わずか6年で1億円突破!インデックス投資の最適解を覆した、ぽんちよ式・個別株投資にあった光と影

投資初心者に向けた資産形成のアドバイスでは、その多くの場合で、積み立てによるインデックス投資が推奨される。手間なく、20年、30年後には大きく資産形成できる確率が過去のデータ的にも高いからだ。しかし、投資系YouTuberのぽんちよ氏はそうではなかった。24歳で200万円を元手に、個別株を中心とした株式投資によって2年で資産1,000万円、そして20代のうちに資産5,000万円を突破。急速な資産形成を目指す株式投資はリスクが高いため万人に推奨できるものではないが、実際に「やる」となればどのような困難があるのだろうか。実体験を聞いた。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
資産形成のスタートは入金力が重要
——ぽんちよさんは2018年に新卒で資金200万円から株式投資をはじめ、6年ほどで1億円を超える資産を築かれたそうですね。投資をはじめたきっかけを教えてください。
ぽんちよ:大学を卒業した頃というのは、希望もある反面、一番仕事が大変に思える時期でもありますよね。わたしが就職した会社はかなり体育会系のハードなところだったこともあり、友人に「仕事がきつい。働かなくてもお金が増えないかな……」と愚痴をこぼしていたら、「じゃあ、投資をはじめたらいいじゃん」といわれたのです。特に疑問にも感じず「そうだな」と思って、帰宅してすぐに証券口座の開設手続きをしました。それくらい仕事から逃げ出したかったのです(笑)。
——では、特に投資の勉強をしていたり、明確な投資戦略を持ってはじめたりしたわけではなかったのですか?
ぽんちよ:最初は完全な無策でしたね。「トヨタとか楽天とか、誰でも知っているような銘柄をとりあえず買ってみよう!」という感じで、日本の大型株を中心に気分だけで投資をしていました。
しかし、2018年に米中貿易摩擦の影響で日経平均株価が大きく値下がりしてしまい、わたしの保有株も20%ほど下落。そこではじめて損切りの痛みを経験しました。自分の月給ほどの損失を出して、「うわ……、まじめに勉強しないとダメだ」と反省し、ファンダメンタルズ分析の本などを読み、自分なりに根拠を持った株式投資を行うようになりました。
——そういった原体験を持つ投資家は多いように思います。ぽんちよさんは、そこから2年程度で資産を1,000万円に伸ばしていますよね。投資初心者にとって、1,000万円は株式投資の利益が大きくなるひとつの壁であり到達点だと思いますが、どうやって資産を増やしたのですか?
ぽんちよ:面白くない回答ですが、資産形成の序盤は投資の力というより入金力です。当時、わたしは単身者の社宅住まいで家賃は7,000円だったということもあり、生活費は5万円程度で暮らしており、それなりに抑制的な生活をしていました。
そうした生活をしていると年収300万円でも150万円を、年収500万円なら300万円以上を余剰資金として投資に回せるわけです。株式投資をはじめる人の多くが、「どうやって投資で増やすか」から考えがちですが、投資は元本の大きさがものをいう以上、「どうやって入金を増やすか」を考えて元本を引き上げることはすごく大事であると考えます。
わたしの場合は会社の仕事だけでなく副業も行っていたので、年間300万円〜400万円ペースで入金することができました。その入金力の大きさがが、その後の資産形成のスピードにつながったことは間違いありません。ここでのポイントは、副業や投資で稼いだら課税されますが、節約で浮いたお金は非課税で効率よく投資の原資をつくり出せるという点です。ですから、それなりの資産を築けたいまでも、倹約的な生活を続けています。節約を苦もなくできる気質をつくることが資産形成には重要なのだと、ここまでを振り返ってあらためて感じることです。
インデックス投資以上の成果を求めれば相応の苦労と試練がある
——本業を日々こなしながら副業をして、さらには徹底した節約もするのは、かなり努力を要することだと推測します。ぽんちよさんのように、短期間で資産形成の土台を築こうとする場合に留意したほうがいいことがあれば教えてください。
ぽんちよ:わたしが恵まれたのは、転職して北陸地方に勤務したことですね。家賃は社宅から賃貸になったので、7,000円から4.5万円と高くなりましたが、地方のため1LDKという十分な広さの間取りの部屋で暮らすことが出来ました。また、スーパーで買う海産物がとても美味しかったので、高いお金を出して外食しなくても済み、自然と倹約的な生活をすることが出来ました。徹底した倹約的な生活のなかにおいても、どこで自分の喜びを満たせるかを考えることは、クオリティ・オブ・ライフを考えたうえで欠かせないですよね。
また、元本を増やすための副業では、時間や体力面の限界には注意したほうがいいでしょう。わたしも会社の仕事が終わってからレストランでアルバイトをして稼いだ時期がありましたが、20代半ばで若いからできた面はあると思います。体力が少し落ちた30代のいまは……やりたくないですね(苦笑)。
——株式投資においては、のめり込むほどメンタル面のリスクもあると考えますが、そのあたりを実感されたことは?
ぽんちよ:確かに、株式投資に手間をかけるほど、精神的な苦しさがあることに注意は必要ですね。堅実度が高いインデックス投資であれば、積み立て設定をして放っておくだけで資産形成ができますが、5年、10年で大きな成果を得られるものではありません。わたしは「せっかく投資をやるなら10倍株を掴みたい」「会社を辞めて自由になりたい」という思いで個別株投資を中心に行っていました。
その過程で、しっかり財務諸表を見てファンダメンタル分析をするようになってからは、日本の中小型株や米国株のグロース株投資に軸足を移していて、成長性を見て銘柄を入れ替えるなど相場に向き合う機会が多いため、メンタルの損耗が激しかったのです。
特に、2020年以降のコロナ禍の株式市場は米国企業の成長性に加え、日本株も円安の影響で大きく市場が成長しました。それこそ、わたしの1,000万円の元本が、わずか2年で5,000万円に到達するような勢いでした。米国株では、ハイテク株の隆盛に乗って保有していたアルファベット(グーグルの親会社)株は2倍に成長しましたし、当時はまだ知名度の低かったエヌビディア株を保有していて、8倍もの成長を掴むことができました。
最終的な結果だけを見れば確かに成功事例なのですが、なんといっても米国株はボラティリティが高いですし、日本株市場もだいぶ変動のある時期でした。大きく上昇するぶん、大きく下降する局面もあり、含み損が生じるときはかなり精神的に苦しかったことは事実です。その頃は、「仕事を辞めてFIREも夢じゃない」というビジョンが見えはじめていたので、「いまが正念場だ」と思って頑張れたのですが、相場動向で心が折れてしまう可能性は十分にあります。よって、「無理ならやめる」という判断も持っておかないと危険だと感じます。
グロース株投資から高配当株投資への転換理由
——2022年に5,000万円を突破したそうですが、その後も米国市場のハイテク株中心の成長、日本株も日経平均株価が最高値を更新する成長がありました。そして、2024年には資産1億円を突破されています。この間の投資戦略を教えてください。
ぽんちよ:それこそ、5,000万円、1億円と倍々ゲームのような資産の伸びでしたが、そうなれたのは、わたしが特別なことをしたわけではなく、「うまく市場の波に乗れたから」だと思っています。これは現在のものですが、以下がわたしのポートフォリオです。
当初は日本株ではじめた個別株投資でしたが、次第に米国の個別株の割合を増やしていきました。そうした理由は、2018年の米中貿易摩擦を経験した際に、貿易摩擦が緩和されると米国市場はすぐに回復するのに対し、日本市場は停滞したままという現象が見られたからです。その後もファンダメンタルズを見ていくなかで、日本企業と比較して米国企業の強さを実感することが多く、米国株投資の割合が増えていったという経緯です。その方向に舵を切れたのは、ファンダメンタル分析を学んだ成果といえます。
あくまで結果論になりますが、2020年代前半においては、米国市場はボラティリティの高さはリスクであるものの、やはり「資産を増やしたい」のなら米国市場の強さに乗っかることが正解だったと思います。むしろ、いまとなってはテクニカル分析も学んでおくべきだったと感じています。グロース株投資では、成長性に陰りが見えた銘柄は売却を検討するのですが、テクニカルを理解しておけば、もっと効率的に利確や損切りのタイミングを図ることができ、投資効率が上がったはずだからです。
——では、これからスピーディーに資産形成したい個人投資家も、米国株中心に投資をするべきだと思いますか?
ぽんちよ:今後も米国株が有利かといえば、十分に検証していく必要があるでしょう。わたし自身は、まだまだ米国の成長は続くと考えていますが、米国経済の先行きを危ぶむ投資家もたくさんいます。ただ、わたし自身はグロース株投資から高配当株投資に転換したこともあり、いまは米国市場よりも、再び日本市場のほうに魅力を感じはじめているところです。
2022年に資産5,000万円に到達したことを区切りとし、会社を辞めて自分の会社を立ち上げ、副業のYouTuberを本業としつつ他の事業も行う働き方に変えました。その際、株式投資についても、グロース株はそのまま保持しつつ、新たに購入する株式は米国高配当株ETFや個別の米国高配当株に切り替えたのです。
そうした理由は、新しい働き方に合わせ、投資収益をキャピタルゲインからインカムゲインにし、収入の安定を図ることが目的です。また、グロース株投資の頃のような精神的にキリキリした投資は、元来、不安症な自分には合っておらず、続けることの難しさを感じてもいました。
しかし、近年の米国株の株価は加熱し過ぎていて、実は配当利回りはさほど高くはありません。利回り3%に届かないことが多く、買いどきを見出せないのです。一方、日本株はまだまだ割安感があり、手堅く配当利回り3%から4%を狙える市場であると見ます。近年は、株主還元に積極的で配当性向を高めたり、累進配当を導入したりする銘柄も増え、有利な状況が続くと感じています。
結論としては、これから資産形成を最大効率で進めていきたい人は米国市場への投資が有利でしょう。しかし、わたしのようにある程度の資産ができて、投資戦略のフェーズを高配当株やバリュー株など安定志向に移していくにあたっては、日本市場は魅力的であると考えます。
ただし、「ぽんちよがそういっていたからそうする」というのは違うと思います。それなりの成果を株式投資に求めるのであれば、やはり株式投資のメカニズムをしっかり勉強し、自分なりの投資判断ができるようになることが最低ラインの素養であると思います。
ぽんちよ
新卒で就職後、友人に株式投資を勧められて個別株投資をスタート。転職を経て北陸地方でサラリーマン生活と副業のYouTube動画作成に明け暮れるなか、2021年夏に金融資産5,000万円達成。翌2022年3月に会社を辞めてFIREを実現し、現在は資産1億4,000万円を超える。YouTubeチャンネル「【投資家】ぽんちよ」はチャンネル登録者数49万人を突破(2025年10月現在)し、FIREを目指す投資初心者向けに投資・節約・副業に関する情報を発信している。
