株式会社ナック 『クリクラ事業やレンタル事業など 「暮らし」と 「住まい」を軸に事業展開』
株式会社ナック
東証プライム/証券コード 9788
代表取締役社長
吉村 寛
Kan Yoshimura
1961年5月生まれ。1984年4月ナック入社。2005年6月取締役 2011年6月常務取締役住宅事業本部本部長 2013年6月専務取締役 2014年6月取締役副社長グループ統括執行責任者を経て、2015年6月代表取締役社長(現任)。
清掃用品のレンタル事業から建築・住宅関連まで展開
フランチャイズシステムというビジネスモデルをご存じだろうか?その代表例がコンビニで、各コンビニ本部が有する商標や経営ノウハウを加盟店に提供し、加盟店は本部にそのロイヤリティを対価として支払うシステムだ。本部の商品やサービスを広く世に普及させ、そのブランド力を確立するうえで重要な役割を果たしているのが加盟店だ。黒子的な立場であるため、その存在に気づいていない消費者も少なくない。
ナックは、1971年にダスキンの加盟店として創業し、1984年にはダスキン加盟店の売上で日本一を達成。今なお全国約1,900のダスキン加盟店の中で売上高・顧客数ともに首位の座を守り続けている。
1992年には、中小零細工務店に対する経営支援ノウハウを提供する建築コンサルティング事業を立ち上げた。さらに2002年には、同社グループ自らが注文住宅の建築請負や分譲住宅の販売などを手掛ける住宅事業にも進出した。
一方、2002年からサービス開始したクリクラ事業では、安心・安全でおいしい水(ボトルウォーター)を約500拠点の配送ネットワークを通じて家庭やオフィスに同社のスタッフが直接届けている。また、クリクラの原水を原料とし、除菌と消臭効果を発揮する次亜塩素酸水溶液「ジアコ(ZiACO)」の製造・販売も手掛けている。
顧客の声に応えることで、次々と多方面に事業が拡大
さて、ここまで紹介してきた事業は、いずれも同社のスタッフによる「Face to Face」による直販(ダイレクトマーケティング)の営業スタイルだ。それらとは異なる販売チャネルとして、同社が2013年からスタートしたのが通販事業だ。ダスキン製品のレンタル事業の顧客は女性が多いことから、取扱商品を女性の関心高い化粧品や医薬部外品、栄養補助食品等にターゲットを絞り、それらの工場を持つメーカーをM&A(企業買収)で傘下に収めることで、より安価で良質な自社製品を提供できる体制を構築。開発から生産、販売までを一気通貫で手掛ける美容・健康事業として業容を拡大している。
同社が展開しているこれらのビジネスは、いずれも顧客の要望や困りごとに応えていった結果として、事業化されたもので、その点では一貫している。
無論、建築コンサルティング事業や住宅事業もその例外ではない。ダスキン加盟店として清掃用具のレンタルやハウスクリーニングなどで顧客と接していると、「子どもが増えたので増築したい」とか、「高齢になってきたのでバリヤフリーにしたい」とった相談が多数寄せられた。
そうした顧客ニーズを中小零細工務店に橋渡しする中で、中小零細工務店のコスト管理手法に改善の余地があることを発見した。従来、同社は比較的安価な商材の個別訪問販売を中心に事業展開してきたため、おのずと厳格なコスト管理体制を構築していた。そして、そのノウハウを中小零細工務店に対する経営支援コンサルティングサービスとして提供することで、予算を抑えつつ良質の住まいを提供できるのではという発想から、建築コンサルティング事業が生まれ、やがて住宅事業へと発展していった。
ライフタイムバリューを高める事業展開を目指す
このように同社は、強固な顧客基盤と柔軟な発想で成長性の高い周辺事業に積極展開した結果、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築している。
その源泉となっているのが、月間90万件以上の定期顧客と日々接することで得られた顧客ニーズの集積だ。それは、顧客の生の声の集積であるため、非常に精度の高いダイレクトマーケティングが可能となり、異業種からのコラボレーション要請が多いことも同社の強みと言えるだろう。
そして、今後の成長戦略として、同社は基板事業であるクリクラ事業とレンタル事業に注力する方針を掲げる。競合先も多いクリクラ事業では、強みである「安全性」を軸に、年1回のサーバーメンテナンスや自社配送などで他社との差別化を訴求した事業拡大を目指す。また、レンタル事業では、2018年のダスキンと総額50億円の資本業務提携により、共働き世代や高齢者世代へのケアサービス関連売上が2.5倍に急拡大した。その提携関係をより強固なものとすべく2023年11月にはダスキンと新たに「共同プロジェクト」を発足させ、さらなる事業拡大と成長による企業価値向上を目指す構えだ。
同社は「暮らしのお役立ち企業」として社会・環境の変化を事業成長の機会と捉えてきた。今後、日本は少子高齢化社会を迎え、顧客の暮らしに役立つだけではなく、生涯に寄り添い、また、世代までも超えた「ライフタイムバリュー」を高める事業展開を見据え、「社会のお役立ち企業」として持続可能な社会の実現と更なる事業成長を目指す構えだ。
そんな同社にとっての最大の課題は、クリクラ・ダスキンをはじめとした各事業ブランドと「ナック」という社名の結び付けである。長く黒子に徹してきた同社が、IR活動や広告宣伝などにも力を入れ、満を持して表舞台に登場することで、今後の同社の動向から目が離せそうにない。