誰だって無理なく資産1億円は実現できる。地道な「貯株」と「分散投資」で「億り人」を目指す

40年以上の投資歴により、現在は資産10億円・年間配当3,000万円を実現した元消防士の個人投資家・かんち氏。多くの投資家が夢見る「1億円」という資産に対し、「年収が高くなくても十分に目指せる」と語る。鍵となるのは「入金力」と「貯株」、そして「超分散投資」の徹底だ。短期売買やレバレッジによって一攫千金を狙うのではなく、地道に株数を積み上げる現実的な道筋についてアドバイスをお願いした。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
「年100万円の入金」を可能にする生活設計
──かんちさんは、もともと地方自治体で勤務する消防士であり、収入は安定していても、決して年収が高くはなかったそうですね。例えば、年収300万から500万円くらいの、いわゆる「普通の収入の人」でも、個別株投資で1億円以上の資産を目指すことはできますか?
かんち:それこそ、いまは「NISA」も使える時代です。堅実に投資を行っていけば、資産1億円は十分に可能だと思います。ひとつ実例をお伝えすると、わたしは2000年に末の息子が生まれてから、自分の株式を分けるかたちで2008年まで毎年100万円ずつ息子名義の証券口座に入金して投資していました。8年間で計800万円ですね。
その直後にリーマン・ショックが来て、一時的にその資産は大きく目減りしましたが、その800万円は現在、約1億円になっています。2000年代から日経平均株価は5倍近く成長し、アップダウンこそあれ株式市場は成長し続けているのですから、複利の力も相まって、時間をかければ資産はこれほど大きく増えていくのです。
──株式投資において重要なのは、「投資元本の大きさ」だともいわれますよね。実際、どの程度の入金を目標にすべきでしょうか?
かんち:わたし自身がやってきたのは、年100万円ペースの入金です。月5万円とボーナス時に20万円ずつくらいというイメージですね。ただ、「投資のために仕事を頑張った」という実感はありますが、「生活を削って無理をしていた」とは思いません。というのも、わたしの場合はずっと実家に住んでいて、住宅費がかからなかったからです。資産形成の初期段階では、これが非常に大きかったと思います。
ですから、「無理をしなくても投資元本を増やせる生活設計」が重要なのだと思います。例えば、地価が高騰している東京では、家賃が収入の3分の1から4分の1を占めるのが当然のように語られていますが、月30万円の手取りで8万円から10万円の計算です。これを全額株式投資にあてられたら、それだけで年100万円ペースの投資が可能となります。ですから、まずは「実家暮らしできるなら、そうしたほうがいい」というのが、極めて現実的なアドバイスです。あるいは、せめて住宅費が下がる場所に移住することですね。
──投資への入金力を高めるには、節約が重要ということですね。
かんち:家賃以外の節約も、ほどほどに可能な範囲で行う必要はあるでしょうね。家賃などの固定費は、一度削減すればその効果は毎月ずっと続きますから、最優先という話です。
ただ、食費などの節約には限界がありますし、やり過ぎは生活を貧しくしかねません。そこで、わたしが入金力を高めるうえでおすすめしているのは、「優待株投資」です。優待株投資は日本独自の制度であり、多くの場合で一単元100株を保有すると優待利回りが最大化される設計になっていますから、こんなおいしい制度を使わない手はありません。例えば、外食株の優待をいろいろなジャンルで揃えていけば、外食費を減らすことができます。
優待株投資で極端な例は、個人投資家の桐谷広人さんです。彼は、株主優待によって「食費がほぼゼロ」という生活を実現されていますよね。例えば、吉野家ホールディングスは200株で年に1万円分のサービス券がもらえますから、投資をすれば皆さんも、株主優待で年1万円分の食費を浮かせることができ、そのぶんを新規の株式投資に回せるわけです。
少しずつ、そうした優待株を増やしていけば、月に1万円、2万円の食費を浮かせることができます。資産を増やしながら、節約も同時に進めていけるわけですから、投資ビギナーはまず優待株投資を進めるのがいいと思います。
「貯株」と「超分散投資」。地道な積み上げが効く理由
──かんちさんの著書『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)では、「貯株」という考え方を提唱されていて印象的でした。
かんち:貯金なら何年も平気で積み上げられる人でも、なぜか株式投資では数日や数カ月で売買を繰り返してしまいがちです。それはおそらく、「株式投資はタイミングよく売買をして儲けるもの」というイメージを持っているからでしょう。
でも、例えばNTT株は2026年4月19日時点で株価は150円台で、配当利回りは3.5%程度あります。それなら、年利3.5%がつく「破格の貯金」だと思って、そのまま買って置いておけばいいのです。
NTT以外にも、三桁の株価で買いやすく、時価総額が膨大で潰れにくい大型株で、3.5%以上の配当利回りがつく銘柄は、タイミングにもよりますが他にもあるでしょう。そうした銘柄に貯金するような感覚で100株ずつコツコツ買い増していくのが、わたしが提唱する「貯株」の考え方です。
資産が少ないうちは、どうしても短期でドカッと増やしたい欲望に駆られがちですが、それはほとんどの場合で失敗します。短期売買はプロの専業トレーダーが活躍する激戦区ですから、素人はまず勝てません。早めにそこに気づいて、地道にやるほうが資産を積み上げていく近道です。
──また、同著では約600銘柄もの「超分散投資」の実践についても触れています。総資産が少ない投資家でも、多数銘柄に分散するメリットはありますか?
かんち:600銘柄のうち、実は300銘柄から400銘柄ほどは優待目的の銘柄です。先にもお話しましたが、株主優待は一単元100株で利回りが最大化される設計が多いので、優待株投資をするなら、分散して銘柄数は増やしたほうがいいですね。利回りがよくて自分が使える優待からどんどん増やしていきましょう。
逆に、資金が少ないからといって単元未満株で銘柄の種類を増やすのは、株主優待を得られないぶん損ですよね。そうであるなら、焦っていろいろ買おうとするより、NTTやソフトバンクといった三桁台の買いやすい株価で、時価総額の大きく、潰れそうにない大型株を100株ずつ買って積み上げていくのがいいでしょう。株価が安定していますし、配当金も得られます。
そこに資金をデポジットしておく感覚で投資を進め、4桁株で欲しい銘柄が出てきたら、三桁株を売って、株主優待が得られる100株単位で買うというやり方で銘柄を増やしていくのがいいと思います。
そうして「超分散投資」といえるほど銘柄数が増えてくると、実質的にインデックス投資と似たようなポートフォリオになっていきます。大型株ばかりを買えば、日経平均株価に近づきますし、中小型株を織り交ぜてTOPIXに近づけることもできます。インデックス投資のようにリスクは分散されるのに、インデックス投資では得られない株主優待や配当金はしっかり得られるというイメージです。
暴落のチャンスで備えるべき心構え
──長期投資で資産を増やすうえで重要なのは、大暴落時の買い増しというポイントもあると思います。よく、10年に一度は大暴落に見舞われるといわれますが、暴落に対して投資ビギナーはどのように備えるべきでしょう。
かんち:具体的な準備よりも、心構えが大切だと思いますね。要するに、どれだけ株価が下がっても「最後には回復する」と信じられるかどうかです。信じて続けられれば、最終的に勝てるのですが、実際はそれが難しいのです。
精神的に追い込まれてしまい、株を売却して「もう株なんて見たくもない……」と落ち込んでしまうこともありますし、生活が困窮して資金を引き出さざるを得なくなり、そこで市場から退場してしまうケースも往々にしてあるでしょう。
ですから、「市場はいずれ回復する」と、過去の事例を何度も見返して勉強することが大切です。そして、生活基盤を乱さないで済むよう、半年から1年分の現金を「生活防衛資金」として持っておくことが準備の基本です。
また、暴落を「買いのチャンス」として活かすには、日頃から買いたい銘柄をリストアップしておくことがマストといえます。わたし自身も配当利回りと財務分析で銘柄をリストアップしたうえで、マネックス証券の「値下がり率ランキング」などを見て、チャンスを探っています。そう言葉にすると簡単なのですが……・投資ビギナーのうちはリストアップが進みませんよね?
それなら、先のNTTやトヨタ自動車など、日本屈指の時価総額を持つ「潰れそうにない大型株」を、暴落が来たときに淡々と買い増していくのが安心ではないでしょうか。決して難しいことをしなくても、これを20年、30年と続けていけばいいのです。そうすることで、年収がそこまで高くなくても資産1億円にはきっと届くはずです。わたしの息子の口座が800万円から1億円になったのが、そのなによりの証拠でしょう。
──かんちさんは、暴落時に信用取引で買い増しを行うことがあるそうですね。投資ビギナーの信用取引についてはどう考えますか?
かんち:初心者は絶対にやめておいたほうがいいです。証券口座にある資金の、おおよそ3倍程度を証券会社から借りて投資できるのですが、半年後には借りた資金を返済しなくてはなりません。
暴落が訪れ、そこでタイミングよく信用取引で買った銘柄の株価が回復していくのならいいのですが、さらに段階的に下がり続けたら最悪の事態です。いうまでもなく、返済のタイミングでも株価が回復せず、返せなくなる可能性があります。
実は……わたしもリーマン・ショックの際に同様の事態に陥ったのです。2008年4月段階で日経平均株価は1万3000円を割り込み、いよいよ底を打ったと見て、リストアップしていた銘柄を信用取引で購入しました。しかし実際には、リーマン・ショックによって日経平均は下がり続け、2009年3月には7000円台にまで落ち込んでいきます。
このときわたしは、信用取引のマイルールを設定していたので、市場から退場せずに済みました。そのマイルールとは、「保有する現金以上に損失が膨らんだら、その時点で信用取引分は損切りして負けを認める」というルールです。
つまり、証券口座に現金100万円があって信用取引を行った場合は、どれだけレバレッジをかけようと、100万円分の含み損に至った時点で問答無用で損切りをします。このリーマン・ショック時も、わたしは元の口座残高分の損失が出た時点で損切りしたため、大きな損失にならずに済みました。
大きな資産を得るために、大きなリスクを覚悟する必要はありません。ここまでお伝えしてきたように、あえて大きなリスクを背負わなくても、時間をかけて投資を着々と続ければ、大きな資産は得られるからです。株式投資にある落とし穴にみずからはまらぬよう、堅実な投資を続けていきましょう。
かんち
1961年三重県生まれ、三重県在住。元消防士の資産約10億円・年間配当金3,000万円超(2026年2月時点)の専業投資家。49歳のときに株式投資で資産2億円になったことからFIRE生活を開始。生活費のすべてを株の配当金・株主優待でまかなう生活を送っている。投資歴40年以上で保有銘柄は約600銘柄。投資初心者でもわかりやすく、判断基準が明確で再現性の高い投資手法は、個人投資家の間で定評がある。著書に『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)がある。
左イラスト:鈴木勇介
