教えて!長期株式投資さんの資産形成術 第9回 稼ぐ企業を見抜く!「ROE」と「ROA」の違いと資本効率の調べ方

みなさんこんにちは。長期株式投資です。いつも連載をご覧いただきありがとうございます。
この連載では、これから投資を始めたいと考えている初心者の方が、無理なく基礎を身につけられるよう、株式投資の重要ポイントを全12回にわたって体系的に解説しています。毎月1回の更新を予定しており、最終回を迎える頃には、読者のみなさんが初心者を卒業できる状態になっていることを目標としています。
また、投資のイメージをより具体的に持っていただけるよう、毎回、私の保有銘柄トップ20を公開し、簡単なコメントも添えて紹介しています。銘柄選びのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
さて、第9回となる今回は、企業の「資本効率」を読み解くうえで欠かせない指標であるROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)について取り上げます。
株式投資を続けていると、「この企業は本当に効率よく利益を生み出しているのだろうか?」という疑問が生じることがあるでしょう。売上が大きい企業が優れているのか、利益額が大きい企業が強いのか、あるいは株価が上がっている企業が魅力的なのか。もちろんどれも重要な要素ではありますが、「企業が持っている資本をどれだけ効率よく利益に変えているか」という点も負けず劣らず重要です。
その資本効率を測る代表的な指標が、今回取り上げるROEとROAです。どちらも投資家にとって重要な指標ですが、意味合いや使い方には違いがあります。この記事では、それぞれの特徴や注意点、そして実際の企業データを使った比較まで、初心者でも理解できるよう丁寧に解説していきます。
ROE(自己資本利益率)の目安とは?「株主のお金」で効率よく稼ぐ力を測る
まずはROE(Return on Equity)から見ていきましょう。ROEは株主が出資したお金(自己資本)を使って企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。計算式は非常にシンプルで、純利益を自己資本で割り、100を掛ければ ROEが求められます。
この数値が高いほど、企業は株主から預かった資本を効率よく運用していると判断されます。一般的には8%を上回れば合格点とされており、これは2014年に経済産業省が公表した「伊藤レポート」で示された目標水準でもあります。伊藤レポートは、日本企業が世界で戦うためには資本効率を高める必要があるという問題意識から作成されたもので、ROE8%という基準はその後の企業経営にも大きな影響を与えました。
なお、ROEは多くの投資情報サイトや証券会社のデータベースで掲載されているため、自分で計算する必要はありません。まずは気になる企業のROEを確認し、資本効率の高さをざっくり把握するところから始めてみるとよいでしょう。
要注意!ROEは「高ければ良い」とは限らない?借入金がもたらす落とし穴
ROEは便利な指標ですが、万能ではありません。特に注意したいのは、借入金を増やすことでROEを人工的に高く見せることができるという点です。
ROEの分母である自己資本は、借入金が増えると総資産に対しての割合が相対的に小さくなります。つまり、自己資本比率が低い企業ほどROEが高く見えやすいのです。これは必ずしも企業の実力を反映しているわけではなく、財務の安全性を犠牲にしてROEを押し上げているケースもあります。
たとえば、KDDIとソフトバンクの2026年3月期決算データを比較すると、ROEはソフトバンクの方が高い一方で、自己資本比率はソフトバンクの方が低くなっています。これは、ソフトバンクが多くの借入金を活用して事業を拡大しているためで、ROEの高さだけを根拠にソフトバンクの方が効率的だと判断するのは早計です。
このように、ROEを評価するときは、必ず自己資本比率など他の財務指標と組み合わせて判断することが重要です。ROEが高く、かつ自己資本比率も高い企業は、資本効率と財務健全性の両方を兼ね備えていると考えられます。
ROA(総資産利益率)とは?企業の「総合的な収益力」を測るもうひとつの指標
次にROA(Return on Assets)について見ていきましょう。ROAは企業が保有する資産全体を使ってどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。計算式はROEと似ていますが、分母が総資産になる点が異なります。
ROAは借入金の影響を受けにくく、企業の総合的な収益力をより正確に反映しやすい指標です。借入金を増やしても総資産が増えるため、ROAを人工的に押し上げることはできません。ROEが高くてもROAが低い場合は、財務レバレッジ(負債)に頼った経営である可能性が考えられるため、両方をあわせて確認することが重要です。
ROEと同様、多くの投資情報サイトで掲載されているため、まずはROEと並べてROAを確認し、企業の収益構造を立体的に把握することが大切です。
ROAを活用するポイント!同業他社との比較が銘柄選びの鍵になる
ROAは単独でも企業の収益力をある程度評価できますが、やはり同業他社との比較が欠かせません。業種によって必要な資産の大きさが異なるため、ROAの適正水準も大きく変わるからです。
たとえば、通信業界のように設備投資が大きい業界では、総資産が膨らむためROAは低くなりがちです。一方、ソフトウェア企業のように資産をあまり必要としない業界では、ROAが高くなりやすい傾向があります。
先ほどのKDDIとソフトバンクの例にROAを加えて比較すると、ROEではソフトバンクが優位に見える一方で、ROAではKDDIの方が高いという結果になります。これは、KDDIの方が総資産をより効率的に活用して利益を生み出していることを示しており、企業の収益力を判断するうえでROAが非常に有効な指標であることがわかります。
ROEとROAの両方を見ることで企業の姿が立体的に見える
ROEとROAはどちらも資本効率を測る指標ですが、意味合いが異なるため、両方を組み合わせて使うことで企業の姿がより立体的に見えてきます。
ROEは「株主のお金をどれだけ増やしたか」を示す指標であり、企業の資本政策や財務戦略の影響を強く受けます。一方、ROAは「企業全体の資産をどれだけ効率よく使っているか」を示す指標であり、企業の本質的な収益力を測るのに適しています。
ROEが高くてもROAが低い企業は、借入金を多く使ってROEを押し上げている可能性があります。逆に、ROAが高い企業は、自己資本比率が高く財務が健全であるケースも多く見られます。
このように、ROEとROAをセットで確認することで、企業の資本効率と財務健全性のバランスを把握でき、投資判断の精度が大きく向上します。
【公開】長期株式投資の現在の保有銘柄トップ20と最新の投資戦略
さて、続いて執筆者の保有銘柄トップ20のコーナーです。この連載では投資の基本を学んでいただくことに加えて、執筆者がどのような投資を行っているのかについて、保有銘柄トップ20を毎回公開しコメントを添えて紹介しています。これにより、読者のみなさんに投資や運用の具体的なイメージを持っていただければと考えています。
前回(8月28日)以降、買い増し等は行っていませんが、9月末を基準日として実施された株式分割の影響により、三井住友FG、東京海上HD、大和ハウス工業の保有株数が増加しています。
株式分割とは、企業が1株を複数株に分割することで投資単位を引き下げるために行われます。今回、私の保有株では三井住友FGと大和ハウス工業が2分割を実施し、三井住友FGは3,730株から7,460株へ、大和ハウス工業は1,000株から2,000株へと株数が増えました。また、東京海上HDは15分割を実施し、801株から12,015株へと増加しています。
株価が高い水準になると個人投資家にとって投資のハードルが上がるため、企業は株式分割によって1株あたりの株価を下げ、投資しやすい環境を整えることで新規の個人投資家を呼び込みやすくします。
なお、株式分割が行われると株数が増えるため、「会社が大きくなった」「業績がアップした」と誤解されがちですが、企業自体の価値(資産や利益水準)が変わるわけではありません。そのため、理論上は分割の前後で会社の総価値である時価総額は変わりません。
一方、1株あたりの金額が下がることで買いやすさ(流動性)が高まり、株を買いたい人が増える環境が整うことは、中長期的な株価の上昇にとってポジティブな材料になり得ます。
このように、株式分割は企業の価値そのものを直接高める万能薬ではありませんが、投資のハードルを下げて市場を活性化させる大切な役割を持っています。銘柄を選ぶ際の一つのポイントとして、ぜひ頭に入れておいてください。
図1 保有銘柄トップ20
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
1977年生まれ、熊本県出身。「日本の配当株」専門の元サラリーマン投資家であり、1級FP技能士。2004年から株式投資をはじめ、ハイリターンを求めて新興市場にて個別銘柄の投資をするも、2006年にライブドア・ショックで大きな損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマン・ショックで壊滅的な痛手を被る。そこで、2009年からはポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5,128円と過去最高を更新。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアを実現した。これまでの投資生活で磨いた技術やノウハウをX(旧:Twitter)やブログにて配信し、個人投資家のサポートに尽力するほか、著書に『【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 経営戦略から“ほぼ永遠に儲かる企業”を探す方法』(KADOKAWA)、『マンガでわかる!超はじめての株式投資』(永岡書店)がある。


