グループ会社のシナジーを活かしてくらし×ITの新たなサービスを創造――gooddaysホールディングス株式会社 代表取締役社長 小倉 博
gooddaysホールディングス株式会社
証券コード 4437/東証マザーズ
代表取締役社長 小倉 博
Hiroshi Ogura

リノベーション、メディア、ITという異なる領域を融合し、人々の暮らしの質の向上に貢献する事業を展開しているgooddaysホールディングス。大手企業との資本・業務提携を推進する小倉社長に話を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
3社の持つ強みを融合し抜群の相乗効果を生み出す
―― 御社の事業内容を教えてください。
小倉 当社は、賃貸向け物件のリノベーションを扱うハプティック、お部屋探しサイト・アプリ「goodroom」を運営するグッドルーム、ITビジネスを扱うオープンリソースという子会社3社の持株会社です。3社の強みを融合し、「暮らしTechセグメント」と「ITセグメント」の2つの領域で事業を展開しています。
ハプティックとグッドルームが担当する暮らしTechセグメントでは、リノベーション、不動産仲介、メディアの3事業に加えて、昨年からリノベーションした物件をシェアオフィスやサービスアパートメントとして提供・運営する事業も開始しています。
オープンリソースが担当するITセグメントでは、大手小売業や金融機関向けシステムを中心にITサービスを提供する外部顧客向けのビジネスのほか、内部グループ向けにお部屋探しサイトのシステム運営やオンライン賃貸申込サービス「コノミー」の開発などを行っています。
―― 市場環境について教えてください。
小倉 近年の少子高齢化に伴う人口減少により新築物件は減少していますが、逆に空き家は増えています。空き家を改装して需要を喚起する賃貸住宅のリノベーション市場はこれからも安定的に伸びていくでしょう。また、くらし×ITという市場は、不動産関連だけに限られるわけではありません。例えば、家具市場は3兆円以上、雑貨市場でも6千億円以上という市場規模があります。
メディアとの連携により大きな成果を実現
―― 2つのセグメントの強みはどのような点にありますか。
小倉 暮らしTechセグメントにおいては、goodroomによる仲介とリノベーションブランド「TOMOS」のパッケージ販売により、引渡し前の入居率が60%を超えています。工事が終わってから募集をかけるのではなく、募集をかけて入居者が決まってから工事に入るケースも増えており、オーナーの方々には大変喜ばれています。通常ですと建物の劣化とともに賃料が下がっていきますが、リノベーションをすることで平均賃料が約13%もアップしています。リノベーションの見積りは不明瞭なことが多いのですが、面積当たりの単価を提示し、リーズナブルでわかりやすい定額パッケージから選んでもらうことで早期に契約していただけるようにしています。さらに、シェアオフィスやサービスアパートメントの運営を開始したことで継続的な事業収入も加わり、競争力が一層高まりました。
goodroomの月間アクティブユーザー(MAU)は19年3月末現在で約67万人にまで成長しました。賃貸物件の取扱数を増やしていくことで、200万人を目指していきます。賃貸の利用者は多くても2年に1回くらいしか引っ越しをしないため、飲食系のレビューサイトのようにコメント数を求めるのは難しいという現実があります。そこでアルバイトを含めた当社スタッフがユーザー目線で記事を書いているのですが、それが若いユーザーに支持されています。日当たりがよくないなどの悪条件もはっきり書くことで信頼度が高まっているようです。goodroomというメディアがあるから賃貸に特化したリノベーションができ、リノベーションがあるからメディアを利用するエンドユーザーが増えるという好循環ができています。
ITセグメントにおいては、150名を超える自社エンジニアを抱えているのが強みです。オープンリソースはこれまでに百貨店や量販店向けの巨大な基幹システムを開発し、その「維持」を責任を持って担当して参りました。今後も事業を拡大しつつ新しいクラウドサービスも展開していきます。長年培ってきた外部顧客向けの知見を活かし、暮らしTechセグメントを強力にサポートしていきます。

有力企業との資本業務提携により差別化と事業の拡大を図る
―― 今後の成長戦略を教えてください。
小倉 暮らしTechセグメントにおいては現在、複数の大手不動産企業と賃貸物件におけるIoT活用や賃貸オフィスリノベーション、地域活性化などで協業しています。これら有力企業とのパートナーシップをさらに拡大させ、成果を上げていく方針です。
具体的にはグッドルームが開発・提供するオンライン申込サービス「コノミーオンライン」や「スマート内覧」のほか、賃貸契約における重要事項説明をオンラインで行う「IT重説」や電子契約といった各種サービスとの連携を視野に入れ、賃貸物件の入居検討段階から賃貸借契約締結までの流れの効率化を図ります。これにより、お客様にとってより利便性の高いサービスを提供していくことを目指しています。
ITセグメントにおいては、IT人材不足を解消するため、新卒採用に力を注いでいます。グループ全体としてもこの4年間で約100名の新卒を採用するなど人員を増やす施策を続けています。
―― 業績予想についてお聞かせください。
小倉 20年3月期は暮らしTechセグメントの売上高27億円、ITセグメントの売上高33億円、連結で売上高60億円を見込んでいます。営業利益は前年より19 .3%アップの3億7千万円の予想です。今後は暮らしTechセグメントの売上高を増やしていくことで、利益率を高めていきたいと考えています。
当面は今後の成長のために資金が必要となりますので、上場によって調達した資金も含めてシステムへの投資や人材の採用・育成に使わせていただきますが、将来的には株主様に還元していくことを基本方針としています。