玉取山の大カツラ
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2024年1月25日発行のジャパニーズインベスター120号に掲載されたものです。
愛媛県と高知県の県境に近い、四国山地の真っ只中にある四国最大クラスのカツラの巨樹です。伊予三島駅から25kmほど山に分け入った四国山地の中、標高1,060m付近にある巨大なカツラです。四国山地と聞くと急峻で険しい山岳地帯をイメージしますが、カツラのある場所は珍しく緩傾斜の続く斜面で、かなり山奥まで四駆の車であれば分け入ることも可能な場所。とはいえ相当な苦労を強いられたどり着くことから、出会えたときの感動もひとしおで、最高の感動を与えてくれる巨樹と言えそうです。
中心部にそびえていた主幹がすでに失われ、幹の中心部にはぽっかりと空間が存在しています。その空間に入り込み、樹の中心部から上を見上げると、周囲の幹がすべて天を目指し高々と伸び、まさにカツラと一体化したような錯覚を覚えることでしょう。カツラの老木らしく数多くのヒコバエが生長し、巨大な噴水のような樹形を形作っており、まだまだ樹勢も旺盛のようです。四国とは思えぬような雪の中、威厳を持って一人じっと立ち尽くす神秘的なカツラと出会えました。付近の山中にはブナの林も数多く残り、南国四国といえども寒冷な気候であることを教えてくれます。
【DATA】
愛媛県四国中央市富郷町寒川山字上猿田
幹周/15.0m
樹高/30m
樹齢/300年以上
愛媛県指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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