第100回『個人投資家のための会社説明会 』開催レポート

2007年末にスタートした『個人投資家のための会社説明会』。今回でついに100回目を迎え金融教育ベンチャーのマネネCEOで経済アナリストである森永康平氏による記念講演の後、高見沢サイバネティックス、要興業、東京エレクトロン デバイスの3社が会社説明を行った。
記念講演『2025年 株式市場のポイント』
2025年は機械的なインデックス投資から企業分析して個別株に投資する時代にシフト

3社の会社説明に先立ち、今回で第100回を迎えた当イベントの記念講演として、金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEOで、経済アナリストである森永康平氏が登壇。「2025年株式市場のポイント」をテーマに、冒頭でインフレについて詳しく解説し、デフレが続いてきた日本が、コストアップ型のインフレに入っていると述べた。続いて、今後の行方を左右する日銀の金融政策変更について、円安の是正を図ろうとしていると分析。一方で、米国のトランプ次期政権の政策を分析すると、ドル高に懸念を示すSNSのコメントとは裏腹に、企業減税や関税強化、移民の抑制といったドル高容認を推進するものばかりであると指摘した。さらに、米国首脳がもたらす地政学的リスクについても言及し、現在の中心であるウクライナや中東から、アジアにシフトする可能性を示唆した。こうした予測を基に、「ここ10年ほど機械的にインデックス投資を続けて成功してきた時代から、2025年からは企業分析を行い、個別株に投資する時代になるだろう」と述べた。また、ポイントとして大きな流れを見ることを示し、AIやDXといったデジタル活用を例に挙げ、変革のスピードが速い中小企業こそ、AIやDXといったデジタル活用すべきだと語り、記念講演を終えた。
株式会社高見沢サイバネティックス
この世の中に必要不可欠な会社として、世の中に安全・安心を提供する社会インフラの専門メーカー

最初に登壇したのは、駅の自動券売機を製造販売する株式会社高見沢サイバネティックス(証券コード6424/東証スタンダード)代表取締役社長の髙見澤和夫氏。同社は、世界初の多能式乗車券自動券売機を開発して以来、駅の自動券売機やホームドア等の交通システム機器を中心に事業を展開。現在は、培われた当社独自のコア技術を応用し、セキュリティや防災などの幅広い分野で製品・システムを提供している。
髙見澤社長は冒頭、駅やオフィスビル・工場、駐車場や駐輪場、ATMなど社会の様々な場所で、同社の製品が稼働していることを例示しながら説明。社会インフラ市場で、交通事業者向け機器、一般市場向け機器、装置メーカー向け機器、ソフトサービスの4つの事業分野があることを話し、さらにニュービジネスを加えていきたいと言及。次いで、「私達はこの世の中に必要不可欠な会社を創造する仲間同志である。限りない発展に力を合わせて挑戦しよう。」という社訓を紹介し、ここから同社を「安全・安心を提供する社会インフラの専門メーカー」であると定義した。
その後、成長戦略について、中期的社会インフラの変革に対して、〈多様化する決済システムの深堀り〉と〈安全系システムの拡大〉で対応していくと語った。〈多様化する決済システムの深堀り〉では、二次元コードに対応した自動改札機の開発や「VISAのタッチ決済」の実証実験へ参加、その他の機器でもキャッシュレス化への対応を推進しているなど、具体的な取り組みについて解説した。〈安全系システムの拡大〉では、全国の鉄道駅のバリアフリー化が加速していることを背景に、ホームドア事業の加速・拡大を進め、関連システムの開発によるシステム強化に取り組んでいると語った。また最後に、グローバル化に向けた取り組みについても説明した。
株式会社要興業
東京23区内で路線化されたビジネスモデルとコンプライアンス遵守が強みの総合廃棄物処理会社

続いて登壇したのは、創業52年を迎える総合廃棄物処理業の株式会社要興業(証券コード6566/東証スタンダード)代表取締役会長の藤居秀三氏と代表取締役社長木納孝氏。同社は、東京23区を中心に、オフィス、商業施設等や家庭の廃棄物を収集運搬・処分するほか、収集した廃棄物を再資源化する事業を行っている。
最初に木納社長より同社は東京23区の事業系収集運搬のシェアがトップクラスで収益性と財務健全性が高いことを説明。また、様々な収集運搬車両や各リサイクルセンターの概要について解説した。
続いて、メイン事業である収集運搬・処分事業、収集した廃棄物を再資源化してメーカーに販売するリサイクル事業、都内23区からの手数料収入の行政受託事業で売上が構成されていると説明。収集運搬・処分事業について、詳細に解説した後、より短い距離でより多くの廃棄物を収集することが利益の最大化につながるため、東京23区内に絞り生産性の向上を図る路線化を推進してきたと解説した。さらに、現在進行中の中期経営計画の進捗状況等を説明した。
その後、藤居会長より創業の経緯、東京23区における業界の先駆者としての沿革に触れ、順調に事業を拡大してきたと語った。続けて、粗大ごみの破砕や不燃ごみの選別資源化などの同社のリサイクルセンターの現在の強みを解説した。
また、業界全体で苦労しているドライバーの確保については、3年連続のベア実施や労働時間短縮等の待遇改善で対応できていると説明。さらに、都内で一番遅いトラック
を自負するほど安全運転を徹底し、車内の運転状況も撮影するドライブレコーダーなどの装置を充実させ、事故減少につながっていると言及した。
東京エレクトロン デバイス株式会社
プライベートブランド製品などの開発を行うメーカー機能とITサービスの提供を強化する技術商社

最後に、東京エレクトロン デバイス株式会社(証券コード2760/東証プライム)代表取締役社長・CEOの徳重敦之氏が登壇した。同社は、東京エレクトロンのグループ会社であり、電気自動車やAIなどへの需要が高まる半導体、クラウドやセキュリティシステムなどを支えるIT製品を取り扱う技術商社。ウェーハ検査装置をはじめとしたプライベートブランド製品の開発などを行うメーカー機能や、ITサービスビジネスを強化しており、メーカーと技術商社の力で潜在的な社会課題を解決する会社を目指している。
冒頭、同社の沿革について触れ、半導体製造装置事業に特化した東京エレクトロンと、そこから半導体及び電子デバイス(EC)事業とコンピュータシステム関連(CN)事業が分離・独立してできた同社の関わりについて解説。最先端の半導体やITシステムなどを提供する商社機能を持つEC事業とCN事業のほか、メーカー機能を持つプライベートブランド(PB)事業の強化を推進していると語った。次いで、各事業について詳細に解説し、製品面では海外有力メーカーの半導体製品、専門性・将来性が高い分野の海外IT製品を取り扱っていること、顧客面では大手メーカーを含め、幅広い分野の2000以上のお客様を抱えていること、技術面では製品の技術サポートや保守・監視サービス、最先端技術を提供する技術サービス、設計・量産受託サービスを提供できることを、同社の強みとして説明した。
また、中期経営計画の振り返りと展望、そして「利益成長の加速」と位置付けた新期経営計画「VISION2030」(26年3月期~30年3月期)について言及。資本政策としては、持続的な成長投資、株主還元(配当性向40%目安)、財務健全性の3つを軸に、2030年3月期には、売上高3000~3500億円、経常利益率8%以上、ROE20%以上を目指し、持続的な利益成長による更なる企業価値向上を図ると語った。