IT×リアル不動産で不動産のビジネスモデルを革新――株式会社ランディックス 代表取締役 岡田 和也
株式会社ランディックス
証券コード 2981/東証マザーズ
代表取締役 岡田 和也
Kazuya Okada

東京都内の城南6区を中心に不動産の売買・仲介、顧客と建築業者等とのマッチングサービスを展開し、富裕層の顧客から絶大な支持を獲得しているのがランディックス。ITによる不動産業界の革新を狙う岡田和也代表に同社の強みと成長戦略を聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
富裕層のデータベースの蓄積による紹介・リピート率の高さが強み
―― 御社の設立の経緯からお聞かせいただけますか?
岡田 私は小学生の頃から、自分で会社を経営したいと思っていました。小学校の卒業アルバムにも、将来の夢は「社長」と書いています。私の父と祖父も会社を経営していたことがその背景にあると思います。社会人として最初に勤めたのが広告代理店で、いずれはその分野で独立するつもりでしたが、バブル経済が崩壊して同業者が次々と倒産しました。
景気が悪くなると真っ先に削減するのが広告宣伝費ですから、無理のないことでしょう。そうした状況もあって、起業する以上は長く続けられる事業を手掛けたいと考え、衣食住という人々の生活に密着する分野に注目しました。そして、父も経営していた不動産が思い浮かび、この業界でビジネスを立ち上げることを決意しました。
その後、不動産について勉強するために不動産会社に入社。私が担当したのは住宅販売の営業で、お客様ご家族の喜びがダイレクトに伝わってくることにやりがいを感じて頑張っていたら、トップセールスを達成しました。しかし、大手企業の看板の下で活動するよりも、もっと直接的にお客様とつながる形で自分の力を試したいという思いが強くなり、2001年2月に当社を設立しました。
―― 御社のビジネスの特徴と強みについて教えてください。
岡田 当社では、不動産の仕入・販売や売買の仲介、オーダーメイド住宅のマッチング、建築後のアフターフォローといった不動産取引の一連のプロセスに関わるサービスを一気通貫で提供する「sumuzu(スムーズ)事業」を展開しています。当社の特徴であり、強みでもある点として、東京都内の城南6区(渋谷区・港区・世田谷区・目黒区・品川区・大田区)を中心に、富裕層をメインターゲットとして事業を行っていることが挙げられます。
一般的に「家は一生に一度の買い物」と考えられていますが、富裕層のお客様の場合、収益用不動産やセカンドハウスといった目的で複数の物件の購入・比較的短期間での取引を行うことが多く見られます。そうした取引に着目し、オーダーメイド住宅をはじめとしたリセールバリューの高い不動産を提供しており、経営者やスポーツ選手をはじめとした富裕層の1万件を超える累計顧客データを有している点が当社の大きな強みです。このデータベースを活用することで、迅速かつ適切な仕入価格の提示や、過去に当社をご利用いただいたお客様に対する建て替えや投資用不動産などに関する提案が可能になります。
従来の不動産業界は、作って売ってを繰り返すフロー型ビジネスでした。それに対して当社は、1万人の富裕層のお客様の紹介やリピートで売上・利益をあげるストック型ビジネスと言えます。実際に、2019年3月期の成約件数のうち、半数近くがお客様やメーカーなどからの紹介・リピートによるものでした。
不動産業界は景気の動向に左右されやすい業界ですが、富裕層の購入意欲は不況時でも落ちません。実際に、不動産業界が深刻な経営難に見舞われたリーマンショックの際も、当社は利益をあげています。こうした他社には持ちえない富裕層のお客様というストックが、お客様同士の紹介によりさらに蓄積されており、業績の成長にもつながっています。
「リアル×ネット」を推進し、ITで不動産の世界を革新
―― 今後の成長戦略について教えてください。
岡田 不動産業界の市場規模は約43.4兆円に達し、不動産会社の数は約32万社に上りますが、そのうち20万社が資本金1,000万円以下の小規模事業者です。一方で社長の平均年齢は61.5歳に達し、全業種において最高齢となっています。昔ながらの慣習と経営感覚で事業を営んでいるケースも多く、しばしば“旧来型の業界”と言われていますが、当社は不動産の分野でITを活用する「不動産テック」企業を目指しています。すでに「リアル×ネット」の融合への取り組みによる効果も出ており、IT化をさらに推進するための資金調達が今回の上場の大きな目的でした。
取り組みの一つに、自社サイト「sumuzu」の活用があり、ウェブ上で簡単な質問に答えていくだけで好みに合った建築業者やデザイナーを提案する「オーダーメイド住宅マッチング」などの機能を備えています。
また、クローズドな情報が多いというのが不動産業界の実情ですが、当社はこの格差解消を図っています。自社サイトで詳細な売地情報の可視化を行い、積極的にお客様に公開しています。さらに、お客様とのコミュニケーションでもチャットボットによるサポートをはじめとしたネット活用の比重を高め、取引の効率化を図っていく方針です。
前述した通り、当社には対面で得てきた1万人の富裕層のデータの蓄積があり、それが当社の最大の強みだと考えています。そこにITを加えて活用の領域を広げることで、持続的な成長へと結びつけていけると考えています。

―― 事業を取り巻く環境についてはいかがですか?
岡田 現在の城南6区の不動産市況は良好で、住宅公示地価と新築住宅着工件数の推移は、東京都内においても特に高い水準で右肩上がりを描いており、人口も安定的に増加しています。当社が手掛ける住宅の需要が見込まれるこのエリアに引き続き注力し、富裕層のストックを現在の1万人からさらに増やしていくとともに、今後は城南6区以外の23区内の富裕層エリアにも事業を拡げ、将来的には大阪や名古屋など、東京以外の地域にも展開していきたいと考えています。
株主還元については、安定配当を基本方針とし、当面は配当性向10%を維持していく計画です。