データベースマーケティングの実践で「美・健康」への多様なニーズに対応――新日本製薬 株式会社 代表取締役社長 後藤 孝洋
新日本製薬 株式会社
証券コード 4931/東証マザーズ
代表取締役社長 後藤 孝洋
Takahiro Goto
人生100年時代を迎え、美や健康に対する関心の高まりを追い風に、基礎化粧品や健康食品の通販を核として事業展開する新日本製薬。競合他社と異なるポジショニングで成長を続ける同社独自のマーケティング戦略について後藤孝洋社長に聞いた。
取材・文/大沢 玲子 写真撮影/和田 佳久
拡大する通信販売・スキンケア市場で成長
―― 御社の事業概要を教えてください。
後藤 当社は1992年、福岡を拠点に創業。当初は健康食品の販売を行っていました。現在は通信販売をメインに化粧品や医薬品にも商品カテゴリーを拡大し、国内外に流通網を広げています。
お客様のライフスタイルに合わせた効果、機能性の高い商品の提供に注力しており、売上の9割弱を占める化粧品では、シンプルかつ多機能なアイテムが揃うブランド「PERFECT ONE」を展開しています。健康食品・医薬品分野では、独自の素材・配合にこだわった栄養補助食品や機能性表示食品、生薬を用いた医薬品などを幅広く取り揃え、ご提案しています。
――事業環境はいかがでしょうか。
後藤 人生100年時代を迎え、幅広い年齢層のお客様の「美」や「健康」に対するニーズの高まりと多様化、予防医学の概念の広がりなどを受け、事業の柱となるスキンケア市場は年率5%」、健康食品市場も年率2〜3%で成長しています。
主力販売チャネルの通信販売市場も年々拡大しており、なかでも化粧品や健康食品関連の同市場規模は2018年に約9,300億円まで達しております。
国内市場に加え、既に事業を展開している台湾や東南アジア諸国といった海外市場で当社が提唱するシンプルケア、高品質・安全安心な“日本ブランド”への支持が高まりを見せているのも、今後の成長につながる追い風と捉えています。
――競合も多い市場ですが、御社ならではの強みについて教えてください。
後藤 これまで順調に事業を拡大してきた背景には、店舗販売を中心とする大手化粧品会社や、その他同業他社と競合しにくい独自のポジショニングで成長してきたことが挙げられます。
そのポイントの一つが、主要顧客であるミドル・シニア世代の女性向けスキンケア商品の定番ブランドを保有していることです。06年より化粧品事業を始め、14年にリブランドを図った「PERFECT ONE」は、年齢肌に着目し、「シンプルケアで効果を感じていただける品質」を追求して改良を重ねてきました。また、購入金額に応じて割引率がアップする「ステージ特典」を設けるなど、無理なく続けられる購入システムの設計にも努めています。その結果、1つで6役をこなすオールインワン美容液ジェルは年平均20.2%で成長し、オールインワンスキンケア市場において3年連続で国内売上第1位を獲得。オールインワンジェルに限らず当社のお客様はリピーター率約7割を達成するに至っています。
二つ目に、創業以来の積み重ねとして、400万人に上る顧客データベースを活用したマーケティングを実践していることが挙げられます。当社では、コールセンターに寄せられる月間約20万件のお問い合わせやご意見、オンラインショップの購買履歴などのデータベースを収集分析しています。このほかにも、市場調査や広告効果のデータ、店舗からの声などを踏まえ、新商品の開発や個々のお客様に合わせたご提案・継続利用促進につながる施策に活用しています。
また、当社は工場を持たないファブレス企業として、商品の製造を外部のパートナー企業に委託しています。商品企画、品質管理に集中するスリムなビジネスモデルも、スピーディかつ適正な製品の改良・改善、新商品投入を進める上でのアドバンテージとなっています。
研究開発においては、外部の専門機関や大学などとも連携し、オープンイノベーションのスタイルでオリジナル原料の開発や、さらなる効果の検証も実施しています。こうした先端的技術、蓄積してきた知見によりさまざまな機能性を持つ商品のラインアップが実現しています。国が定める医薬品の安全基準であるGQP・GVP体制により、商品をお届けするまでの品質・安全管理を徹底している点も当社のこだわりです。
海外展開の加速化で世界ブランドを目指す
――業績の推移、株主還元の考え方についても教えてください。
後藤 2015年3月期以降の売上高は年平均13%と拡大し、今期予想の333億円超を目指しています。経常利益率も安定的に推移しています。今回の上場を成長フックに企業価値向上を図り、さらなる業績拡大を図る所存です。
株主還元については、保有株数に応じて当社商品をお届けする株主優待制度を導入しました。配当性向は現状20%ですが、将来的には30%への引き上げを想定しています。
――今後の成長戦略をお聞かせください。
後藤 課題の一つが当社の競争力の源泉であるデータベースマーケティングの強化・拡充です。お客様とのコミュニケーションのさらなる質の向上も図りつつ、顧客層の拡大や利用継続率の向上、LTV(ライフタイムバリュー=顧客が生涯にわたってもたらす利益)の最大化に向け、上場で得た資金も投入しながらECチャネルの強化を図ってまいります。
次に挙げられるのが新たな顧客ターゲットに向けたブランド作りです。直営店での顧客接点の拡充に加え、SNSの活用による認知拡大などを進め、30代のミニマムライフ世代に向けた新商品の投入、男性カテゴリー商品の開発にも着手していきます。
海外展開の加速化も重要な課題です。現在、台湾での通信販売、中国での越境EC、タイ、香港で流通販売を行っています。今後は海外企業との新たな連携も摸索しながら、東南アジアを中心に販路を拡げ、海外売上比率を引き上げていく計画です。
今後もお客様の人生を豊かにする製品・サービスを提供し続けるとともに、株主の皆様および社員の幸せも追求し、パートナー企業、地域社会にも貢献できるよう新たな価値創造にまい進してまいります。