ウェブサイトの構築・運用に関するサービス全般をワンストップで提供――株式会社インフォネット 代表取締役社長 岸本 誠
株式会社インフォネット
証券コード 4444/東証マザーズ
代表取締役社長 岸本 誠
Makoto Kishimoto
企業や団体の活動にウェブサイトが欠かせない時代。そんななかでニーズが高まっているのが、専門知識のない人でもサイトを管理・運用できるCMSというサービス。CMSを軸としたウェブサイの構築で高い評価を得るインフォネットの岸本誠社長に、同社の強みや成長戦略を聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
誰でも容易にウェブサイトを管理・運用できるサービス
―― 御社設立の経緯とビジネスの概要についてお聞かせください。
岸本 当社は2000年に私の出身地である福井県で創業し、2002年に法人化しました。当時は、企業が続々とホームページを開設し始めた頃で、当社はそういったウェブサイトの制作に取り組んできました。ウェブサイト制作というのは建築業界に似ている部分があり、単にデザインを作るだけではありません。少ないクリック数で目的のページにアクセスできるかといった利便性も必要ですし、サーバーやシステムなどがすべてそろわないとネット上で閲覧できません。これらすべてをワンストップでカバーしていることが創業当初からの当社のこだわりであり、強みでもあります。
2011年には当社のビジネスの主力である「infoCMS」シリーズをリリースしました。CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)とは、プログラミングの知識のない人でもウェブサイトを簡単に更新できる仕組みのことです。従来、そういった作業にはプログラミングなどの専門知識が求められ、多くの企業は外注に依頼して更新をしており、時間も費用も掛かっていました。これに対しCMSでは誰でも簡単にスピーディな情報発信が可能で、現在ではほとんどの企業のホームページに何かしらのCMSが利用されています。
当社が提供する「infoCMS」はその使いやすさから多くの企業から好評を得ており、CMSの国内シェアにおいて4年連続で第1位となっています(※)。
※出典:ITR「ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/電子契約サービス市場2019」
「ITR Market View:ECサイト構築/決済代行/CMS/SMS送信市場2018」
SaaS型CMS市場:ベンダー別売上金額シェア(2015~2018年度予測)
――「infoCMS」以外にも様々なサービスを提供していますね。
岸本 CMSを軸にお客様から寄せられる要望に幅広くお応えしていった結果、派生的に様々なサービスが展開されていくことになりました。「infoCRM」は事業形態などに応じて最適なカスタマイズが可能な顧客管理システムで、業務フローを劇的に改善して顧客満足度の向上を図ります。「Q&Ai」はAI(人工知能)による文章解析とディープラーニングが強みのチャットボット(自動会話プログラム)で、ウェブサイト訪問者のニーズに柔軟に対応し、求めている情報を的確に提供します。また、他にもメール添付ができない大容量ファイルの送受信サービスや成果報酬型のSEO(検索エンジン最適化=検索上位にランクインさせる)対策などを手掛けています。
ワンストップであらゆるソリューションを提供
―― 競合他社に対する強みとしては、どういったことがありますか?
岸本 「infoCMS」は豊富な管理機能と高いセキュリティを実現しながら、抜群の操作性を誇っているのが特長です。他社ではCMSのみを提供しているところもありますが、当社は企画段階から入って、デザインやプログラミング、自社サーバーによるインフラの提供、サポートに至るまでをワンストップで行います。ウェブサイト構築におけるあらゆるソリューションを提供できること、それを成しえる人材がそろっていることが最大の強みだと言えるでしょう。
当社では、営業担当者やディレクターはもちろん、デザインやシステムといった開発サイドの社員までお客様と直に接しています。そうすることで的確にニーズを捉え、お客様が抱えている課題を徹底的に解決できるだけでなく、お客様のニーズの変化もいち早く察知し、柔軟に対処できるのです。
こうした体制により、当社はお客様から高い支持を獲得しており、すでに1,300サイト以上に及ぶ企業・団体のホームページ制作を担ってきました。当社のビジネスモデルは、お客様の増加に伴うサブスクリプション(定額課金)の積み上げと、それに連動してサイトの追加構築が発生する「収益底上げ型」となっています。売上高は堅調に拡大中で、直近5期の年平均成長率は17.23%に達し、2019年3月期は前期比11.2%の成長となりました。
――今後の展望についてお聞かせください。
岸本 ウェブサイトの構築とCMSについては堅調に成長しており、市場も伸びています。この分野に関しては単に業績や売上を伸ばすだけでなく、リーディングカンパニーとして、「世の中のために良いモノを作っていく」という心構えを持っております。CMSに「Q&Ai」を組み込むことで、より良いウェブサイト作りができると考えており、このシナジーの創出が成長戦略の一つです。
もう一つの成長戦略がIoTプラットフォームの構築です。具体例として、2018年にApaman Networkとパートナー契約を結び、同社が展開する「AIスマート・ルーム・プロジェクト」に技術参加しております。「AIスマート・ルーム」とは、スマートスピーカーやスマートリモコンを備え、音声やスマートフォンとの連携で快適な生活を過ごせるという物件で、アマゾンのAIアシスタント「Alexa」が採用されています。当社は同物件向けのAlexaスキル(拡張機能)を開発しており、第一弾として、新生活を始める際の手続きをサポートする「入居後手続きチェックリスト」や、ゴミ回収日を教えてくれる「今日は何のゴミの日」といった4つの機能をリリースしました。現在、国を挙げて「ソサエティ5.0(超スマート社会)」の実現を目指しており、当社としても今後も積極的にIoTの分野にチャレンジしていきたいと思います。
こうした成長戦略を推進していくためにも、当面のところ利益は内部留保に回し、業績の拡大を通じて株主のみなさまのご期待に応えていきたいと思います。そのうえで成長を果たした暁には、配当などを通じた株主還元を前向きに検討するつもりです。