株式会社property technologies『不動産DXを積極的に活用し、中古マンション市場で他社を上回る成長率を実現』
株式会社property technologies
証券コード 5527/東証グロース
代表取締役社長 濱中 雄大
Takehiro Hamanaka

多くのプレイヤーがしのぎを削る中古マンション販売の分野で、全国主要都市への展開と大量の査定データにAI等先端の技術を掛け合わせた「リアル×テクノロジー」を武器に急成長しているのがproperty technologiesだ。蓄積したデータの活用による高い効率性で競争力を高める同社の濱中社長に事業の強みと今後の展望を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
30~40代にターゲットを絞り中古マンションを買取・販売
――御社の事業についてお聞かせください。
当社グループは主に4つの子会社から成り立っています。中核を担うのが売上の約7割を占める株式会社ホームネットで、中古マンションの再生事業を展開しています。株式会社ファーストホームと株式会社サンコーホームはそれぞれ山口県と秋田県に拠点を置き、注文住宅の建築請負業をしています。また、当社グループではデジタルテクノロジーを使っていろいろなソリューションを展開していますが、その運営を担っているのが株式会社カイトリーです。
――ホームネットの中古マンション再生事業とは、どのような事業でしょうか?
中古マンションを買い取り、リノベーションをして販売しています。現在、札幌から沖縄まで全国14の主要都市に拠点を置いて中古マンションを仕入れており、今期でいうと約1,500件の買い取り予定です。この仕入れた物件を販売するうえでターゲットが明確に決まっており、それが30代後半から40代前半の方です。一次取得、つまり今賃貸にお住まいの方たちが初めて家を取得する、ここのゾーンに絞って商品作りをしているというのが大きな特徴です。
物件の平均販売価格は2,400万円ですが、ユニットバスやキッチンといった住宅設備関係は新しいものに入れ替えて、新築同様に仕上げています。リノベーション費用が一部屋あたり400~500万円程度かかるため、1,000万円台中盤の価格帯の中古マンションを全国規模で仕入れています。
――昨今、金利上昇の懸念などもありますが、事業への影響はいかがでしょうか?
先ほど申し上げたとおり、ターゲットとしている方というのは現在賃貸にお住いの方なのですが、全国主要都市の賃貸マンションの平均家賃は約11万円です。ターゲットの年齢が比較的若く、35年の住宅ローンをフルに使えるため、2,400万円の物件を現在の住宅ローン金利0.475%、35年返済で購入した場合、毎月の返済額は6万2,000円。家賃の半分ほどの支払額で中古マンションが購入できるわけです。仮に今後金利が上昇したとしても、10倍近くまで上昇してようやく月々の返済額が現在の平均家賃と同等ですので、影響は限定的です。2,400万円のゾーンに絞って物件を扱っていることで、金利上昇に対するリスクヘッジになっています。
出所:同社説明資料より
――物価高や建材価格高騰の影響はいかがでしょうか?
まったくないわけではないですが、資材や住宅設備に関しては当社グループがメーカーから直接仕入れて全国の施工会社に支給しています。ホームネットで約1,500件、ファーストホームとサンコーホームを合わせて約400件、合計で年間2,000件近くの物件を扱っているため、スケールメリットで単価をある程度抑えることが可能です。
ターゲットとしている30~40代の方々の新しい第一歩となる一次取得を後押しするという社会貢献という意味も含め、2,400万円のゾーンの商品しか扱わないという点は他社との大きな違いです。当社の物件は家具・家電から箸や茶碗といった生活小物まで、すべて含めてセット販売しているのも大きな特徴のひとつで、これらを新たに揃えることなく新築マンションのモデルルームのような快適な部屋で新しい生活を始められます。こうした商品設計が好評を得ており、売上・利益ともに順調に伸びています。
――ファーストホームとサンコーホームを子会社化した経緯について教えてください。
住み替えのたびに不動産売買が生じますが、マンションからマンションだけでなく、マンションから戸建て、戸建てからマンションというケースもあります。そこで戸建てを扱う会社が欲しかったというのが理由です。両社とも10年以上地域ナンバーワンの会社であり、多くの既存顧客を保有しています。不動産の建売業ではなく注文建築業のため、無借金経営であったことも魅力の一つでした。
当社グループはホームネットが14拠点、ファーストホームとサンコーホームを含めて全国に計16拠点を持っています。他の買取再販事業者は東京に集中しており、全国主要都市すべてに出店している競合他社はありません。当社のストライクゾーンである中古マンションを獲得するには情報収集から始まりますから、その情報源となる仲介会社とのネットワークづくりが一番大切です。当社は約4,000社の仲介会社と取引があり、その先には17,000名の営業員の方がいます。このネットワークを活かして昨年度は23,000件の情報をいただきました。この情報量が増えれば増えるほど買い取りおよび販売が増えていく仕組みです。
出所:同社説明資料より
データの活用で優位性を築き、新たなビジネスも展開
――2万件超の豊富なデータをどのように活用しているのでしょうか?
当社は毎年2万件を超える中古マンション査定データを蓄積していますが、ビッグデータを用いた不動産AI査定と組み合わせることによって、最適な買取価格を即座に算出することができます。
これまで査定は、営業マンが他の取得事例のデータなどを参照しながら、5~6時間かけて算出しており、その間は営業活動が一旦ストップしてしまっていました。それがAI査定を導入した結果、約30分にまで短縮できています。仲介会社からの査定依頼に対して他社が提示まで2日間かかるところを当社は30分で提示できるため、グリップ力が全く違います。仲介会社側からすると仲介手数料は3%という上限が決まっていて、正直どこに買ってもらってもあまり変わらない。やはり時間軸として30分で数字を出せるというのは他社にない大きな強みになってきています。
これによって査定にかけていた時間を営業活動に費やすことで生産性が高まり、一人当たりの仕入件数も増えています。同業他社を見渡しても、仕入・販売ともに当社ほど大きく伸長している会社はなく、テクノロジーを積極的に活用してきた成果であると思います。
――今後どのような成長戦略で事業を拡大していく方針ですか?
1つ目がリアルビジネスの拡充と安定的成長です。今期は京都支店をオープンしましたが、今後も積極的に拠点数を増やしていきます。出店計画については候補地の物件情報やニーズなどのデータを踏まえて、ほかのプレイヤーがいないところに出していくつもりです。主要都市以外にもまだまだ成長余地のある都市があることなどもわかってきており、各地域で一人勝ちの状況を築けると思っています。
2つ目がSaaSプロダクトの提供と拡張です。我々の査定スピードに驚いた仲介会社から依頼があり『HOMENET PRO』というSaaSプロダクトの販売を開始しました。現在は約150社へ提供し、ストック収益が拡大しています。それに伴い査定数が急増し、今期は情報量が35,000件までアップする予想です。
3つ目が2021年から開始したポータルサイト『KAITRY』の飛躍的拡大。これはマンション名を入力すれば最短5秒で価格がわかる不動産価格査定サイトです。AIで査定して入居者から直接買い取るiBuyerのビジネスとなっており、早く売りたい人は最短3日間で現金化できますし、セールアンドリースバックのように住みながら売りたい、あるいは半年後に次の家を決めてから売りたいなど、さまざまな売り方をお客様に提案しています。
BtoBに関してはSaaSの提供により仲介会社との関係性を深め、さらなる収益拡大を図り、BtoCに関しては直接買取により原価の安い仕入ができるというメリットが生じます。このBtoB・BtoCの両方を拡大していくことによって今後もさらなる成長を図っていきます。
出所:同社説明資料より
――『KAYTRY』についてもう少し詳しくお聞かせください。
2023年1月からテレビCMを始めたことで認知度が上がり、サイトへの流入数がどんどん増えている状況です。現在は毎月200件程度のAI査定利用があり、5件程度の買い取りが発生しています。おおよその買い取りできる割合がわかってきたので、今後はSNSを使った展開などによってこの200件という分母を増やしていきたいと考えています。
iBuyerが成功するかどうかのポイントは、リアルがあるかないかだと思います。例えば北海道にお住まいの方がサイトを利用しても、北海道に拠点がなければ物件もすぐ見に行けませんし、契約業務のやり取りもできません。今回我々が上場したのがなぜこのタイミングだったかというと、全国主要都市への出店が終わり、iBuyerとしての展開ができるだけのネットワークが構築できたことが理由です。
当社のネットワークが拡大することで活躍するのは、現地の物件、現地の仲介会社、現地の施工会社、現地の金融機関など地方にお住いの方々です。地方都市での取引を活性化することで雇用を生み出し、地方創生の促進に貢献していきたいと思います。