◇ 2026年5月期 業績予想:通期は売上高330億円・営業利益44億円・純利益31億円を据え置き、1Q進捗は利益で約4割と順調
通期は「中期経営計画2026」の最終目標と整合、第1四半期進捗は営業・純利益で4割弱と順調である。
通期見通しは、売上高330億円、営業利益44億円、親会社株主に帰属する当期純利益31億円、1株当たり当期純利益240.06円を据え置きである。この水準は、同社が2025年7月に修正した「中期経営計画2026」の最終年度目標(売上高330億円、営業利益44億円、純利益31億円、営業利益率13.3%、ROE10.0%)と整合しており、指標面の一貫性が確認できる。第1四半期実績は売上高90.86億円、営業利益17.12億円、親会社株主に帰属する四半期純利益11.93億円で、通期計画に対する進捗はそれぞれ約27.5%、38.9%、38.5%と堅調である。配当は中間60円・期末60円の年120円を継続予定で、変更なし。
成長ドライバーは二点である。第一に、ディスクロージャー需要の高度化に対応したWizLabo群の強化と顧客基盤拡大であり、前期は増収を牽引したと会社は説明する。またEDINET高度化やIFRS適用、和英同時開示義務化など制度面の追い風も中期的追随要因となる。第二に、宝印刷×ErudAiteによるAIファイル翻訳の提供開始で、従来の10分の1以下の納期短縮を訴求しており、IR英文開示ニーズの取り込み余地がある。「タカラコンパス」による見込客獲得・啓発の取り組みも補完的に働く。
一方、リスクはAI進展によるノウハウ陳腐化、IPO・ファイナンス件数減少に伴う不定期案件の振れである。これに対し、同社はAI技術の迅速な取り込みや製品機能拡充で競争優位を維持する方針を明確化している。資本政策面では自己株式の報酬活用や筆頭株主の変動があったが、現時点で業績見通しへの影響説明は特段ない。
第1四半期の利益進捗が通期計画に対し約4割と高く、計画の達成確度は現時点で良好とみる。制度対応需要とAI翻訳等の新商材が寄与すれば上振れ余地も意識されるが、IPO市況の弱さが長引く場合は不定期案件の波乱要因となる点を注視したい。
◇ 株価動向と今後の注目点:年初来高値4,355円(9月29日)を試す展開。イベント同発なら上放れ、平常時は4,000円台の押し目を狙う
同社の直近の株価は、8月末終値3,955円から9月末4,240円へ+7.2%上昇し、9月29日に年初来高値4,355円を記録して引けは4,240円。出来高は同日6.99万株と増加し、高値圏でのエネルギーを伴う上値試しとなった。9月1日は4,055円(前営業日比+2.53%)、9月4日は3,960円(同▲1.37%)、9月26日は4,250円(同+2.04%)で、イベント同発時に素直な値動きが確認できる。バリュエーションは予想PER17.1倍、実績PBR1.7倍、β0.54、時価総額547億円、ネットキャッシュ189.37億円。利益計画の達成度・資本政策の具体化が続けば収益面(PER)での再評価余地を意識しやすい。
材料と株価の相関では、①「タカラコンパス」始動(9月1日公表)後、終値は4,055円(前日比+2.53%)とポジティブ。②役員等向けの自己株式処分(9月4日公表、2,300株・処分価額3,830円)は、翌営業日にかけ小幅安(3,960円、▲1.37%)と中立。③筆頭株主の異動(MIRI Capital Management LLC、議決権比率11.02%)開示の当日9月26日は4,250円(+2.04%)と買いで反応した。また、AIファイル翻訳サービスの提供開始(8月8日発表)は、英文開示の高速化という構造テーマで評価素地を拡げる。
テクニカル面は、4,000円近辺が支持として機能(9月4日安値3,960円→9月5日終値3,995円→9月8日終値4,020円で切り返し)。直近レジスタンスは4,250〜4,355円帯で、出来高を伴うブレイクが次の上値余地を開くサインとなる。市場の評価は、低β・厚いネットキャッシュというディフェンシブ特性を織り込みつつ、成長投資(AI翻訳、オウンドメディア)とガバナンス圧力(筆頭株主の変化)に期待を乗せる格好と整理できる。
オーバーウェイト判断が広がる条件は、①資本政策の明確化(自己株式取得や最適資本構成の方針)、②AI翻訳・英文開示支援のKPIと収益寄与の開示、③受注/ARPAの定量拡大、④上期決算での上方修正のいずれか。投資タイミングは、ニュースと出来高が同時に立つ局面での高値ブレイク追随、平常時は4,000〜4,100円帯への押し目で積み増しを基本としたい。
イベントドリブンに反応する地合いが続く。直近はレジスタンス帯の売り圧力をこなしつつ、材料同発時の出来高拡大が伴えば評価切り上げが見込める。平常時は4,000円近辺の押し目活用で、次の定量開示(資本政策/AI関連KPI/決算)待ちのスタンスが現実的である。
会社概要
◇「開示、言語」二軸で堅実成長、2026年5月期第1四半期の売上構成は開示約75%・通訳翻訳約25%
株式会社TAKARA & COMPANYは、上場企業の開示支援と通訳・翻訳を二軸に据えた東証プライム上場の持株会社。会社の起源は1952年の創業に遡るが、設立は1960年4月である。連結従業員数は1,245名(2025年5月31日現在)で、ディスクロージャー関連事業886名、通訳・翻訳事業318名、持株会社41名という体制を敷く。
事業モデルは、①金融商品取引法・会社法に基づく法定開示書類(有価証券報告書、招集通知等)や任意開示(統合報告、IR/ESG)等の制作・運用を担うディスクロージャー関連事業、②会議やイベントの通訳、文書の翻訳・ローカライズ等を提供する通訳・翻訳事業の2セグメントから成る。グループは持株会社形態で、売上10%超の主要子会社として宝印刷株式会社と株式会社サイマル・インターナショナルを擁する。これにより「開示支援の制作体制」と「言語サービス」の補完関係が確立され、顧客企業の英文開示や海外IR対応まで幅広くカバーできる産業特性を有する。
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