのかといえば、世界各国の政府や中央銀行が、財政出動や金融緩和で市場にお金を大量に供給してきたため、「通貨の価値が下がっている」からです。特に2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックの際に行われた量的緩和(国の中央銀行が国内市場にお金を大量に流し込み、景気を下支えする施策)は過去に例がないほど大規模なものでした。
通貨の供給が増えれば必然的にインフレ(物価上昇)が起こり、通貨の価値は下落します。以前であれば1個100円で買えたリンゴが、インフレで1個200円になったなら、それは通貨の価値が実質的に半減したことを意味します。通貨を持つことが資産減少のリスクとなるため、ゴールドが買われて価値が上昇しているわけです。とりわけ、基軸通貨である米ドルの価値の低下が著しいことは、ゴールドの価格上昇に拍車をかけています。
さらに大きな構造変化として、新興国の中央銀行による継続的かつ大量のゴールドの買い入れも価格上昇の要因です。2000年代以降、金相場は急激に上昇していますが、同時期に経済力をつけて台頭してきた中国、ロシア、インド、ブラジルなどのいわゆるBRICS諸国や、カザフスタン、トルコといった新興国が金の主要な買い手となっています。
各国がゴールドを買う理由は、主にふたつあります。ひとつは自国通貨が弱いので、通貨価値を担保するためです。国のゴールドの保有量は、国際的な通貨の信頼性や影響力につながります。もうひとつは、米ドルを持ちたくないからです。米ドルは世界の基軸通貨であり、各国が外貨準備としてもっとも高い割合で保有してきました。しかし、ウクライナ侵攻でロシアが経済制裁を受け米ドル建ての取引を制限されたように、アメリカとの関係が対立的な国にとっては米ドル資産を保有することはリスクとなります。そのため、米ドルの代替として信頼の高いゴールドを積極的に買い増しています。
投資ビギナーもゴールドを保有したほうがいい?
「買ったほうがいい」ではなく、「買っておかないとまずい」と言いたいです。それこそいまは「円安」が進み、米ドル以上に日本円の価値は低下しています。ですから、資産の一部をゴールドに変えたほうが安心でしょう。
通貨の価値の低下は、たとえ1年単位ではわからなくても、5年、10年では明確に実感するはずです。それこそ、コロナ禍以降の数年で物価は上昇し、なかには1.5倍や2倍になったものもあります。特に、食料品などは価格が上がり続けています。今後もこうした物価上昇が続くことが予想され、日に日に現金の価値は大きく損なわれるのです。
お伝えしてきたように、ゴールドは流動性も高く価値も下がりにくいのですから、現金をゴールドに変え、大きなお金が必要になったらゴールドを売却すればいいと考えます。
ゴールドはどう買うのがベスト?
簡単な購入方法は、ゴールドのETF(上場投資信託)か、投資信託を活用することです。コストも安く、新NISAの成長投資枠も使えます。確かに、現物のゴールドを保有する満足感が高いのは理解するところですが、保管場所の問題などもあり、一般の投資家には現実的ではないでしょう。
また、ETFや投資信託なら、買うタイミングを考える必要もありません。「ゴールドが高騰しているので下がるまで待ちたい」という投資家も多いのですが、結局は価格がさらに上がって買えないままになるばかりです。
大事なのは、「ポートフォリオの何%をゴールドにするか」を自分のなかで決めることにあります。先に、「総資産の10%がセオリー」といいましたが、できれば総資産の30%をゴールドで持ったほうがいいと考えます。今後も世界的なインフレは続き、通貨の価値は下がっていくはずです。よって、相対的にゴールドの価値は上がり続けますから、なるべく早く行動に移すことをおすすめします。
※この記事は2026年1月25日発行のジャパニーズ インベスター128号に掲載されたものです。
