100万円→500万円→1,000万円。資産形成の各ステージで立ちはだかる"心の壁"の乗り越え方

節約・投資系ユーチューバーとして各メディアで活躍する「くらま」氏の資産形成は、投資の運用益だけでなく、ハードな節約生活による元本の追加投資によるものが大きい。現在、7,000万円の資産を持つくらま氏は、自身の体験、そして同じく資産形成を目指す人々を見たなかで、金融資産における「100万円の壁」「500万円の壁」「1,000万円の壁」の存在を感じたという。資産形成における壁と、その壁を乗り越えるためのマインドについて語ってもらった。
構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟 写真/石塚雅人
金融資産「100万円の壁」「500万円の壁」をどう乗り越えるか
——著書『すごい貯蓄 最速で1000万円貯めてFIREも目指せる!』(KADOKAWA)のなかで、資産形成を目指す人が直面する「壁」について語られていますね。まずは、人生の分岐点となる、金融資産「100万円の壁」を乗り越える重要性についてお聞かせください。
くらま:100万円という金額は、より大きな資産形成を目指す人や、既にある程度の資産をつくった人からすれば、端数のような額かもしれません。しかし、この最初の金融資産100万円を貯められるかどうかが、「資産形成できる人間」かどうかの分水嶺だと考えます。
「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年・金融広報中央委員会)」によると、調査対象の20代〜70代までの単身世帯2,500世帯のうち、1,216世帯(48%)が金融資産保有額100万円未満という厳しい調査結果が出ています。なお、二人以上世帯では、調査対象5,000世帯のうち金融資産100万円未満は1,665世帯(33%)です。
そうした家計状況の人のなかには、借金や病気を抱えている、または、シングルで子育て中であるなど、止むに止まれぬ事情がある人もいるはずです。しかし、そういった事情もないのであれば、節約をすれば100万円の貯金など難しくありません。そう言い切れる理由は、わたし自身の社会人1年目の経験にあります。月々の奨学金返済があるなかで、約20万円の月収といくばくかの副業収入、そしてハードな節約生活によって、1年で奨学金300万円を完済したのです。
酒や嗜好品を控える、外食を減らして自炊する、無駄遣いをしない。月収で20万円、30万円あるなら、それくらいの軽度な節約でも貯金や投資元本として100万円は確保できるはずです。それができないのは、単純に「節約をしていない」、あるいはせっかく30万円〜50万円程度が貯まっても「節約意識を維持できない」ことで支出してしまうからでしょう。ですから、「100万円の壁」というのは、壁でもなんでもなくて、そもそも「本気で資産形成をする気があるか」ということに過ぎないと思います。
つまり、この「100万円の壁」の本質は、「お金に振り回される側」から「お金をコントロールする側」へとマインドをシフトできるかどうかの分水嶺なのです。100万円を自力で貯められない人は、仮に投資に成功して500万円を手にしても結局は取り崩してしまうでしょう。だからこそ、資産形成には節約マインドを身につけることが大事です。
——金融資産「100万円の壁」を突破すると、次は「500万円の壁」があるということですが、確かに先の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、貯蓄額の中央値は30代238万円、40代300万円、50代400万円(いずれも二人世帯以上)となっています。なぜ、多くの人が300万円前後で金融資産が停滞してしまうのでしょう?
くらま:結婚して子どもができて住宅ローンや教育費もかかって……と、シンプルに支出が増えたために貯蓄が進まなくなる面はありますよね。
そういう人も、例えばスマホを格安SIMに変えたり、家賃を数万円下げたりするだけでも年間数十万円の節約になります。「収入の◯%を給料日に先取りして貯蓄(投資)する」など手段の強化が必要かもしれませんが、節約の努力を継続すれば、500万円の壁も必ず超えられます。
ただ、それとは別に、個人のマインドの変化があるかもしれません。単身者の20代や30代前半なら、300万円も貯金や株式を保有していたら、お金持ちではないけど「ちゃんとしているね」と評価される金額ですよね。
ですから、30代で資産形成のために頑張って節約して貯蓄や投資に励んでいた人も、金融資産300万円あたりで油断してしまうことがあるのです。「自分は頑張っているから、少しくらい贅沢してもいいだろう」という心理が働いてしまい、外食が増えたり、家賃の高い物件に引っ越したり、サブスクを増やしたりしてしまうような、小さな支出が増えがちです。
その結果、貯蓄や投資資金が増えづらくなり、かといって危機感を覚えるほどの破綻もしない停滞にハマってしまうという流れです。そこから抜け出すためには節約意識をリマインドし、固定費などを徹底的に見直すことが重要でしょう。
余裕とステータス意識が生み出す金融資産「1,000万円の壁」
——金融資産500万円を突破すると、次は「1,000万円の壁」があるということですが、どのようなマインドの変化や落とし穴がありますか?
くらま:金融資産が500万円を超えて700万円、800万円……ともなると、周囲からは「お金を持っている人」として扱われはじめます。婚活市場では「堅実な人」とみなされますし、田舎の親戚からは「空き家を買わないか?」と相談の電話がくるような金額といえます。
問題は、その優越感に自分自身が飲まれてしまうことにあります。金融資産が800万円ほどにもなれば、世の中の資産の中央値は300万円なのですから、「これだけ資産のある自分なら、これくらいのものは買っていいだろう」と調子に乗ってしまい、いい車を買ったり、家のローンを組みはじめたりする人が多くなります。
つまり、「節約意識」から「ステータス意識」にシフトすることで、資産形成がマイナスに転落するということです。お金があることによる「余裕」が「傲慢」を生み、借金という負債を抱える原因になるという、非常に危険な分岐点といえます。実際、わたしの知る範囲でも、この資産額でフェードアウトしてしまう人は多くいます。
「傲慢」という厳しい言い方をしましたが、他人よりお金を持っているから、いい車を買う、頭金が十分だから家を買うということは、「普通」のことでもありますよね?だからこそ、多くの人は金融資産が1,000万円を超えることがないのです。
——逆に考えると、金融資産が500万円を超えてもなお節約体質を貫くことができれば、金融資産1,000万円はもう目前ということですね?
くらま:その通りです。ここで借金をせずに、お金をコントロールし続けた人だけが1,000万円に到達するのです。そして、1,000万円を達成すると、これまでの資産形成のペースが加速します。株式投資における元本が大きくなるので、リターンや複利の効果が目に見えて大きくなるからです。また、節約体質が身に染みているため、金融資産で2,000万円、3,000万円と収入が増えても支出はたいして変わりません。
その結果、資産のグラフが右肩上がりの直線ではなく、曲線的に「爆発」します。この段階に入ると、資産形成のプロセス自体が楽しくなると思います。わたしの場合も、金融資産2,000万円や3,000万円は単なる通過点に過ぎず、節約と投資をただ粛々と行っていました。ですから、もっとも大変なのは金融資産500万円の壁、同じく1000万円の壁を超えることにあり、そこまでいけば、「目標額の達成を楽しむ」という心境が待っているものと考えます。
お金の「器」を広げ、資産形成の可能性を高める
——金融資産100万円、500万円、1,000万円と、どの壁を突破するにも、お金に対する感情をコントロールし続けるマインドセットが不可欠だと感じました。総括をお聞かせください。
くらま:「お金の器は人格、知識、行動で決まる」というのが、わたしの持論です。お金の大きさに対してマインドが見合わない器であると、トラブルや大きな失敗の原因になり得ると考え、いつも自分を戒めているのです。
まず、人格面では、お金を持ったからといって傲慢になったり、見栄を張ったり、他人を軽んじたりすると必ず転落します。お金を持っていても、謙虚な姿勢を忘れず、道徳心や理性を持って行動することが長期的な資産形成には不可欠です。調子に乗っていると、お金を狙った悪い人脈を呼び込みかねません。
次に、知識です。資本主義社会のルールを理解していなければ、お金を貯めることはできても、増やすことができません。株式投資はその最たるものですし、無駄な支出を避けるのにも知識は必要です。資本家になるための長期的展望と知識がなければ、「この年齢ならこれくらい持っているべき」というような世間の常識に迫られてお金を失います。
最後に、行動です。知識があっても、行動しなければなにもはじまりません。多くの人は、「お金がほしい」といいながら、種を蒔く行動をしないようです。節約での貯金も株式投資も、時間をかけてインパクトのあるボリュームに育てていくものです。勉強だけでなく、今日から一歩踏み出す行動力が、将来の資産を築くのではないでしょうか。
——くらまさんご自身は、次にどのような「壁」を意識されていますか?
くらま:現在の資産は、株式などを含めて7,000万円に到達していますが、次の目標はやはり「1億円」です。金融資産5,000万円までは、お金を貯めること自体が楽しくて、ゲーム感覚で乗り越えることができました。しかし、「1億円の壁」は特殊な領域かもしれないと感じています。
「資産が増えても節約志向を崩さない」ことをこの取材ではお伝えしてきましたが、おそらく普通は金融資産が5,000万円を超えたら、「もうこれくらいで十分だ」と思うのではないでしょうか?そもそも一般的な仕事をしている人は、生涯で「資産1億円を保有する」という発想を持たないですよね。
わたしが当然のように「1億円を目指すぞ!」といえるのは、金融資産が2,000万円の段階で、「1億円さえ通過点として目指す」という目標を掲げ、意識してきたからです。やはり、心のどこかに「もういいんじゃないか?」という思いもあるのです。わたしのYouTubeチャンネルの視聴者さんはご存知ですが、わたしの節約生活は常軌を逸していますから、なおさらです。
東京大学への入学を目指して受験する学生は、なんとなくでは絶対に合格しません。「東大に入る!」と本気で信じて常軌を逸した勉強をするからこそ、合格するのだと思います。もしかしたら、「1億円を目指す!」というのは、東大合格の世界に近いものがあるのでしょう。このまま迷いなく、覚悟と意志を持って金融資産1億円を突破したいと思います。
くらま
節約系ユーチューバー、東京都在住のファイナンシャルプランナー資格を有する会社員。社会人1年目でひとり暮らしをしながら徹底的な節約生活を開始し、奨学金300万円を完済。そのストイックな節約生活や資産運用のノウハウを解説するYouTubeチャンネル「倹者の流儀」を運営し、2025年8月現在チャンネル登録者数は36万人を超える。著書に『すごい貯蓄 最速で1000万円貯めてFIREも目指せる!』(KADOKAWA)がある。
