株式会社Rebase『日本最大のレンタルスペースマッチングプラットフォームを展開し、幅広いニーズに対応』
株式会社Rebase
証券コード 5138/東証グロース
代表取締役CEO 佐藤 海
Kai Sato
「場所を探し、使いたい人」と「場所を持ち、提供したい人」をマッチングする「インスタベース」というサービスを展開している株式会社Rebase。創業以来、生産性を最大化することにこだわり増収増益を続けている同社の佐藤CEOに会社の強みと成長戦略を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
経営効率を最大化し、コロナ禍においても増収増益を実現
――御社の事業内容についてお聞かせください。
当社は資本金25万円という非常に小さい金額で始まった会社です。2014年、私と共同創業者の髙畠が日々集まる場所に困っていたことから、場所の問題を解決するサービスを創ろうと考え、レンタルスペースの予約マッチングプラットフォーム「インスタベース」を立ち上げたのが創業のきっかけです。現在このプラットフォームは47都道府県、掲載スペース数27,000件以上へと広がり、会議や打ち合わせといったビジネスユースで使える会議室や、ヨガや撮影などに適したスタジオなど、目的に合わせてさまざまなスペースをご利用いただけます。予約数も月間7~10万件と右肩上がりに増え続けていて、いろいろな人たちの、さまざまな活動を支えるようなサービスになりつつあると感じています。
――新型コロナウイルス感染拡大は事業にどのような影響を及ぼしましたか?
それまで多かったセミナーや研修といった、一つの空間に大人数が集まる利用用途での予約が減少しました。我々はそれを受けて、新しい生活様式に対応できる駅ナカのテレワークブースなどの少人数利用に最適なスペースの獲得や、その獲得を実現するためのシステム開発に注力し、1~2人といった少人数での利用数を最大化できたという変化がありました。コロナ前まではセミナーや研修といった用途は我々の強みとするところでしたが、世の中の変化やそれに伴うサービス状況を鑑みて、機動的且つ柔軟に自分たちの取り組みをシフトしたことが結果として良かったのだと思います。
コロナ禍での少人数利用をきっかけに、「趣味や遊び」といった新しい利用用途や大手企業を始めとした法人利用など、新たな利用者にも非常に多く使っていただけました。直近では新型コロナウイルス感染拡大が少しずつ収束してきたことで、利用人数も徐々に増えてきている傾向があります。今後は、引き続き少人数利用に最適なスペースと、コロナ前から強みとしている大人数利用のスペース、それぞれの掲載や利用を訴求するプロモーションを状況に応じて行っていきます。
――競合他社に対する強みを教えてください。
先ほども申し上げた通り資本金25万円で始まった会社で、資金調達も2017年に1度だけ。自助努力で売上を伸ばし、そこで得た利益を積み上げて投資すべきところに投資する、ということにこだわりを持ってやってきました。金銭的アセットや社員数では他社に勝ちようがないなかで、結果を出すために創意工夫をこらしました。例えば営業に関しても、全国のレンタルスペースをお持ちの方にしっかりアプローチできるようデータベース化し、少ない人員で営業効率および生産性を最大化することに注力してきました。そのような組織構造や戦略が当社と他社の大きな違いだと思います。
今は創業時と違ってコストもかけられるようになりましたが、それでもコスト意識が非常に高い組織だと思っています。コストをかけて自分たちが見込んだ結果が得られるのかどうかの検証は常に行っており、かけたコストに対して効果が見られなければすぐに切る。そのサイクルを回し続けてきたことが、創業から9期連続での黒字に繋がっていると思います。
大手企業とのアライアンスによりさらなるサービスの浸透を図る
――今回の上場を決断した理由をお聞かせください。
新しい商品・サービスが世の中に普及する過程を、消費者を5つのグループに分類して分析した“イノベーター理論”というものがあります。その理論に基づいて考えると、当社のサービスは、情報感度が高く、新しい商品・サービスを積極的に採用するイノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%に普及している段階だと感じています。サービスの成長度合いやユーザー数を見ても、創業当初と比べるとだいぶ伸びてきている感覚はありますが、ほとんどの企業が越えられないキャズム(大きな溝)を超えてサービスを拡大させていくために、社会的信頼を得て、大手企業とのタイアップやアライアンスを進めていこうと考えました。
実際に、上場前と比べて「こういう取り組みを一緒にしませんか」という問い合わせの件数が大幅に増えました。直近では野村不動産様が運営する「H¹T(エイチワンティー)」というサテライト型シェアオフィスの座席や個室を予約できる環境を構築し、4,800件のスペースをインスタベースに掲載して連携を開始しています。今後、レンタルスペースとして掲載できる空間をお持ちの企業様や、レンタルスペースをやっていなかったような大手企業様が一つの事業としてレンタルスペースをやっていく際に連携ができたら嬉しいなと思います。
また、社員から「自分たちは上場企業なんだ」というある種の自信や責任感のようなものを感じるようになり、それも上場による一つの変化だと思っています。
――利用者数は右肩上がりに増えていますが、この傾向はどこまで続きそうですか?
まだまだ続くと思っています。先ほどお話ししたイノベーター理論でいうと、私たちはまだ16%の市場までしか到達していません。残りの84%のニーズがこれから来ると思っていて、そのためにはやはり認知獲得が重要です。例えば街中でコンビニがどこにあるかは歩いていればすぐわかりますが、レンタルスペースはほぼわからないのが現状です。この9年間で3万件近くまで掲載スペースを増やしましたが、いまだに「予約した場所、ここで合っているかな」「あ、ここ写真と一緒だからそうだね」といった感じが大多数。これでは文化にならないですよね。もっと街中でインスタベースや我々の社名のRebaseを見かけて、認識されるような取り組みが必要だと考えています。物件をお持ちの方とWin-Winになる形で認知を獲得していくことは可能だと思っているので、これからチャレンジしていきたいと考えています。
――今後の成長戦略を教えてください。
昨今、空き家問題が社会課題となっていて、その数は全国に約850万戸と言われています。また、空き家に認定されていないけれどもテナントが2~3年入っていない物件もたくさんある。その反面、インターネットやSNSの普及で、例えばYouTuberのような個人がマスに対して与える影響力は大きくなっています。そういう個人が活動しやすい環境を整えていく必要があり、そのために活用するものとしてレンタルスペースほど最適なものはないと思っています。
当社はインスタベースというサービスを展開して10年目になりますが、レンタルスペースの分野において、日本でトップクラスのデータを保有しています。そのため、どこにどういうスペースがあればどのくらいの予約が入るのか、利用が見込めるのかが、かなりの確度でわかります。今後はこのデータを活用した事業展開も検討しています。
また、私たちはもともと自分たちが集まる場所に困っていて、そのためのソリューションとしてインスタベースというサービスを創ったわけですが、個人や少数の人が何かを始めようと思った時、場所以外にもお金であったり、時間であったり、あるいは内面的なものであったりと、大きく分けて8つの制約があると思っています。そうした制約を解消していくサービスを今後展開していくつもりです。
Rebaseという社名は、Git用語「rebase」からヒントを得ました。re(再び)とbase (基礎、土台)から、土台を再構築する、今の時代に合わせた、または、これからの時代に適した土台を再定義していく、という意味を含めています。そして常識だと思われていることでも、再定義が必要なものはアップデートしていくという思いを込めています。
インスタベースは場所の制約を解消するためのサービスですが、我々の実現したいビジョンはそれだけではありません。昨今のスタートアップでは会社名とサービス名を揃えるケースが多いかと思いますが、当社は強いこだわりを持って、さまざまなサービスを展開していくために社名とサービス名を分けました。これからもしっかりと増収増益で利益を出し、新しい事業や取り組みに投下していくことで、さらなる成長を遂げていきたいと考えています。