株式投資ビギナーが育休中にデイトレで「億り人」に。ママ投資家・ちょる子の「観察眼」

2011年に240万円を元手に株式投資を開始し、現在では3億円以上の資産を持つ個人投資家のちょる子氏。大胆な投資手法と軽妙な語り口から、YouTubeを中心に人気を博している。とりわけ資産形成期には、産前産後休暇と育児休暇に徹底的な銘柄監視を行い、デイトレードにより3年間で2,000万円を1億円に増やしたという。そんな彼女の投資観と、投資手法を聞いた。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟 写真/塚原孝顕
優待目的の株式投資が7年間で2,000万円に
——ちょる子さんは、出産後の育児休暇の時期にデイトレードから株式投資を始め、復職後は短期投資と高配当株投資で高い実績をあげたそうですね。株式投資を始めたきっかけは?
ちょる子:わたしの父も株式投資をしていて、個人投資家の桐谷広人さんのように、株主優待に面白味を見出すタイプの投資家だったのです。それで、家族分の東京ディズニーリゾートの株主パスポートを得るために、わたしにも「オリエンタルランド株を買っておきなさい」と薫陶を授けてくれました(笑)。
そんなこともあり、2011年に優待狙いでオリエンタルランドに240万円ほど投資したのですが、わたし自身は当時株式投資に興味がなくて放置していました。2017年に結婚し、2018年に夫と「将来のお金のことを考えないとね」と資産計画を立てました。家計簿をつくって支出をコントロールし、NISAの積み立て投資やiDeCoも始め、人生の収支の目処も立ったんです。その段階で、母から「そういえばあなた、株を持っているじゃない」とリマインドされてあらためて確認してみたのです。
2011年に買った240万円分のオリエンタルランド株は、当時、東日本大震災の影響で下落していたこともあり、7年間で約2,000万円に膨れ上がっていました。すでに家族の資金計画はまとまっていたので、「じゃあ、このお金はわたし個人の投資資金として運用するか」と考えたのです。
——株式投資を始めるにあたって、どのような勉強をされたのですか?
ちょる子:株式投資を始めるならしっかり知識は持っておこうと考え、YouTubeで基礎的な勉強をし、雑誌の『日経マネー』と『ダイヤモンドZAi』の2冊を買ってトレンドや投資判断の考え方を見ていました。それが2018年の始め頃で、オリエンタル株を売却したのは10月です。その元手で個別株を買ったのが2019年始めなので、約1年ほどは売買せず、勉強しながら特定銘柄のチャートや数値を追ってチャンスを待っていました。
監視銘柄にしたのは、当時『日経マネー』と『ダイヤモンドZAi』が推していた、東京エレクトロンなどの5つの半導体関連・テック系銘柄です。2019年1月にアップルショックが起こり、半導体やテック系は軒並み下落しましたよね。追っていた東京エレクトロンの配当利回りが5%を超えたので、「ここだ!」と思って2,000万円を東京エレクトロンにオールインしたのです。
「お金を生む資産を持て」という母の教え
——投資ビギナーが2,000万円をオールインするのは、思い切りがよ過ぎるようにも感じます。「少し手元に残しておこう」とは思いませんでしたか?
ちょる子:今後の夫婦の労働収入を踏まえて固定費・変動費を考え、将来に向けた積み立て投資も行っているので「手元に現金を残す意味」を感じませんでした。また、投資家の父だけでなく、母も資産形成の意識が高く、その影響があったと思います。
母にはむかしから、「お金がお金を生む仕組みを持たないとダメ」と教わってきたのです。2,000万円を配当利回り5%で運用できたら、年間100万円の配当が期待できますよね。当時の年収が600万円だったので、2,000万円を現金で持って漠然と安心感を抱くより、ずっと魅力的でした。
いまからすれば、分散投資をしたほうがリスクを抑えられたのは確かです。でも、そこはなんといってもビギナー投資家です。監視対象も5銘柄で、そこまで選択肢を持っていませんからね(笑)。ただ、もともと新聞なども読んでマクロ経済の視点や社会情勢はそれなりに掴んでいて、当時は携帯電話などの5G(第5世代移動通信システム)が新たに展開されるなど、半導体の需要増は明らかでした。同社の先行きにリスクを感じていなかったのも事実です。また、アップルショックも一時的な米中摩擦によるものですから、次第に状況は改善すると見越していました。
育児とデイトレードの両立で「億り人」に
——その後、2019年4月に第一子を、2020年には第二子をご出産され、3年ほどの産休と育休期間でデイトレードをされていたと伺っています。この時期に、資産を2,000万円から5,000万円、そして1億円にも伸ばしていますよね。どのようにして忙しい育児と投資を両立されたのですか?
ちょる子:育児との両立は、ラッキーだった面もあります。というのも、本当によく寝てくれる子で、一日に9時間も寝続けるのです。添い寝をしているときや、抱っこで寝かしているときは他になにもできませんから、スマホを片手で持ちトレードしていました。
もちろん、自分の経験から「子育て期間はトレードをすべきだ!」などとはとてもいえません。産後はなにより休息が大切ですし、もっと手の掛かる育児であれば精神的に疲れてしまい、株式投資で一喜一憂することはいいことではないでしょう。まして、トレードに夢中になって子どものトラブルに気づけない……なんてことがあったら大変です。
わたしも始めのうちはメンタルを疲弊させないよう売買はせず、ただチャートを見て勉強していました。2019年はアップルショックに続き米中関係が緊張していましたから、トランプ大統領のTwitter(現・X)の発言ひとつで先物もインデックスも大きく変動するのを見ていたのです。そのうち、「この値動きはチャンスじゃないかな?」と思い、オールインした2,000万円分の東京エレクトロン株を元手に、信用取引でデイトレードを始めたというわけです。
——その頃はどんな銘柄を買っていたのですか?
ちょる子:東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテック、アドバンテストなどの半導体銘柄、そして、値動きが大きて利益を取りやすい値嵩株(株価水準が高い銘柄)です。任天堂やキーエンス、ファーストリテイリングなどの大型株をリストに入れ、これらの値動きをずっと眺めながら売買のチャンスを探っていました。
これらの銘柄は、1株あたり157円の値幅(利益)を稼ぐ想定で選びました。というのも、『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)などのベストセラーで知られる本田健さんの書籍で読んだ「30代で年収3,000万円」に憧れを持っていたからです。年収3,000万円という年収は、自己研鑽によってハイキャリアで稼ぐか、ストックオプションや投資によって稼がないと到達できないものです。せっかくなら、株式投資で目指したくなりました。
デイトレードでそうなるには、1株あたり157円の値動きを1,000株単位で掴み、1日の利益を15万7,000円とすると想定しました。年間の市場開場日数で乗算すると、税金を差し引いても約3,000万円の利益になります。ですから、それ相応の値動きをする銘柄を求めたのです。
——実質的な投資キャリアは短く、ましてデイトレードにおいてはビギナーだったわけですよね。短期間で1億円もの資産形成に成功した理由をどう考えますか?
ちょる子:ずっとチャートを追っていると、銘柄ごとの特性が見えてきます。ディスコと任天堂、キーエンスは当時まだ日経平均採用銘柄ではありませんでしたが、日経平均株価やTOPIX、為替相場(ドル円)などと連動した値動きをすることが見えてきました。自分で理解できない特異な動きをする銘柄ではなく、経済情勢に対する反応が予測しやすく、また日経平均の値動きに追随する可能性も見通せるので、予測しやすい銘柄でした。
すると、「どういう状況でボックス相場(一定の上限と下限の価格範囲内で上下を繰り返す相場状況のこと)になりやすいか」といった値動きの傾向がわかってきますし、過去の値動きが再現されやすい銘柄かも掴むことができます。投資ビギナーなりに、そうしたデータと経験則を活かしたことが成功につながったと考えます。
とりわけ、わたしの場合は経済ニュースや国際情勢を見て、リアルタイムで値動きをチェックできたことが自分の性格に合っていて、記憶や印象に結びつけやすかったことが大きな優位性だったと思います。そのうえで、投資系YouTubeやアナリストのSNSアカウントなどで、その日の値動きの要因を復習していました。
女性の「共感力」は相場を読み解く強みになる
——育児休暇を終えて職場復帰されてからは、デイトレードから高配当株投資や短期投資に切り替えたそうですね。やはり、本業との両立の難しさからでしょうか?
ちょる子:そうですね。2021年11月に職場復帰したのですが、部署異動があり、セールス部門から社内で花形のマーケティング部門に移ったのです。誇らしい気持ちでしたし、「新しい部署のみんなと上手くやっていきたいな」と意気込んでいました。
そんななか、よりによって最初の挨拶をするリモート会議の最中に、中国の不動産大手、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)がデフォルトしたニュースが流れ、鉄鋼需要の激減予測から鉄鋼株が急落したのです……。
当時、わたしはJFEや日本製鉄を保有していたので、内心はパニックです。これは本来よくないことですが、リモート会議中、無理に笑顔をつくり会話をしながら、こっそり損切りをしました。そのウンザリした体験と、本業に集中して取り組みたい気持ちから、デイトレードから手を引くことにしました。それからは、デイトレードで積み上げた1億円が大きく増え、現在は高配当株に1.6億円、未上場株を対象とする投資信託と不動産デジタル証券に3400万円、先物口座に5000万円のほか、現預金2600万円超で運用しています。
——ありがとうございます。現在の投資スタイルとノウハウについては、次の記事でお伺いしたいと思います。最後に、子育てをしていること、また女性であることが株式投資にメリット・デメリットになる点があればお聞かせください。
ちょる子:子育てと株式投資の関連性はまだわからないのですが、「女性であること」の優位性は実感があります。それは、「共感力」です。
株式市場は、投資家の心理で動いていますよね。ある企業が画期的な製品を出すなど、投資家の期待を集めそうな材料を投下したとき、「これはヒット商品になる」とか「企業のブランディングとして間違いない」、あるいは「その施策は、ちょっと違うんじゃないのかな」という繊細な読みにおいて、女性は強いと感じます。
もちろん、これは主観的な話であり根拠に欠けます。しかし、わたし自身が過去のデイトレードにおいても短期投資においても、必ずしもファンダメンタルズやテクニカルのロジックだけではない「予感」のようなもので判断してきたことも事実です。
特に、マーケティングやPRが本職になってからは、PRパーソンとしての「消費者にウケる/ウケない」の視点と、投資家としての視点の両面で企業の材料を見ているのですが、投資家視点だけよりも精度が高まった実感があります。その意味で、女性の「共感力」もまた、市場を読む力になると考えます。
——逆に、注意するべき傾向はありますか?
ちょる子:女性として注意すべき点は、「感情に引っ張られやすい傾向」ではないでしょうか。ひとつは株価が暴落したときのメンタルヘルスの問題です。ですから、先の通り、産休・育休中の投資には十分に気をつけてほしいですね。もうひとつは、感情的になることで、下落時の損切りが遅れることです。「自分が判断を間違った」ことを早々に認めて、冷静に対処をすることが求められます。
ジェンダーバイアスの強い回答になってしまったのですが、これは、あくまで女性であるわたし自身の体験に基づく考えです。ですから、男性でも共感力の高い方には強みがあると思いますし、感情的になりやすい方は注意が必要でしょう。
わたし自身は「大きく張る」タイプの投資家ですが、不安がある方は、まずは小さく投資を始めること。それが大事だと思います。そうして経験値を高め、大きなトレードに育てていきましょう!
ちょる子
父親の影響を受け、2011年に240万円から株主優待を目当てに株式投資をスタート。2019年から産休・育休をきっかけに、大型株のデイトレードを開始。職場復帰後の2022年までに資産1億円を達成し、以降は短期投資と高配当株投資に移行。2025年には資産3億円を突破した30代の兼業投資家であり、育児に励む2児の母親でもある。現在はPRやIR関連の仕事も手掛けながら、投資関連のメディアにも多数出演。
