シニア層の“終活”ニーズにもマッチした全国対応の「出張訪問買取」で成長――株式会社BuySell Technologies 代表取締役社長兼CEO 岩田 匡平
株式会社BuySell Technologies
証券コード 7685/東証マザーズ
代表取締役社長兼CEO 岩田 匡平
Kyohei Iwata

多くのプレイヤーがしのぎを削るリユース業界で、シニア層が保有する高価格帯商材にフォーカスした出張査定買取サービスで成長しているバイセルテクノロジーズ。独自のビジネスモデルと今後の戦略について同社の岩田匡平社長に伺った。
取材・文/大沢 玲子 写真撮影/和田 佳久
コンプライアンス強化による安心安全な買取サービスを追求
――御社の事業概要および事業を取り巻く環境についてお聞かせください。
岩田 当社では出張買取サービス「バイセル」を中核に、買取・販売の循環を実現する無店舗型の総合リユースサービスを提供しています。買取事業では着物や貴金属、切手といったラグジュアリー商材を中心に、出張訪問査定による買取を軸として日本全国にサービスを展開しています。
販売事業については自社EC「バイセルオンライン」を始めとするECサイトや百貨店の催事を通じた個人顧客向けのtoC販売と、市場やオークションでのtoB販売という多角販路で行っています。
事業環境についてはフリマアプリやインターネットオークションなどの普及もあり、リユース市場の規模は2020年に約2.6兆円、25年には約3.2兆円と順調な拡大が見込まれています。また、個人のお宅でその価値や存在に気づかないまま保有されている“隠れ資産”の国内総額は約37兆円と推計されています。
高齢化社会の進行にともない、不用品や資産の整理といった〝終活〞関連サービスのニーズが高まりを見せていることも当社への追い風と捉えています。

―― 御社ならではの事業の強みについて教えてください。
岩田 一つは全国対応の出張訪問買取サービスを可能とするワンストップ体制です。約100名を配置する自社コールセンターを設置し、査定依頼の各種問い合わせに対応。実際に自宅訪問する出張査定員は約250名を全国10か所に配置し、査定にかかる費用すべてを無料で提供しています。さらに査定時には商材に精通し、専門的知識を有する査定チームとの連携で的確な価格提示を行っています。店舗型では持ち運び困難な着物や切手のコレクションの一括査定・買取に対応できる点も強みに、月間2万件を超える査定を実施しています。
二つ目にシニア層をメイン顧客層としている点が挙げられます。顧客の約75%が50歳以上の富裕層で、サービス利用の理由としては遺品整理、生前整理などのニーズが約60%に上ります。
当社ではご自宅に訪問してコミュニケーションを取りながら、お客様が存在・価値に気づいていない“隠れ資産”にもリーチできる強みを武器に、顧客のサービスニーズにしっかり対応しています。販売時に高単価を確保できる商材を主に扱うことで、リユース市場での他のプレイヤーとの明確な差別化ができている点も大きな特長です。
三つ目は無店舗型で固定費を軽減しつつ、集客としてインターネットに加え、テレビCMを中心とするマスメディアを駆使したクロスメディアマーケティングを展開していることです。特にシニア層はメディア露出による信頼感を重視する傾向が強く、顧客層に最適化した集客で市場拡大を実現しています。
四つ目はホスピタリティとコンプライアンスを徹底した組織体制です。社内に専門教育部門を配置し、出張査定員には顧客満足度を高めるための接遇マナーやコミュニケーションに関する研修を実践。査定時には専門チームとお客様との間での電話による決済確認、決済後のフォローコールも実践し、現場での不正や不安・不満を解消するガバナンス強化に務めています。クーリングオフに関しても法令が定める8日間に対して、自社ルールで10日間を設定し、お客様にとって実効性のあるコンプライアンスを常に追求しています。
訪問時のお客様の心境としては、やはり不安感が大きいのですが、コミュニケーションを通じた安心・安全な買取サービスの提供を心掛けています。今回の上場の目的も、こうした不安感を払しょくするための社会的信用の獲得が大きいものでした。
社会課題の解決に向け企業との業務提携を加速
――業績の推移について教えていただけますか。
岩田 19年12月期は、売上高が128億2,800万円、経常利益は8億1,700万円となりました。今後も売上高については安定的に20%成長を目指し、15年のリユース事業開始から達成してきた増収増益の継続にこだわってまいります。株主還元については配当性20%を目安に、安定的配当を実施していく予定です。
―― 今後の成長戦略について教えてください。
岩田 リユース市場での出張買取サービスの認知度は、フリマアプリや店舗買取に比べてまだまだ低いのですが、そのぶん成長の伸びしろは大きいと見ており、出張買取サービス「バイセル」のさらなる知名度向上を図ってまいります。また、toB販売よりも高い売価が期待できる個人顧客向け販売の比率を高めていくことで、収益の最大化も目指してまいります。加えてITの活用による査定作業の省力化、商品の特性に合わせた海外販路の拡大も図っていく予定です。
また、上場後に加速化しているのが顧客層のニーズに包括的に応える事業領域の拡大と、そのためのシナジーの見込める企業との業務提携です。不要品の売却ニーズのみならず、会話の中でシニア層のお客様から寄せられるご相談は不動産売却や介護、相続など多岐にわたります。こうしたお悩み・ニーズに幅広く応えるためにも、不動産事業者や税理士法人と提携し、事業を展開しています。
当社は、社会全体の流通構造改革の一助となるべくリユース事業を推進してまいりました。今後は上場を機にさらに信頼感ある安心・安全なサービスに注力するとともに、これからの高齢化社会や人口減少といった社会的な課題に対して、総合的なライフエンディング事業で貢献を果たしていく所存です。今後のさらなる進化にご期待いただき、応援していただければ幸いです。