AI・半導体が変えるわたしたちの未来――注目銘柄から読み解くこれからの投資戦略

AIにより「思考の外部化」が進む現代、問われるのは「人間としての在り方」だと提言するのは、元日本マイクロソフト業務執行役員の澤円氏。AIを支える半導体やデータセンターなどのインフラ、米中の覇権争いなどの動向から、AI時代に必要な企業と個人の戦略までを語ってもらった。
取材・文/辻本圭介 写真/櫻井健司
澤 円(さわ まどか)
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。1997年、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)入社。2006年に、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。2011年にマイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任。業務執行役員を経て退社。現在は、自身の法人の代表を務めながら、大学教員やスタートアップ企業の顧問、セミナー・講演活動など幅広く活躍中。
【特集後半】
証券アナリスト栫井駿介氏に聞く「AI・半導体関連株」入門基本的な業界構造から銘柄選びまで
栫井 駿介(かこい しゅんすけ)
1986年生まれ、鹿児島県出身。つばめ投資顧問代表。東京大学経済学部卒業、豪BOND大学MBA修了。大手証券会社勤務を経て、2016年、つばめ投資顧問設立。現在は500名超の個人投資家を相手に、堅実かつ実践的な長期投資のアドバイスを行っている。YouTuberとしても活動し、チャンネル登録者数は20.5万人(2026年9月時点)。ひとりでも多くの人に長期投資のよさを広め、実践してもらうことを夢見て発信を続けている。
「AI革命」によって思考の一部が外部化された
生成AIやAIエージェントの登場は、コンピューターやソフトウェアの側が人間に近づいてきたという意味で、非常に大きな出来事だといえます。これまでの時代は、コンピューターに複雑な処理をさせようとすると、プログラミング言語を学んでプログラムを書いたり、ツールやコマンドの使い方を覚えたりしなければなりませんでした。つまり、人間の側がコンピューターやソフトウェアに合わせていく必要があったのです。
ところが、生成AIでは、日常の自然言語でやり取りができるようになり、その意図を読み取って必要な処理を行い、結果を返してくれます。さらに、AIエージェントでは、外部のツールやシステムを操作し、実際の処理まで行えるようになりました。
ここが、AI革命の最大のポイントです。つまり、これまで人間が担っていた「思考」の一部が外部化されたということです。それにより、AIが人間の世界に自然な形で入り込み、人間の行動に影響を与えることができるようになりました。また、人間もそれを自然に受け入れて、仕事や生活のなかに組み込むようになったのです。
その意味で、生成AIによって「ITの民主化」が一気に進んだと感じます。普段使う言葉で生成AIに作業をしてもらうことができるため、高度なITスキルや専門的な操作知識が、必ずしも求められなくなったからです。
では、これからなにが重要になるかというと、いわば「人間としてのリテラシー」だと考えています。自分が社会生活を営むうえでAIとどう付き合うのか。AIから様々な情報や選択肢が示されるなかで、人間としてなにを考え、どう判断し、どう行動するのか。そんな「人間としての在り方」が問われるのだと思います。
生活やビジネスにおける様々なプロセスがAIに代替される世の中になればなるほど、「自分はどう生きたいのか」「なにを選びたいのか」「なにを大切にしたいのか」といったことを、自分の頭で考えなければならなくなるということです。
AI時代に重要になる「身体性」と「当事者性」
もうひとつは、人間が「自分の時間の使い方」を再設計する必要があるということです。よく「AIは仕事を奪う」といわれますが、わたしは、AIエージェントによって失われる可能性があるのは、「下積みの期間」ではないかと考えています。初歩的な作業をしながら、いろいろなものを観察して成長していくという「下積み」のプロセスが、一定の判断をしながら自律的にタスクを実行するAIエージェントをパートナーにすれば、経験しなくてもよくなる可能性があるからです。
実際にアメリカでは、AIエージェントなどを活用し、自分ひとりで事業を運営する「ソロプレナー」が注目されています。ソロプレナーは、AIエージェントを使って製品・サービス開発から販売・マーケティング、さらにはアフターサポートまでを自動化しています。
では、ソロプレナーは、他になにをしているのでしょうか? 実は、人と会ったり、仲間を増やしたり、顧客との関係を築いたり、現場に足を運んで世の中のトレンドを肌で感じたりといった、リアルな接点を自ら作っていくのが重要な仕事になっているのです。そうした五感を通じて現実に触れる「身体性」が、AI時代には欠かせない要素になります。
そして、身体性とともに、AI時代に大事になるもうひとつの要素が、「誰がやるのか」という「当事者性」です。多くのことをAIが代替してくれる世の中において、「それでもあなたにお願いしたい」「あなたと一緒にやりたい」と思ってもらえる存在であるということです。
それゆえ、今後は業種・業態問わず、自分自身の考えや個性をアウトプットして、周囲や市場に知ってもらうことも重要になります。いままでは、ある仕事について正しく考え、実行するプロセスの一端を担えば、職業として成り立っていたかもしれません。しかし、「正しく考え、実行する」プロセスのかなりの部分がAIに置き換わるわけですから、やはり「誰がやるのか」という部分を明確に発信していけるかどうかで、大きな差が生まれるようになるでしょう。
つまり、人間は自分のためにもっと時間を使っていけばいいのです。
半導体の進化によりAIは社会のインフラに
AIがここまでのことができるようになった背景には、生成AIの処理に適した半導体、特にGPUなどの進化があります。大量かつ複雑な計算を高速で並列処理できるようになったことで、生成AIが大規模に学習・実行できる基盤が整いました。その進化を担った企業のひとつがエヌビディアです。
