新たな推し株を発見! 女性投資家から見た日経・東証IRフェア2025・東急の会社説明会―JR東日本・京急との比較編―【ハナミラ×ジャパニーズインベスターコラボ企画】

こんにちは、ハナミラレポーターの藻利です。
前回の記事では、東急株式会社(証券コード:9005 以下、東急)の沿線開発と事業戦略を取り上げました。
今回は視野を広げ、同じく総合交通・まちづくり事業を手がける京浜急行電鉄株式会社(証券コード:9006 以下、京急)と東日本旅客鉄道株式会社(証券コード:9020 以下、JR東日本)のブースを訪れ、女性個人投資家としてプレゼンを聞きました。
大学で財務会計を教える立場からも、3社の経営姿勢や成長戦略には強い関心を持っています。生まれた時から東急沿線に住み、普段はJR東日本を通勤で利用する私にとっても、それぞれの企業の話を直接聞くことができ、とても貴重な機会でした。今回は、来場者目線で感じた3社の特徴や魅力を比較しながらお伝えします。
東急・JR東日本・京急を徹底比較!それぞれの事業構造と強みをチェック
前回の記事に記載した通り、戦前は一時、日本最大の私鉄となった東急は、その時代からの事業を引き継ぎ、①土地開発(東急沿線エリアの不動産事業と、その住民を支える生活サービス事業)と②公共交通の整備(鉄軌道およびバス)を中核事業として経営を行っており、東急沿線エリアを中心に展開しています。
図表1 東急、京急およびJR東日本の事業比較
それに対して、今回日経・東証IRフェアに参加していた同業他社であるJR東日本と京急の会社概要を説明していきます。京急は、イギリスの田園都市論をモチーフに事業を展開した東急とは異なり、小さな事業を一つひとつ積み上げて、4つの事業展開を行ってきた印象があります。
一方、JR東日本も、日本国有鉄道(国鉄)の事業等を引き継いで、東急と類似した事業セグメントで経営を行っているように見えます。しかし、各事業の範囲が、東急とは異なっているケースが多く、例えば、JR東日本の交通事業には車両製造事業が含まれ、その他の事業セグメントでも、Suica事業の他、DXによる生産力向上を目指した建設ビジネス等を行っています。
日経・東証IRフェアで発見!東急が“推し活投資”に向く理由とは
では、3社の比較ポイントを説明します。今回の注目点は、事業展開の地域と3社それぞれの今後の経営戦略の2点です。
女性投資家目線の資産形成・資産運用のチェックポイントその1
・他社よりもコンパクトな沿線を活かした東急の安定した事業展開
図表2は、前回の記事でも確認しました、過去最高益を出した2025年3月期の東急の営業利益構成比です。
図表2 東急 営業利益構成比
東急株式会社 会社説明会配付資料等より作成
最も大きな構成比は、交通事業、生活サービス事業、およびホテル・リゾート事業に比べて、単価が大きい不動産事業です。また、次に大きな構成比を占めるのは、交通事業でした。
図表3 東急沿線図とその人口動態
東急株式会社 会社説明会配付資料より転載
その理由を確認していきます。東急は、そのコンパクトな沿線エリアを活かして事業を展開しています。具体的には、乗降客数が日本第2位(1日約280万人)を誇り、オフィス空室率も低い渋谷駅周辺で、オフィスや商業施設の開発・運営を進めています。他の2社に比べるとターミナル駅は少ないものの、沿線開発という中核事業の強みを活かした結果、「住んでみたい・住みごこちの良い街」ランキングに複数の沿線エリアがランクインしています。人口動態から見ても、東急沿線は人口増加が続いており、多くの人に住みやすい地域として評価されています。
それに対して、京急は、図表4のように、戦前からの事業エリアの品川エリア(東京南部の玄関口)、羽田エリア(空の玄関口)、横浜・川崎エリア(住宅・産業の集合エリア)、および三浦半島エリア(観光エリア)という4つのエリアを中心に事業を展開しています。一方のJR東日本は、図表4を見て、一目瞭然、関東、甲信越から東北まで1都16県という広大な事業エリアで大きなターミナル駅も数多く有しています!
女性投資家目線の資産形成・資産運用のチェックポイントその2
・各社の経営計画の違い
東急は、今後の経営計画についても、これまでの事業展開に沿った形で進めています。例えば、まず、渋谷地域では、旧東急百貨店本店跡地の再開発にルイヴィトンを傘下に持つLVMHグループが開発に参画して世界品質の複合施設を建設したり、谷地形の渋谷駅を多層的につなぐ歩行者ネットワークの整備や、渋谷スクランブルスクエアを首都圏最大級の商業施設へと発展させたり、国際ビジネス交流都市へと宮益坂地域も開発する等、沿線の大きなターミナル駅であり不動産事業の重要な収益源でもある渋谷駅周辺の強化に注力しています。
また、東急は、住みごこちで評価され、かつ、生産年齢人口(15~64歳)も増加傾向にある沿線地域の更なる成長を見込み、以上の渋谷駅周辺を中心とした不動産投資の収益を、沿線の生活サービス等に当てるという、エリア全体が持続的に成長する仕組みで、長期戦略を組んでいます。このことから、東急は、長期安定的な収益が見込め、その結果、投資家としても安定的に投資しやすいと解されます。
図表5 東急のビジネスモデル
東急ホームページ(https://www.tokyu.co.jp/company/about_us/)より転載
それに対して、競合他社である京急およびJR東日本に関する今後の経営戦略を少し検討してみます。2社の共通点は、インバウンド需要に対応すべく、羽田空港へ向かう路線とその沿線である品川駅の整備です。この整備については、2社が品川開発を共同で進めれば、東急が渋谷駅周辺に多くの開発投資を行っている強化戦略と同様に、品川がより拓かれ、乗降客数が上昇し、品川駅周辺および羽田空港駅周辺に経済効果が増加する可能性があります。
その一方で、京急については、JR東日本が計画する羽田空港アクセス線開通に伴い、山手線沿線からの乗降客の減少は見込まざるを得ないと考えられます。また、各々の企業による品川駅および羽田空港に関連した開発が摩擦を生んだ場合には、各社が見込んでいる収益が予想より下回る可能性もあります。
また、JR東日本の会社説明会で印象的だったシームレスな移動手段の開発(例えば、ICカードをかざさずに通過できるウォークスルー改札や、空飛ぶ車など、シームレスな移動を可能にする未来の技術など)は、長期的には開発されそうな予感もしますが、会社説明会だけを拝聴した限り、開発の専門家ではない一投資家から見ると、まだ夢物語に見え、投資するには、もう少し先かもと感じました。
したがって、両社の成長戦略は、現段階では未知数の部分を少々感じたため、渋谷駅を中心とした再開発により自社沿線を堅実に住みやすいエリアへとより発展・成長させていくイメージが持てた東急は、安心して投資しやすい推し株になると感じました。
東急様、東日本旅客鉄道様、京浜急行電鉄様、素敵なIR説明会をありがとうございました!今回の日経・東証IRフェア2025に参加したことで、いつも使用している鉄道とその将来について、 理解を深める貴重な機会となりました。
ハナミラについて

「未来デザイン×資産運用アカデミー ハナミラ」は、株式投資を中心に、女性が自分らしい人生と資産形成を両立するための実践型スクールです。20代〜60代の幅広い世代が在籍し、累計受講者は1,200名以上。生活に根ざしたサービスや、信頼できる経営者などから企業を見つける「推し活投資」を通じて、楽しみながら銘柄分析や売買タイミングの判断力を養えます。初心者でも一歩ずつ投資判断力が身につくカリキュラムとコミュニティが特長。日本女性が経済的に自立することで、日本企業と社会にも資金が循環する——そんな未来の実現を目指しています。
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藻利衣恵(もうりきぬえ)
ハナミラ歴4年。大学教員(高崎経済大学経済学部准教授・財務会計専攻)。
祖父・藻利重隆一橋大学名誉教授の遺志を継ぎ、商学系の研究者を志す。早稲田大学での学業と業務改善の成功後、高崎経済大学で講師・准教授として教育・研究に専念。大学生時代の著者と同様、会計・簿記が苦手な学生に定評があり、『楽しく学べる財務会計のクロスワード』(Amazon3部門1位)も出版。ゼミ生が、プレゼンテーション大会や交流ゼミでの優勝、公認会計士試験合格、一流企業への就職など多数の実績を持つ。プライベートでは、マナーの認定講師、およびメイクの認定講師の資格も持つ。

