株式会社酉島製作所 『100年かけて培った技術を武器に、 新しい取組みにも果敢に挑戦』
株式会社酉島製作所
東証プライム/証券コード 6363
118号をご覧になられた皆さまからいただいたご質問にお答えします。
代表取締役CEO
原田 耕太郎
Kotaro Harada
1997 年酉島製作所入社。1999 年取締役 2001年常務取締役営業本部長 2004年代表取締役専務を経て、2006年代表取締役社長、社長執行役員 2023年代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任。
Q1.競合先とその違いについて教えて下さい。
ポンプはよく「心臓」に例えられるように、表からは見えないけれど、社会のさまざまなところで人の暮らしと産業の発展を支えています。その種類は多種多様で、メーカー各社は、それぞれ得意分野を持っています。例えば、インフラ向けの大型・高圧ポンプに強い会社、一般産業で広く使われる標準ポンプに強い会社、水中ポンプや真空ポンプなど特殊ポンプに強い会社などです。
当社は、大型・高圧ポンプを強みとしていますが、中でも海水淡水化プラント向けポンプでは圧倒的な強さを誇ります。世界の競合大手に規模ではかないませんが、自社の強みをとことん磨き上げてきたこと、また意思決定の早さ、変化への適応力、顧客対応力、チーム力など、勝る点はたくさんあると自負しています。
その結果、海水淡水化市場では、中東諸国を中心に北アフリカ、南米、オーストラリアなど世界中で実績を積み重ね、海水淡水化プラント向けの「RO高圧海水供給ポンプ」で2020年版「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」(経済産業省)に認定されました。
Q2.中東諸国以外にインドやアフリカへの進出もありますか?
当社は、1979年にシンガポールに初の海外拠点を開設して以来、アジア、中東、欧州、北米、豪州と、今や全世界にネットワークを広げています。
インドは中国を抜いて人口世界1位の国として注目されていますが、当社は古くよりインドへ数多くのポンプを納めており、そのメンテナンスをお客様のより近くで行えるよう2013年にサービス拠点を設立。現在はメンテナンスだけでなく一部組立てもできるように整備するなど、今後の同国の発展を見据えてさらなる強化を図っています。
また、アフリカにおいても、かねてより海水淡水化プラント向けや地熱発電所向けポンプなどを提供していましたが、近年、エジプトから農地開拓プロジェクト向けに大型案件を受注しました。合計すると、200台を超える大型ポンプを納入することとなり、ここでもまたメンテナンスの需要が出てくることから、サービス拠点を設立したところです。
さらに、2023年度上期にもアルジェリアで海水淡水化プラント向けの大型案件を受注した他、周辺諸国でも新規プロジェクトが進んでおり、当社にとって北アフリカ市場の重要度は増しています。
Q3.脱炭素化への取組みについて、もう少し詳しく教えてください。
当社が貢献できる脱炭素化への取組みは、大きく2つの軸があります。1つは「ポンプの省エネ化」、もう1つは「次世代エネルギー向けポンプの開発」です。
1つ目の「ポンプの省エネ化」とは、当社が製造するポンプにおいて、徹底的に高効率化を追求し、ポンプ稼働による消費電力とCO2の排出を削減することです。これは「ポンプdeエコ」と銘打って2009年度より進めてきた活動であり、さらに2023年10月には、従来より一段と効率を高めた「スーパーエコポンプ」を発売。ポンプの効率規制が厳しい欧州の基準をクリアし、世界最高レベルの効率を達成しました。国内の一般標準ポンプとしては群を抜いており、環境意識の高い企業に向けて今後の受注拡大が期待できるところです。
もう1つは、化石燃料に代わる次世代燃料として期待が高まる液化アンモニアや液化水素向けポンプの開発です。とくに液化水素において、マイナス253℃という特殊な液体を扱う大型高圧ポンプは技術的に難しく、まだ存在しません。当社はこの課題に挑戦するため「大容量・高圧・高効率な液化水素昇圧ポンプの開発」をNEDOの助成事業に提案し、採択されました。今後5年間かけてポンプ開発とモータ開発を同時に進めていきますが、第1段階としてすでに初号機を開発し、2023年度末には実際の液化水素を使っての試験を実施予定です。
日本政府も、水素の活用は国家プロジェクトとして注力しており、当社がいち早く開発を進めることで、水素社会の実現に貢献していきます。
Q4.海水淡水化市場での足元の動きについて教えてください。
直近の動きで面白いのはノルウェーのWateriseという会社が進める「深海での海水淡水化プロジェクト」です。
現在の陸上の海水淡水化プラントでは、海水をろ過するためにRO膜に約500mの圧力で海水を送り込む必要があり、ここで当社の高圧ポンプが活躍しています。一方、深海の海水淡水化システムは、水深500mの深海に海水淡水化プラントを設置し、その水圧で海水をRO膜に送り込むという画期的な発想です。Waterise社は海水淡水化市場のゲームチェンジャーとして注目されており、当社は、深海でつくった淡水を地上に送るポンプをはじめ主要なポンプを独占的に開発、供給する契約を結びました。
深海での海水淡水化プラントは、陸上プラントに比べ、エネルギー消費量を約40%削減、必要な土地を80%削減できるうえ、環境負荷も低減できるなど多くのメリットがあり、夢のあるプロジェクトとして当社もワクワクしながら取り組んでいます。
このように、当社は100年企業として先人から受け継いできた技術をさらに磨きながら、時代の変化に合わせて、新しい取組みにも果敢に挑戦しています。