銀杏ノ木窪の大銀杏

写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2015年10月25日発行のジャパニーズインベスター87号に掲載されたものです。
実はこのイチョウ、10年ほど前までは名無しの権兵衛さんでした。これだけの木でありながら独自の名称が無かったのです。地元の方は「イチョウの木」と呼んでおり、ちょっと大きめのイチョウ程度にしか考えていなかったのかも知れません。
ようやく8年前、階上町の文化財指定を受ける際に現在の名称が決まりました。
字名の銀杏ノ木からも連想できますが、このイチョウには地域のシンボル的な存在として古くから親しまれてきた歴史があります。垂れ下がる数多くの気根が乳に似ていることから、乳飲み子を持つ母親からは特に敬われていたようです。
全国各地のイチョウの中でも樹形の良さでは出色の一本でしたが、2011年の大風によって気根を垂らした特徴的な大枝が折れてしまいました。折れた大枝は、現在もそのままの状態にされており、敢えて人の手は入れていないように感じられます。氷河期をも生き抜いてきた生命力旺盛なイチョウのこと、折れた枝は未だに枯れずに新たな芽を吹き出してきている状態です。おそらく数百年後には、折れた枝から生長した枝達がお互いに癒着しつつ成長し、ついには主幹にまで癒着したならば、それこそとんでもない規模のイチョウになることも予想されます。私が生きている間に見ることは叶いませんが、どのような成長を見せてくれるのか期待して待つことにしましょう。
【DATA】
青森県三戸郡階上町道仏字銀杏ノ木
幹周 13.28 m
樹高 27 m
樹齢 1000 年
階上町指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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