第99回『個人投資家のための会社説明会 in 大阪』開催レポート

99回目を迎えた今回は、株式会社アサンテ、新田ゼラチン株式会社、ミアヘルサホールディングス株式会社の3社を招いて開催した。
株式会社アサンテ
多様な価値提供形態を有する家屋の問題解決プロフェッショナルに

株式会社アサンテ(証券コード6073/東証プライム)は、木造家屋を守る「シロアリ防除」「湿気対策」「地震対策」の3つのサービスを事業として展開しており、住宅用シロアリ防除では国内トップシェアの地位を確立している。これまでは主に東日本から近畿で事業を展開してきたが、2021年以降は中国・四国地方に5つの営業所を開設。宮内征社長は「営業エリアの拡大を図り、全国展開を図っていく」と長期目標を示した。
主力事業のシロアリ防除は主に訪問販売で新規顧客を開拓。保証期間の5年間は毎年定期点検を行うことで顧客と密にコミュニケーションをとり、関連サービスについても提案をしながら、リピートを獲得し、顧客ストックを形成している。また、事業の特徴として、顧客の8〜9割は広域提携しているJA経由で獲得し、そのほかにも生活協同組合や工務店など700社と提携し、安定的に契約を増やしている。直近5年間の売上高は140億円前後で推移しており、コロナ禍期間に落ち込んだものの、現在は回復基調にある。2025年3月期の上半期は売上高78.4億円(前年同期比3.0%増)、営業利益11.5億円(同32.6%増)の増収増益で、「提携先の拡充など取り組みの成果が着実に業績に反映されつつある」と手応えを得ている。
シロアリ被害の実態調査によると、木造家屋の3軒に1軒がシロアリ被害に遭っており、神・淡路大震災時の調査結果によれば、シロアリ被害の進んだ家屋の全壊率は9割以上で、そうでない家屋と比べ約4倍であることも判明している。現在、国は良質な中古住宅の流通を推進し、新築住宅についても木造家屋が好まれる傾向にある。「地震に備えメンテナンス志向も強まっており事業の成長余地はある」と宮内社長。
今後の重点戦略として、営業エリアの拡大や提携先の開拓、M&Aによる「営業推進基盤・体制の強化」のほか、シロアリ以外に害獣・害虫へと防除対象を広げるなど「お客様視点に立ったサービスの拡充」を図り、「10年後には、多様な価値提供形態を有する家屋の問題解決プロフェッショナルを目指す」と力強く語る。中期経営計画では、これら重点戦略の推進により、2026年度(2027年3月期)において、売上高155億円(25年3月期予想は142億円)、営業利益19億円(同14億円)を目標に掲げる。また、株主還元については「安定的な配当の継続と、自己株取得など適正な資本政策を検討し、中長期的にROE10%以上を目指す」と述べた。
新田ゼラチン株式会社
ゼラチン、コラーゲンペプチドの国内トップメーカー

新田ゼラチン株式会社(証券コード4977/東証スタンダード)は、ゼラチン、コラーゲンペプチドの国内トップメーカーだ。竹宮秀典社長はまず「ゼラチンは牛や豚の骨や皮など、本来であれば廃棄されるはずの資源を原料としている」と、コラーゲン素材が天然由来原料であることを説明。また「コラーゲンは処理の仕方で特性が変わり、保湿、膜を作る機能を持つコラーゲン、冷やすと固まり、温めると溶ける性質を持つゼラチン、コラーゲンを低分子化して吸収性を高めたコラーゲンペプチドの3つに分かれる」と、素材の特性について触れた。
同社におけるコラーゲン素材は1900年代後半までは写真のフィルム用途が大半を占めたが、その後、食品、健康、美容、医療の分野で研究開発と用途展開を進め、新たな価値を創造してきた。現在は、お菓子のグミや医薬品のカプセルに使われる「ゼラチン」、美容・健康サプリメントなどに使われる「コラーゲンペプチド」、デザート用ゲル化剤、食肉加工品用安定剤などの「食品材料」、人工皮膚や人工骨の素材、細胞培養用などの「バイオメディカル」の4つの分野で事業を展開する。
強みの一つが高い技術力で、特許保有件数も業界1位を誇る。中でもコロナ禍以降、市場が拡大しているグミ向けでは、「菓子メーカーのニーズに応じた食感、風味の要求に応えることで、ゼラチンの売上高が直近の4年間で約2倍に伸長している」。また、1975年のインド進出を皮切りに、現在は6カ国に拠点を持ち、海外売上比率は50%を超える。特に世界の製薬工場の機能を担っているインドから世界中のカプセル市場向けの販売を大きく伸ばしているほか、成長著しいアジア・オセアニアでは代理店網を拡充し、美容向けコラーゲンペプチドの販売を強化している。さらに近年はコラーゲン素材ならではの生体親和性を生かし先端医療分野における研究開発に注力している。世界初の「コラーゲン人工腱」の研究を進めているほか、組織再生、歯科用途、心臓・血管治療用途など多くの分野で研究開発を進めている。「再生医療分野は今後世界で市場が急速に成長する領域」と期待をかける。
現在進行中の中期経営計画では「収益力及びキャッシュ創出力の抜本的強化」をスローガンに、2027年3月期に売上高430億円(2024年3月期は404億円)、営業利益
35億円(同18億円)を目標に掲げる。また「バイオメディカル事業の黒字化などによりROE9.0%を目指すとともに、グローバルガバナンスの強化にも注力することで、PBR1.0倍以上を実現し、株価1100円以上を達成したい」と述べた。
ミアヘルサホールディングス株式会社
国の2大福祉政策の子育て支援と高齢者支援を地域に展開

ミアヘルサホールディングス株式会社(証券コード7129/東証スタンダード)の社名のミアヘルサは福祉先進国のスウェーデン語で「もっと健康を」を意味する。1966年に学校給食事業で創業後、1984年に厚生労働省による院外処方の推進を受け調剤薬局事業に進出、介護保険制度のスタートを踏まえ1999年に介護事業をスタートし、女性の就業率の向上を受け2011年に保育事業に進出。現在は調剤薬局などの「医薬事業」、保育園や学童施設などの「子育て支援事業」、在宅サービス・居住系サービスの「介護事業」、学校給食用食材卸などの「その他事業」を手がける。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県に計195事業所を展開し、「子どもから高齢者まで全世代が繋がり、お互いを支え合う地域づくりに貢献する」をパーパスに掲げる。
2022年3月から24年3月期までの前中期経営計画期間中は、保育園などを54施設を運営するライフサポートを子会社化したことに加え、新たに児童育成(学童クラブ)事業にも進出。子育て支援事業を医薬事業と並ぶ収益の2本柱に成長させ、全体の売上高も2021年3月期の167億円から、24年3月期は227億円へ拡大。「国の2大福祉政策である、子育て支援と高齢者支援を地域に展開するという当社グループのバリュー実現に向けて大きく前進できた」と高橋雅彦取締役は語る。
今期からスタートした中期経営計画(2025年3月期~27年3月期)では、医薬・子育て支援・介護の3大事業が関連する社会保障給付費が2018年の122兆円から2040年の188兆円と継続的に拡大することをふまえ、基本方針に「成長戦略の加速」を掲げる。人口の社会増が続き高齢化が進む1都3県に特化し、同一区域への集中展開を図るなどして行政との強固な関係を構築するとともに、薬局、保育園、介護施設の事業部間連携を図ることでシナジー効果を狙う。そして27年3月期には売上高238億円(2024年3月期は227億円)、営業利益8億3千万円(同3億9千万円)の数値計画を掲げる。「特に介護事業においてはコロナ禍でサービス付き高齢者向け住宅の営業ができず赤字を出した出血を止めるほか、不採算の認証保育園の閉鎖を進めるなどして稼げる体質に転換していく」と述べ、特に利益の伸びを重視する方針を示した。
配当についてはここ数年30円の安定配当を続けている。また1単元(100株)以上保有する株主に対して実施している株主優待について今期から従来の9月末に加え3月末日にも贈呈することを決めた。「中計の数値計画が達成できれば増配も検討していく」と述べた。