さまざまな〝場所〞を時間単位で貸し借りできるプラットフォームを展開――株式会社スペースマーケット 代表取締役CEO 重松 大輔
株式会社スペースマーケット
証券コード 4487/東証マザーズ
代表取締役CEO 重松 大輔
Daisuke Sigematsu

モノやサービスを共有して利用するシェアリングエコノミー。日本でも広がりを見せる市場において、スペース(場所)に着目して事業を展開しているのがスペースマーケットだ。お寺やお城といったユニークなスペースも取り扱う同社の重松大輔CEOに今後の展望を聞いた。
取材・文/山本信幸 写真撮影/キミヒロ
あらゆるスペースを貸し借りできるようにすることで「新しい場所での体験」を提供
――御社が展開している事業について教えてください。
重松 当社は「世界中のあらゆるスペースをシェアできるプラットフォームを創る」というビジョンのもと、住宅、会議室、飲食店といったさまざまなスペースを、パソコンやスマートフォンを使って簡単に貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」を運営しています。人々が何かをしようとするときには必ず〝場所〞が必要になります。そのスペースを借りたい人と貸したい人をマッチングすることで、人々がチャレンジする機会を増やし、世の中をもっと面白くできると考えて事業を立ち上げました。
スペースマーケットには現在、47都道府県の1万2,000件以上のスペースが掲載されています。例えば、急な打ち合わせなどが入ったけれど会議室が確保できないとき、スマートフォンアプリで検索すれば、今すぐ借りられる近くの会議室を予約することができます。
―― どういった用途で利用されることが多いのでしょうか。
重松 パーティー・会議・撮影のご利用が多いです。パーティーは、誕生日会や歓送迎会など食事を手作りしたり、装飾したり自由なスタイルで楽しめることが人気です。例えば、これまではママ友の集まりをレストランでやっても、周りの目が気になってなかなか楽しめないことがありました。レンタルスペースを貸し切ることで、お子様連れでも気兼ねなく安心して使えます。また、大きなテレビが置いてあるスペースで仲間と集まってスポーツ観戦をするなど、目的に合わせたスペースを活用して楽しむという文化が生まれてきています。
少し変わったところでは古民家やお城、お寺といったこれまで借りることが難しかった場所も借りることができます。イベントや撮影会などで利用されていて、ユニークなスペースを利用することで、同じイベントでも新しいユーザー体験を提供できます。

―― 貸し出す側(ホスト)にもメリットがありそうですね。
重松 空き家やビルの空室といった非稼働の不動産はもちろん、飲食店などでも営業時間外に時間貸しのスペースとして活用することで収益につながります。
また、地方には廃校などの公共施設が利用されずに残っています。そのままでは収益を生み出しませんが、レンタルスペースとして貸し出すことで、自治体の収益源となります。例えば奈良県宇陀市が登録している木造の廃校にはイベントや映画の撮影などで年間200件ほどの利用があり、地域の活性化にも貢献しています。昨今、空き家の増加が問題となっていますが、スペースのシェアを普及させていくことで、こうした社会的課題の解決にも寄与できると思っています。
蓄積したノウハウをもとにさらなる利用拡大を目指す
―― どのように収益を上げているのですか。
重松 ゲストとホストの双方から成果報酬という形で手数料をいただいています。ゲストの利用料金を当社が預かり、スペースの利用後に当社からホストへ支払うことで、無断キャンセルのようなトラブルを防ぎ、安心・安全な貸し借りができる仕組みにしています。
シェアリングエコノミーの市場規模をゲスト市場とホスト市場に分けて分析すると、ゲスト市場の外食飲食市場(個人や小中規模のパーティー)だけでも年間25兆円といわれています。その他にも展示会やセミナーといった各種イベントにおいておよそ7兆円規模の市場があります。一方のホスト市場には空き家やビルの空室、飲食店の営業時間外など収益を生みだしていない非稼働市場が10兆円あり、当社のプラットフォームを利用していただくことで、この2つの市場を結びつけることが可能です。
また、賃貸などで収益化している不動産でも、時間貸しにすることでより収益アップが見込めるものがあります。この市場のポテンシャルが12兆円あると試算しており、これまでの賃貸と売買の不動産取引形態に加えて、スペースシェア(時間貸し)という文化を確立し不動産業界の活性化に貢献していきたいと思っています。
―― 見知らぬ人同士がスペースを貸し借りする場合、トラブルも心配です。
重松 個人と個人の取引がメインとなりますので、「大切に使ってほしい」というホストと、「安心・安全に利用したい」というゲスト双方の不安を取り除くため、信頼性を担保する体制に力を入れています。ホスト・ゲスト双方へのレビュー機能を備えることで、利用者が安心してマッチングできるようにしているほか、トラブルがあった際の保険サービスも充実させています。当社はサービスを開始して6年になりますが、そのなかで蓄積してきたレビューや課題解決のノウハウは、他社にはない大きな強みだと思っています。
――今後の展望をお聞かせください。
重松 スペースシェアの概念は広まり始めたばかりでまだまだ拡大が見込めます。引き続き、スペースシェアの文化を当たり前にしていくことに注力したいと考えています。そのためにはまず、ゲストが使いたいと思うスペースが数多く必要になります。価値ある良質なスペースを増やし、働き方や遊び方、暮らし方など、社会のニーズに合わせて利用の仕方を提案していくことでスペースシェアの文化をさらに拡大させていきたいと考えています。
また安心・安全に、なおかつスムーズに貸し借りできることにも注力していきたいと考えています。そのために、パートナーシップ、アライアンス、自社提供等でスペースシェア周辺のソリューションを提供し、貸し借りの障壁となるものを取り除いていく方針です。