「高配当株5:優待株3:成長株2」。年間配当3,000万円を受け取る投資家が辿り着いたポートフォリオの神髄

『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなっている、個人投資家のかんち氏。そんな同氏のポートフォリオは、高配当株50%・優待株30%・成長株20%で占められているという。これまでの40年の投資キャリアで、その構成に辿り着いた経緯を聞く。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
優待株投資に訪れる「消費の限界」
──現在、ポートフォリオはすべて日本の個別株で、高配当株50%・優待株30%・成長株20%の構成だそうですね。その比率には、どのような意図がありますか?
かんち:いまの比率を意図的に目指したわけではなく、あくまでも結果論です。わたしは1980年代前半から株式投資を始めて以来、株式を売ったり入れ替えたりすることはせず、「持ちっぱなし」のスタンスを基本としています。戦略的な投資ではなく、「預貯金ではつまらないから、株式投資に入金し続けている」というイメージだったため、ポートフォリオの配分も特に意識はなかったのです。
ただ、配分が大きく変動したのは、2008年のリーマン・ショック時です。このときに消防士も退職して、手持ちの現金と退職金もすべて株式に投じたのですが、その多くは優待株でした。当時は株価が5分の1まで激減しているのに、配当や優待の水準を変えない企業が大半だったのです。
特に、優待利回りでは20%や40%にもなる優待株がゴロゴロしていましたから、買わないのは損ですよね。ですから、リーマン・ショック後しばらく、ポートフォリオの配分としては優待株がもっとも高かったはずです。
──しかし、現在は高配当株中心の構成ですよね。シフトした理由は?
かんち:株式投資を「楽しむ」という点では、確かに優待株投資はおすすめです。投資ビギナーの方がモチベーション高く株式投資を続けるなら、優待の商品やサービスを享受できるのはいいですよね。しかし、優待株投資は、ある程度の資産額になってくると、いずれ「消費の限界」が訪れます。
例えば、成人の平均的な米の消費量は年間50kgか60kg程度ですから、いくら優待利回りがいいといっても、年に100kgや200kgもお米が届いたら消費に困るのがオチです。同様に、外食企業が提供してくれるお食事券やホテルチェーンの宿泊券も、日常生活のなかで消費し切れなくなってしまいます。
ですので、10数年前に優待消費の限界に達してからは、優待株の買い増しをしなくなりました。その後、投資の受け皿として選んだのが高配当株です。配当金というかたちで受け取る限り「消費の限界」はないので、いくら積み上げてもいいわけです。資産規模が大きくなるにつれ、高配当株は資産の中核としての役割を果たせるカテゴリだと考えるようになりました。その結果としての、高配当株50%・優待株30%・成長株20%という比率です。
初心者にも易しい、高配当株を選ぶ「5つのステップ」
──ポートフォリオの中核となる高配当株を、具体的にどう選んでいますか?ぜひ、投資ビギナーが高配当株投資を行ううえでの、ヒントをお聞かせください。
かんち:わたしは、比較的おおざっぱなほうだと思いますので、その前提でお願いします。おおよそ30分か1時間程度の時間で、「5つのステップ」で銘柄を探しています。以下に沿って絞り込めば、投資ビギナーの方でも大きな失敗はしにくいのではないでしょうか。
<高配当株選びの5つのステップ>
ステップ①「配当利回り3.5%以上」の銘柄を探す
ステップ②「増収増益・増配」の銘柄に絞り込む
ステップ③一時的な要因で業績がよく見える銘柄を除外
ステップ④「PER×PBR=15倍以上」の割高銘柄を除外
ステップ⑤株価が下がったタイミングで買う
ステップ①は、「配当利回り3.5%以上」の銘柄のスクリーニングです。証券会社のスクリーニング機能や、「配当利回りランキング」のGoogle検索でも十分でしょう。3.5%以上で対象がなくなってきたら、3.0%まで広げることもあります。
──とはいえ、「配当利回りが高ければ買い」というわけでもないですよね?
かんち:その通りです。ここから先のステップが絞り込みとして重要で、ステップ②「増収増益・増配」の銘柄への絞り込みを行います。
配当利回りが高い銘柄のなかには、業績悪化で株価が下がった結果、相対的に利回りが高く見えているだけの「危険な銘柄」も含まれています。そうした銘柄はいずれ減配する可能性が高いので、業績推移をチェックして増収増益している銘柄に絞り込みます。さらに欲をいえば、増配している銘柄がいい。ただ、業績推移は必ずしも「連続増収増益」ではなく、多少デコボコしていても全体として右肩上がりであればよしとします。
ステップ③の「一時的な要因で業績がよく見える銘柄を除外」というのも、考え方は同じですね。例えば、従業員のリストラでコスト削減した、土地や保有株を売却したといった一過性の要因で利益が膨らんでいる場合、その業績は企業本来の実力ではありません。翌年度には利益が急落し、株価も配当利回りも低下する可能性がありますから、業績の要因をよく見ることが大切です。
余裕があれば、自己資本が伸びて有利子負債が減っているかもチェックしてください。つまり、財務体質が健全であるか否かということです。長期保有をするなら、財務基盤が健全に越したことはありません。ただし、急激に自己資本が減ったり、有利子負債が増えたりしている場合も、その理由はしっかり見てみましょう。それが将来の成長に向けた設備投資や研究開発などの先行投資であれば、わたしはマイナス評価にはしません。
──配当利回りが高く、財務も健全な銘柄に対し、ステップ④ではPERとPBRから株価が割安か割高かを見るのですね。
かんち:PERは「株価÷1株当たり当期純利益(EPS)」で数値が低いほど割安ですが、わたしの基準は10倍以下です。PBRは「株価÷1株当たり純資産(BPS)」で、こちらは1倍未満で割安と判断します。
「PERは10倍超だがPBRは1倍未満」といったちぐはぐなケースもあるので、迷ったら「PER×PBRが15倍未満」をひとつの目安にしています。例えば、PER10倍×PBR1.5倍=15倍ならギリギリよしですが、PER12倍×PBR1.5倍=18倍なら除外という具合です。
しかし、業種ごとにPERとPBRの平均水準は異なりますから、上記はあくまで目安です。業種ごとの平均的なPERとPBRを頭に入れておき、業界水準に照らし合わせてその銘柄は割安か、割高かを見ることが大切だと考えます。
最後に重要なのが、ステップ⑤「株価が下がったタイミングで買う」です。配当利回りは買った時点の株価で計算されるので、同じ配当額でも安く買えるほど利回りは上がります。これを徹底するだけで、長期的なリターンは大きく変わります。
市場全体が低迷するタイミングだけでなく、わたしの経験上、どんな安定銘柄でも年に1回から2回は調整局面があり、株価が下がるタイミングが訪れます。ステップ①から④までのチェックを通過した銘柄をリストアップしておき、株価の下がったタイミングを待って買うよう心がけています。
成長株投資は資産の拡大に欠かせない
──最後に、ポートフォリオに2割入れ込んでいる「成長株」に対する考えを教えてください。
かんち:ここは、なかなか回答が難しい部分です。なぜなら、本来は高配当株も優待株も、利回りが高い銘柄は株価が伸びにくいのが通例であったからです。よって、ポートフォリオに5倍、10倍と株価を伸ばす可能性のある伸びしろの大きな中小型株などを「成長株」として入れておくことが、資産形成には欠かせないポイントでした。
しかし、直近5年ほどは非常に市場がよかったのです。海外投資家の買いが入り、日経平均株価を構成するような大型株の株価が上昇していきましたから、わざわざ成長株を狙わなくても、高配当株投資でも優待株投資でも株価が大きく上昇し、キャピタルゲインが取れてしまいました。
ただ、この先も直近5年の市場と同じになるとは限りません。配当重視の銘柄より、積極的に成長投資を行う成長株の躍進が目立つ可能性だってあるでしょう。ですから、わたしはこの先も応援したくなる成長株への投資を続けていくつもりです。
ただし、成長株は「当たり」と「外れ」がはっきり分かれるカテゴリであるため、例えば、10銘柄買ったら3銘柄は過度な期待をしないくらいの気持ちで買ってきました。実際のところ、外れの確率は3割より高かったかもしれません。だからこそ、銘柄選びの基準も、売り方のルールも、高配当株とはまったく別物として扱う必要があります。
──成長株で「外れ」を引かないために重視していることは?
かんち:重視しているのは、「圧倒的な強みがあって他社が入ってきにくいビジネスモデル」を持っているか否かです。一例として、日本の上場企業の大手50社のうち約半数が使っている連結会計ソフトを提供するアバントという企業があります。業績は10年くらい右肩上がりで、配当も増配が続いています。連結会計のような複雑なシステムは、一度導入したら容易に他社製品へ乗り換えません。つまり、顧客が離れないビジネスモデルだといえます。
また、消防・警察などへの通報システムや自治体防災などのDXを手がけるドーンという企業も、成長株投資で成功した好例です。ニッチな領域ですが、消防を含む官公庁では本部レベルで採用されれば、右へ倣えで全国へと普及する傾向にあります。こうした、長期的な成長が期待できるビジネスモデルを持つ銘柄は、多少PERが高くても安心して保有できます。
──半導体銘柄や、高市内閣の政策関連銘柄など、流行りのテーマ株に乗ることは?
かんち:AI・半導体・防衛といったテーマ株は一切持っていません。また、流行りのテーマ株は、投資家の期待を織り込んでいるため、期待通りにならないとガクンと下がります。ですから、テーマ株というのは、成長株のなかでも特に投機性の高い領域だと考えます。
そもそもの話、長期的な成長性を判断するのは難しいですし、わたし自身も得意としない領域であったため、手を出さないできました。それよりも、「圧倒的な強みがある会社」を探し、着実な成長を遂げる銘柄に投資をしたいと思っているのです。
かんち
1961年三重県生まれ、三重県在住。元消防士の資産約10億円・年間配当金3,000万円超(2026年2月時点)の専業投資家。49歳のときに株式投資で資産2億円になったことからFIRE生活を開始。生活費のすべてを株の配当金・株主優待でまかなう生活を送っている。投資歴40年以上で保有銘柄は約600銘柄。投資初心者でもわかりやすく、判断基準が明確で再現性の高い投資手法は、個人投資家の間で定評がある。著書に『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)がある。
左イラスト:鈴木勇介
