新しい事業を次々に創出するスマートフォン・アイデアカンパニー――and factory株式会社 代表取締役社長 小原 崇幹
and factory株式会社
証券コード 7035/東証マザーズ
代表取締役社長 小原 崇幹
Takamasa Ohara
『日常に&を届ける』というミッションを掲げ、スマートフォンを基軸とした事業を展開するand factory。創業4年でマザーズ上場を果たした小原崇幹社長に成長性と収益性を両立させる秘訣について聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
マンガアプリが急成長 IoT事業も全国に展開
──御社の事業内容についてお聞かせください。
小原 セグメントはAPP(スマートフォンアプリ)事業とIoT事業の2つで、双方ともスマートフォンを基軸にしています。APP事業のスタートは「最強シリーズ」というソーシャルゲームの攻略アプリを作ったことです。そこで多数のユーザーと触れ合い、アプリがどのようにダウンロードされ、どのように使われているのかを学びました。その経験を踏まえて金脈であったマンガ領域にチャレンジしました。現在ではスクウェア・エニックス、白泉社、集英社など、多くの大手出版社とタッグを組ませていただいています。月間アクティブユーザー数も300万人を超えました。
もう一方のIoT事業で当社が最初に取り組んだのは宿泊領域です。宿泊領域は長い間ビジネスモデルがフィックスされていて、運営も非効率なところが多く残っています。当社はそこにテクノロジーを導入してビジネス化しています。それをわかりやすいかたちで作ったのが「&AND HOSTEL」です。IoTデバイスを集結させ、近未来空間が体験できるスマートホステルとして話題となり、現在6店舗を展開しています
また、宿泊施設向けのサービスとして、客室の予約状況や料金などの情報を一元管理できるクラウド型のシステムや、宿泊施設や周辺の観光案内などを配信できる客室タブレットサービスも手掛けています。これにより施設側の省人化や省エネ化が図れ、宿泊者側も利便性や快適さが向上します。
このほか、IoTデバイスの各メーカーからAPI開放してもらうことで、複数のIoTデバイスを一括で操作できるプラットフォームアプリ「&IoT」を開発・提供しています。
プロフェッショナル人材が集結し高い専門性を発揮
──御社の強みはどこにありますか。
小原 人です。実は学生時代から起業をしていまして、20歳からの10年間でたくさんの人たちと働きました。その中でも優秀で「一緒に仕事をしたい」と思った人たちに声を掛け創業しました。そのため、創業時から第一線で活躍している人材が揃っていました。
創業時から上場を見据えて証券会社や監査法人に対応するバックオフィスの人材も用意しました。また、最初から人事の専門家がいて人事制度もしっかりしているため、離職率は低いです。不動産領域という許認可制の事業に関しては一定のハードルがありましたが、宅建士などの人材が内部にいたためクリアできました。どういう段階でどこから黒字化できるかが見えていたので、ベンチャーキャピタルからの資金調達はゼロでした。
──上場の目的を教えてください。
小原 経営の安定化とさらなるステップアップのための通過点です。当社はベンチャーの割に既婚者が多く、最初に集めたメンバーも大半が既婚者でした。経営が安定しないと、本人だけでなく家族の生活まで左右してしまいます。金融市場にアクセスしやすく、倒産リスクを下げられる上場は絶対にやるべきだと思っていました。世の中には新しいビジネスが次々と誕生しているので、当社としては、常にチャレンジできる体制をとりたいと考えています。上場で調達した資金はその機会のための余剰資金というイメージでとらえています。
パートナー企業との連携を強化し事業領域を住宅にも拡大
──今期の業績予想についてはいかがでしょうか。
小原 売上高30億7000万円(前期比60.2%増)、営業利益5億1100万円(同40.0%増)の予想です。当社はデロイト トウシュ トーマツが発表したテクノロジー・メディア・通信業界の成長率のランキングにおいて、アジア太平洋地域の上位500企業に選出されました。国内企業のランキングでは9位に選出されています。成長率は売上高を基準としているため売上規模がまだ小さい未上場企業のほうが有利なのですが、当社は上場企業でありながら成長性でも負けないくらい力強く伸びていこうと思います。成功する確率が高い事業で確実に勝っていき、収益性も高めていきます。
──中長期的な展望についてお聞かせください。
小原 APP事業とIoT事業という2軸をしっかりと育てていきます。マンガアプリにおいては、新規アプリを複数リリースする予定です。日本市場では圧倒的なナンバーワンを目指します。IoT事業においては、さまざまな企業との業務提携により、宿泊施設を軸として展開領域を拡大していきます。
例えば横浜市とNTTドコモと三者で立ち上げた「未来の家プロジェクト」では、“住むだけで健康になる家”の実現を目指し、実証実験を行っています。この家の中に組み込んでいるデバイスは、ほとんどがもう既に世の中で売られているもので、当社が開発したアプリがあれば、それら全てにコネクトしてコントロールすることが可能です。プロジェクトメンバーには相鉄グループ、富士通、資生堂など多くの企業が参画していますので、そう遠くない将来にビジネス化できるのではないでしょうか。アプリの会社である当社が、家まで売っていくようになれば、売上高も大きく伸びるでしょう。
──株主還元については、どのようにお考えですか。
小原 当面は資金を成長性のほうへ向けていきますが、中長期的には株主還元をしていこうと考えています。当社はユニークな宿泊施設を全国に作っていますので、株主の方々が旅行をした際に無料で宿泊できる福利厚生のようなサービスも視野に入れて検討しています。
API…Application Programming Interfaceの略。ソフトウェアの機能を共有できる仕組みのことで、これによりアプリケーション同士の連携が可能になる。