残しておくべき老後の現金バッファーは500万円?FPが考える「生活防衛資金」と「暴落クッション」の金額とは

YouTubeチャンネル『井上ヨウスケ / 井上FP事務所』では、生きていく上で欠かせないお金の知識をファイナンシャル・プランナーの井上氏が解説。今回ピックアップした動画では、老後に資産運用をしながら取り崩す場合、現金をどれくらい残しておくべきかを紹介しています。井上氏が示した具体的な数字を見ていきましょう。
結論「500万円」の“内訳”
まず結論として、井上氏は残しておくべき金額の目安は「500万円前後ぐらい」だといいます。根拠となる内訳は、生活防衛資金として約200万円を見ておき、残る約300万円が暴落時の“クッション”。生活防衛資金が200万円と聞くと少ない気もしますが、年金を受給する65歳以降は、現役世代と違って収入が途絶えるリスクがありません。
月々不足する生活費は暴落クッションでカバーできるので、生活防衛資金として現金でプールしておくのは“突発的”な支出。井上氏は高額になりやすい医療費や、自宅の修繕費用などを挙げています。一方で、井上氏が提示した200万円という数字はあくまでミニマムな金額。「もっと手元にお金残したいっていう人は残した方がいい」とコメントしています。
暴落クッションの「300万円」という数字がどのように出されたものかというと、まず生活費と年金のギャップで月5万円くらいが不足。年間60万円を引き出す可能性があり、暴落時に運用資産を取り崩さず5年間乗り切るための「60万円×5年間で300万円」という計算です。
井上氏は「暴落クッションは割としっかり用意しておいた方がいい」とコメント。75歳以降など、自分の判断が難しくなってくるようなステージに入った際は採用できない考え方だとはしつつ、「ある程度しっかり判断できる間はこの暴落クッションは用意しておいてもいいかなと思ってます」と説明しました。
バッファーがある状態でのシミュレーション結果は?
取り崩し開始時に下落相場が入ると、資金寿命が一気に短くなる「順序リスク」に注意しなければなりません。そこで井上氏は、現金バッファーがあるだけでどれだけ資金枯渇率が抑えられるのかシミュレーションしています。前提条件として運用資産2,000万円、毎月の取り崩し5万円、ポートフォリオは株50%と国内債券50%、運用期間30年、現金バッファー300万円・5年分、引き出しルールは「前年-10%の翌年は現金から引き出す」で設定します。
まずは現金バッファーがない状態でシミュレーションしたところ、現金バッファーがなくても30年間資金が枯渇しない確率は91.8%。一方、最初の5年間に大きな-10%の下落が続くケースでは、通常より約3割減の63.1%という結果に。しかし現金バッファーの300万円を投入して再計算すると、5年間で-10%の下落があっても84.9%となり、20%近く破綻確率を回避できるという結果が導き出されました。
井上氏が現金バッファーを5年分と多めに設定したのは、ポートフォリオの過去データに基づいているため。リーマンショックでは下落率-25.15%を記録して回復まで2年5カ月を要し、ITバブル崩壊時には回復までに3年3カ月もかかっています。そこで5年分ほどの現金バッファーを用意しておけば、暴落時にも賄えるのではないかというのが井上氏の考えのようです。
正解のない世界で“自分事”として考える
約500万円という具体的な金額を示しつつ、現金バッファーをいくら残しておくべきかについて「正直これは答えのない世界」と明言した井上氏。「正直将来がどうなっていくかっていうところでかなり変わってきます」と言及し、たとえばインフレ率5%という世界が平気で訪れるようなタイミングでは、現金を大量に持っているとお金の価値は下がってしまいます。
しかし全ての資金を運用に回して定額取り崩しをしていると、まとまったお金が必要になったときに対応できません。また自分で判断ができないほど高齢になり、運用資産に触れられないとなるとなおさらのこと。遠い将来は新しい制度・金融サービスが出ている可能性もあるため、「ざっくりこういう風に考えておけばいいのかなという目安で」参考にしてほしいと語っていました。
井上ヨウスケ
1986年3月15日大阪生まれ、高知県在住。役者の経験を持つ異例のファイナンシャルプランナー。2013年に事務所を設立し、役者時代に培った“話すスキル”を生かして講演を中心に活動している。2019年に開設したお金の知識を学べるYouTubeチャンネルでは、数字だけにとらわれがちなお金の話に“人間らしさ”を加え、「お金に使われず、お金とどう付き合っていくのか?」を中心に発信。著書に『38歳までに受けたい「甘くない」お金の授業』(ぱる出版)、『図解 会社員のためのお金のキホン』(KADOKAWA)がある。
YouTube:https://www.youtube.com/@fpinoue
『井上FP事務所』公式サイト:https://fpinoue.com/
