[特集]スゴ腕“億り人”に学ぶ株式投資の心得 ~井村俊哉さんインタビュー~
100万円の元手から本格的に投資を開始し、10年余りで運用益2桁億を突破し、メディアにも引っ張りだこの井村俊哉さん。すべての上場企業の開示に目を通し、徹底した銘柄分析による「αの追求」を信条とするスゴ腕の投資家に、その投資哲学を聞いた。
株式会社Zeppy代表取締役社長
井村 俊哉氏
いむら としや/1984年生まれ。中小企業診断士。大学在学中に株式投資を始め、2011年に元手100万円で本格始動。2017年に通算運用益1億円、2022年には25億円を突破した。一日十数時間を投資に捧げ、上場企業すべての決算に目を通し銘柄を見極める。妥協なき情報収集と精緻な企業分析で、α(超過利益)を追求する。2019年に㈱Zeppyを設立。「すべての人に株式市場の恩恵を」という使命感のもと運用会社設立準備中。
※この記事は2022年10月25日発行のジャパニーズ インベスター115号に掲載の内容を抜粋したものです。
全身全霊で株式投資に取り組み、お笑い芸人から億り人に
―2017年に専業に転向するまで、お笑い芸人と投資家という二足の草鞋で活動されていましたが、そもそもどんなきっかけで株式投資を始めたのですか?
初めて株を購入したのは大学3年生のときで、当時は株で生計を立てることまでは考えていませんでした。その頃はお笑い芸人を目指していて、就職活動もしていませんでした。芸人になるという夢を追いかけるため、株で稼ぐことができればお金の心配をしなくて済むと考えたのが最初のきっかけです。
―本格的に投資を始めてから6年半で運用益1億円、2021年には10億円を突破しましたが、その間の投資スタンスの変化について教えてください。
α(アルファ=超過収益)が多い銘柄に集中投資するというのが私の基本的な戦略で、後ほど詳しく説明しますが、このαという概念を株式投資において最も大事にしています。昔は、はっきりと意識はしていませんでしたが、今振り返ってみるとこの投資スタンスはずっと変わっていません。
今と違うのは、昔は儲かりそうと思うものならどんな手法でも挑戦していたこと。中長期用の保有株を担保に信用取引でデイトレードもやっていました。でも、1年半くらいコツコツ積み上げてきた利益を1回の取引で失ってしまう失敗を経験して、自分には短期売買は向いていないと思い、今は中長期的な視点での銘柄の発掘に集中しています。
最初は自分に合う方法がわからなかったので、いろいろな投資手法をとにかく何でも試していましたが、だんだんと向いている・向いていないがわかってきた。向いていないものは全部捨てて、向いているものだけを残した結果、今のスタイルに仕上がったという感じです。
―それが「α(アルファ)」を追求するスタイルですね。
ここ2~3年でしっくりくる言葉が見つかったので使っているのですが、割安株の発掘とは「αを取ること」。これに尽きると思います。αとは超過収益、つまりマーケットの平均を上回るリターンのことですが、私は「割安」×「成長」×「モメンタム(相場の勢い)」の3つの要素に分解して、その掛け算で生まれるものと定義しています。
たとえば、PER30倍の銘柄が割安かと聞かれたら、割高だと答えるのが普通ですよね。でも、PERが30倍だとしても、向こう数年間で50%の平均成長率を上げる銘柄があれば、これは極めて安いと言えます。この成長性を加味したバリュエーションを、他の投資家が気づく前にいち早く見抜くことが、αを取るための第一歩です。
―決算短信などをざっくり読むだけで、あとはアナリストの意見を参考にしている投資家も多いかと思います。
平日、毎朝アナリストレポートを読み込むほど重宝はしていますが、推奨されている銘柄の株価はすでに上がっていることも多く、鵜呑みにしない方がいいでしょう。私はアナリストよりも抜きん出ていないと大きな利益は取れないと思っていて、上場企業約3,900社の業績や全銘柄の適時開示をチェックし、αが多い銘柄を発掘しています。当たりを付けた銘柄を分析し、αが想定以上に多いことに気づき始めたら、とことん深掘りしていきます。開示資料はもちろん、海外メディアや業界専門誌、SNSなどあらゆる情報を妥協せず収集し、東証で一番詳しいと思える状態に仕上げていきます。1日15時間くらいは株式投資のために時間を費やす日もざらにあるんじゃないでしょうか。
―それだけ深掘りして分析しているからこそ、自信を持って集中投資ができるんですね。
一番αが多い銘柄に一番ロットを張りたいという欲張りな理想があって、東証3,900銘柄の中で1年間に一番上昇する銘柄は当然ながら1社だけ。その1社に一番ロットを投入することができれば一番利益を上げられるということになりますよね。分散すればするほど一番からは遠ざかる。もちろん最も値上がりする銘柄を予見し、その1社でポートフォリオ100%なんて無理な話ですが、究極の目標としてやっています。
すごく攻めてるように聞こえるかもしれませんが、自分の中ではかなり守りの要素もあると思っています。というのも、株価が2倍になる銘柄というのは、本源的な価値からすると半額に見えている銘柄ということです。すでに十二分に安くなっているので、ここからさらに安くなるリスクは低いと思われ、だからこそ集中投資ができています。
―費やせる時間に限りのある兼業投資家の人でも実践しやすい銘柄選びの方法はありますか?
まず、「αを取りに行くんだ」というスタンスで臨むところは同じですが、このαの取り方にもいろいろなアプローチが考えられます。兼業投資家や初心者でもαを取りやすい銘柄の選び方として、ご自身がよく知る業界に注目してみるのはどうでしょうか?
たとえば自身の仕事に関係のある銘柄。よく知る業界の銘柄であればマーケットの関係者よりもαが取りやすいはずです。また、自分が熱を入れて打ち込んでいる趣味があるなら、その趣味に関連する会社を掘り下げてみるのもいいと思います。
―開示情報のチェックにはどのくらいの時間を取ればいいでしょうか?
兼業投資家の方も開示情報はできるだけ読んだほうがいいと思います。ただ、すべてに目を通すのは大変ですから、優先順位をつけるといいでしょう。少なくとも保有中の銘柄については絶対にチェックすべき。もっと時間を費やせるようなら、保有株の同業他社と買い付け候補に入っている銘柄の開示情報も見ておきたいところ。
他にもなるべく多くの開示情報を見てほしいですが、時間的な制約があるなら、日々の値上がりランキングで上位に入っている銘柄の開示情報だけでも確認するのはいかがでしょうか。どんなことが起きると株価が上がるのかというカラクリを知らないと、適当な判断で売買して失敗しがち。開示情報の中身と株価の上昇との関連性をきちんと理解するうえで、この方法は非常に有効です。
―最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
世間では株式投資にネガティブなイメージがあったりもしますが、私は「株式市場とは“欲の浄化装置”である」と考えています。世の中をよくするために投資するなんてきれいごとは言わず、純粋に儲けたいという気持ちだけでいい。その気持ちが転じて株価が上昇することで、上場企業をモデルにしたスタートアップが生まれて新たな事業・サービスを興し、社会を発展させる礎になっているんです。あまり関心がない人も多いですが、我々の年金だって一部は株で運用しているわけですし、株価が上がることはみんなにとってハッピーなこと。胸を張って儲けてください!
記事の全文はジャパニーズ インベスター誌に掲載しています。
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