消費者としての直感とスクリーニングで資産増を狙う。短期で利益を掴むグロース株投資に必要なポイント

駆け出しの個人投資家にとって、資産形成をスピードアップするための手段のひとつがグロース株投資(成長株投資)だ。しかし、勢いよく伸びる企業を見つけ、その成長のピークで利確することはそう簡単ではない。2018年から本気で株式投資に取り組むようになり、6年で資産1億円を達成したぽんちよ氏は、現在こそ高配当株投資がメインだが、資産形成期にはグロース株投資に取り組んだという。グロース株の探し方や利益をあげるポイントについて解説をお願いした。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟
成長性の高い銘柄を探すふたつのアプローチ
——ぽんちよさんは、資産が1億円を超えた現在は高配当株投資をメインとされているそうですが、資産が1,000万円を超えたあたりからの資産形成期にはグロース株投資を行っていたそうですね。投資初心者が「インデックスファンド以上の成果を挙げて、資産形成を加速させたい」と思うなら、やはりグロース株投資をやるべきだと考えますか?
ぽんちよ:資産形成において、グロース株投資は短期間で大きな利益を得る可能性を秘めており、株式投資をダイナミックなものにしてくれることは間違いありません。でも、だからといって必須ではないと思います。わたしの場合、2010年代後半からのハイテク株の上昇や、2020年代のコロナショック以降の上昇相場で資産を形成できたことが大きな要因であり、グロース株の成否はあくまでも相場次第だからです。
また、投資資金の少なさがネックであるなら、一般的に手堅いとされる銘柄を選び信用取引をする方法もあります。利益率は低くても、元本が大きければ利益は大きくなるからです。ただ、信用取引はリスクの高い行為であり、失敗すれば借金を抱えることになりますから……当然おすすめはできません。
グロース株投資もまたリスクを抱えています。成長を見込んだ銘柄が伸びない、あるいは上昇後に利確を逃して急落するようなケースも珍しくなく、リスクの高い投資であることを忘れてはいけません。ある程度は財務諸表を読み取れるような知識は備えて臨む必要があり、気分ひとつで乗り出せば、どこかで痛い目に遭う投資手法だと考えます。
——知識が求められる難しい投資であることを前提として、ぽんちよさんはどのようにグロース株投資を行ってきたのでしょうか?投資初心者がグロース株投資をイメージできるよう、経験をお聞かせください。
ぽんちよ:わたしの場合は、2軸のアプローチで銘柄を探していました。ひとつは、生活のなかで「伸びそうだな」と感じる企業を探すことです。
2018年頃のわたしの投資事例でいえば、ワークマンとマネーフォワードですね。ワークマンは、日常生活でも低価格のアパレルとして着られる作業着を製造しており、そのポテンシャルを消費者として感じていました。マネーフォワードは会計ソフトのシェア以上に、家計簿アプリとして資産を一元管理できる利便性をユーザーとして実感していたのです。
消費者としての直感で魅力を感じた企業を財務諸表から精査すると、「思ったとおり、売上が伸びている」ということは多いのではないでしょうか。また、事業戦略を見て「そういう戦略だったんだ。ちゃんとかたちにできているな」と、計画と実態の照合もできますよね。財務諸表や決算発表資料を、「答え合わせ」として見ることができるはずです。
もうひとつのアプローチは、スクリーニングです。楽天証券でもSBI証券でも、口座を持っている証券会社のツールで条件設定による銘柄検索が可能です。すべての銘柄をチェックすることは困難ですから、グロース株投資に向いている銘柄を絞り込んで探すというわけです。
スクリーニングの条件設定は投資家によって様々ですが、例えばわたしであれば「売上高成長率20%」など、いくつかの条件で検索をかけて成長著しい銘柄をピックアップします。そして、その業績がこれからも維持・発展できるかを、財務諸表や決算資料で確認していきます。
「時価総額」「売上高」「営業利益」の3ポイントで銘柄を絞り込む
——グロース株のスクリーニングについて、条件設定を詳しく教えてください。
ぽんちよ:わたしがグロース株で重視しているポイントは、「時価総額」「売上高」「営業利益」の3つです。スクリーニングの段階でもそうですし、消費者実感で成長を見込んだ銘柄を精査するときも、まずこの3ポイントを見るようにしています。
まず時価総額ですが、わたしの場合は「テンバガー」と呼ばれるいわゆる10倍成長株を狙っていましたので、銘柄の「成長余地」を考え、時価総額500億円以下を基本としました。例えば、現在の時価総額が40兆円を超えるトヨタ自動車が短期間で10倍の成長をして、時価総額が400兆円になることは考えにくいですよね。しかし、時価総額100億円の銘柄が1,000億円に成長することは十分にあり得ることです。
そのうえで、売上高成長率が20%以上の企業を探します。これは、単年でなく数年継続していることが条件となります。そして、営業利益率は10%以上を目安とします。営業利益は「売上−(原価・人件費・広告費等)」で見ることができ、その企業の「稼ぐ力」を表すものです。営業利益率が高い企業は、他社と比較したときになんらかの優位性があり、稼ぐ力の強いビジネスモデルを持っているはずです。
ただし、この基準は絶対ではなく、その時代の相場環境や業種・テーマによって調整していく必要はあると考えます。例えば、わたしがグロース株投資に積極的だった2020年頃は、先のマネーフォワードのようなSaaS(サース:インストール不要のWebサービスとしてのソフトウェア。月額や年額のサブスクリプション形式が多い)の競争が激しい時代でした。SaaS系銘柄は積極的なシェア拡大のための投資により、営業利益率は低い傾向にあったのです。よって、高い成長性を見越すのなら、営業利益率はマイナスでも売上高成長率が40%を超えているほうが魅力が高く、「買い」でした。
株価というのは、企業の業績だけが指標になるわけではなく、あくまでも投資家の売買によって決まるものです。その当時においては、SaaS銘柄への期待が大き過ぎて、「売上高成長率20%を継続」だけでは投資家から「期待はずれ」とみなされ、株価は低迷する傾向にありました。
ですから、逆のパターンでは相場環境や業種・テーマによって、「売上高成長率10%を継続」という状況でも投資家から高く評価され、株価が上昇する可能性もあり得ます。その勘所を、情報収集と経験のなかで積み上げていくことが大切です。
——スクリーニングした銘柄の成長性を、財務諸表などから精査する際のポイントについてはいかがでしょうか?
ぽんちよ:まさにそれこそが、ここでは簡単な説明が難しく、みなさんが本腰を入れて勉強していく部分であると思います。よって、財務諸表以外のアドバイスとなりますが、わたしは決算短信や決算発表資料の経営環境に関するコメントや、中期経営計画も重視していました。
四半期ごとの決算発表では、財務諸表のような業績数値だけでなく、自社を取り巻く経営環境や具体的な事業の取り組み、今後の見通しとその理由などを企業が言葉を尽くして語っています。特に経営環境については、自社の業績変動に影響し得るマクロ経済視点の要因を語っていることが多く、例えば、原油価格や物価上昇、景気動向、為替動向、地政学リスクなど様々な観点から、自社を取り巻く経営環境を説明しているのです。
正直なところ、自社に都合よくデータを用いているケースもあるのですが……業績に影響するファクターを学ぶうえで勉強になるので、視点を養うためにも、そういった企業が出している資料に目を通すことを習慣づけてほしいと思います。
また、中期経営計画は、おおむね3年ごとに事業の3年計画が打ち出されるのですが、IRページを遡れば過去5年、10年、それ以上の中期経営計画とその結果を閲覧することが可能です。過去の中期経営計画では、例えば「3年後に売上高150%」といったような定量的な目標が掲げられるのですが、それらが実際に達成されたのかをチェックしていました。
過去の計画でも目標達成できている傾向にあるのならば、現在の計画もまた「達成できる見込みが高い」と考え、投資判断に織り込んでいたというわけです。
その他、時価総額の低い「伸びしろ」の大きな銘柄を狙うなら、上場から間もない銘柄は格好のターゲットになります。そのような銘柄では、決算発表や財務諸表とは別に、「チャートがきれいに右肩上がりであるか」も重視していました。よくIPO直後は期待によって高値をつけるのですが、すぐに株価が大きく下落していくケースがあります。そうなると、高値で買った投資家が塩漬けして保有し続けているため、少しでも株価が上向くと売り圧力がかかって押し下げられ、長期的に低迷し続けることになります。そんなリスクを回避するためにも、「右肩上がり」という分かりやすい基準も大切にしていたのです。
グロース株投資の成否は「損切り」にある
——グロース株において、おそらくもっとも重要なことは「損切り」ではないでしょうか。成長が鈍化するなどして損失が出る前に、あるいは損失が大きく膨らむ前にカットすることが重要ですよね。
ぽんちよ:その通りで、それが難しいから、投資初心者にとってグロース株投資はリスクが高いのです。これはもう世界中すべての投資家に共通していえますが、すべての保有銘柄が投資家の期待通りに成長することなどまずありません。例えば、5銘柄買って1銘柄は大きく伸びて含み益を得たけれど、3銘柄は微増で雲行きが怪しく、残りの1銘柄は値を下げはじめてしまうといったことは往々にしてあるわけですよね。そこでしっかり判断し、損失が利益を上回る前にカットして、トータルで利益を確保していくかが大切です。
しかし、そうはいっても、損切りするタイミングはなかなか決断ができませんし、キャリアを積んでも痛みを感じ続けます。ですから、損切りをスムーズに行えるメンタリティを育むことは、グロース株投資を行ううえで欠かせない要素になるでしょう。
——ぽんちよさんは、損切り判断するタイミングをどうしていますか?
ぽんちよ:多くの人は「直近の最高値より◯%下がったら」という基準で判断するはずですが、わたしの場合は日常的な株価の変動はあまり考慮しません。ボラティリティが高い銘柄では、日常的に5%、10%と値を下げることもありますが、中長期的に見て成長するかを重視していたので、短期的な変動は極力気にしないようにしていたのです。もちろん、保有銘柄のスキャンダルや経済的な逆風など、目に見えるなんらかのリスクが大きくなり、大幅な下げが予測されるときは別です。
では、主にどこで判断するかといえば、四半期決算です。株価の変動で損切りをするのではなく、事業の状況や業績から「これ以上は期待できない」と判断したときに損切りをしていました。たとえ現時点では株価が上昇していても、業績から見て今後の成長が期待できないのであれば、いずれ成長が鈍化するか、株価の下落が起こると考えられます。もちろん必ずそうなるとはいえませんが、可能性があるなら先に手放すということです。
——先に重要なポイントとして挙げてもらった、「損切りできるメンタリティ」についてはどうしていましたか?
ぽんちよ:いま保有している銘柄に“執着”してしまうから、手放せないのです。そうであるなら、常に新しい銘柄を探し続け、「次はこれを買いたいな」という銘柄をたくさんストックしておくことをおすすめします。誰だって元本に限りがありますから、元本を使い切っていたら新しい銘柄は買えませんよね?「成長性が期待できない銘柄は早々に売り、その資金で次の銘柄を買いたい」という思いを持ち続けていれば、損切りの痛み以上に、次の投資への期待感が上回るはずです。
——損失のリスクを恐れながらも、ワクワクする気持ちを持つことが大切なのですね。
ぽんちよ:そうですね。グロース株投資は「5倍成長」「10倍成長」を狙うような、欲望が強く出る投資手法といえます。でも、ただ儲けることだけにワクワクして一喜一憂するものではないとも思うのです。投資を通じて、企業のつくる新しいビジネスを一緒になってワクワクすることが大切ではないでしょうか。
新しい上場企業の目新しいビジネスや、未来のビジョンを見ていくと、エネルギーに溢れ、自然とワクワクしてきます。そんな企業を、株式市場を通じて支援していけるのがグロース株投資の醍醐味です。「もっと面白い企業を応援したい」という思いを持って銘柄を探し、自分なりのグロース株投資の手法を見つけていってください。
ぽんちよ
新卒で就職後、友人に株式投資を勧められて個別株投資をスタート。転職を経て北陸地方でサラリーマン生活と副業のYouTube動画作成に明け暮れるなか、2021年夏に金融資産5,000万円達成。翌2022年3月に会社を辞めてFIREを実現し、現在は資産1億4,000万円を超える。YouTubeチャンネル「【投資家】ぽんちよ」はチャンネル登録者数49万人を突破(2025年10月現在)し、FIREを目指す投資初心者向けに投資・節約・副業に関する情報を発信している。
