「地域」と「人」に貢献し続ける総合不動産ビジネスを展開――香陵住販株式会社 代表取締役社長 薄井 宗明
香陵住販株式会社
証券コード 3495/JASDAQスタンダード
代表取締役社長 薄井 宗明
Soumei Usui

地盤の茨城県を中心に、現場を知りつくしたうえで地域密着型の包括的な総合不動産事業を展開しているのが香陵住販だ。上場を機に、マンションデベロッパーやハウスメーカーとの提携関係の強化も視野に入れる薄井宗明社長に話を聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
エリアの特性を熟知し高収益物件に的を絞る
──御社のビジネスの概要についてご説明お願いします。
薄井 当社は1981年に水戸市内で創業し、地盤である茨城県を中心に地域密着型の総合不動産事業を展開しています。不動産流通事業と不動産管理事業という2つの事業を柱としており、不動産流通事業においては茨城県内でトップクラスの仲介実績を挙げております。
また、不動産管理事業ではグループ所有不動産の賃貸や賃貸用不動産の管理業務のほか、コインパーキングやコインランドリー、太陽光発電といった多様な商品の開発も行っております。一方、都内では上野の東京支社を拠点に、空室物件へのテナント誘致をはじめとするリーシング事業や不動産の買い取り・売買仲介、賃貸管理などを展開しています。
――競合他社に対し、御社はどういったポイントで差別化を図っていますか?
薄井 当社の強みは、日頃から地域に密着し、各エリアの特性を熟知していることです。たとえば、水戸市の中心街では大企業の支店が多く、転勤族向け鉄筋コンクリート造賃貸マンションの需要が見込めます。これに対し、大学の周辺では木造アパートを建てるといった具合です。こうしてエリアの特性を踏まえた商品開発の提案を行っているうえ、当社には茨城県内において長年培ってきた実績とノウハウがありますから、高い収益性が見込まれる不動産に的を絞って開発することが可能です。東京においてもその知見を生かし、市場をしっかりと把握したうえで開発を進めています。その結果、オーナー様に競合他社よりも高い利回りを享受していただけるわけです。
さらに、地域密着型の金融機関と太いパイプを築いていることも当社の強みだと言えるでしょう。不動産ビジネスでは資金の借り入れが不可欠となってきますが、リーマンショック後が典型例であるように、大手金融機関は突如としていっせいに融資を抑制することがあります。その点、地域密着型の金融機関は個別の対応が基本となっており、お陰様で当社も資金調達に苦労することなく順調に事業を進めることができました。

売上が着実に積み上がるストック型の収益構造を確立
──御社はどのようなビジネスモデルを確立しているのでしょうか?
薄井 設立した以上、会社はどのようなことがあろうとも継続していかなければならないというのが創業以来の私の信念です。そこで、売上が着実に積み上がっていくストック型の収益構造を確立することに注力してきました。それが奏功し、リーマンショックのような逆風下でも着実に業績の拡大を果たしてきています。
目先で大きな収益を期待できるのが不動産販売ですが、そればかりを追い求めると当然ながら市況や景気の浮き沈みなどの影響を受けることになります。その点を踏まえて、売買だけに特化せず、賃貸仲介や賃貸管理、内装工事といった不動産に関わるサービスを全方位的に提供しているのが当社の大きな特徴です。
まず、開発した賃貸物件を販売した時点で、当社は第1の売上を確保できます。そして、オーナー様に代わってその物件の入居者を募集することによって、賃貸仲介手数料という第の売上を、さらに、その物件の管理事業も受託することによって第3の売上も得られ、入居者の退出時に発生する原状回復作業(内装工事)で第4の売上も計上できます。
新たな物件を開発していくことで、それらの賃貸仲介や管理業務による売上も当社の収益基盤に着々と積み上がっていく、いわゆるストック型のビジネスモデルになっており、新たな開発物件でも前述した第1~第4のサイクルを循環させていくことで、将来にわたって安定的な収益を期待できるわけです。
加えて、子会社ジャストサービス株式会社との連携により、リフォームやリノベーションに関する提案力も強化できました。老朽化した物件のオーナー様にリノベーションによるバリューアップを提案することで、さらに長期にわたるお付き合いが可能となってきます。
永く継続していくという企業としての大前提を果たすために、こうしたビジネスモデルの確立に加えて、当社では創業当初から3つの方針を貫いてきました。お客様の満足、働く従業員の幸福、地域発展への貢献に取り組んでいくというものです。そのため、業務での丁寧な接客対応はもちろん、商店街の活動にも積極的に参加し、地域と密接に関わっていくように努めてきました。そういった地道な行動こそ、当社のファンを増やすことに結びつくと考えているからです。現に、親子2代にわたるお付き合いとなっているお客様も少なくありません。
──足元の経営環境と御社の業績の状況はいかがでしょうか?
薄井 スルガ銀行の過剰融資問題を機に、投資用不動産向けのローン審査が厳しくなっているようです。しかしながら、当社のビジネスはそういったものとは一線を画しており、不動産流通事業と不動産管理事業がともに順調に拡大傾向を示してきました。バブル期に取得した本社ビルの減損処理を行った2007年9月期以降、純資産も一貫して拡大傾向を続けており、16年9月期からは3期連続で増収増益も達成しました。
お客様や当社の従業員のみならず、株主の皆様にも喜んでいただくことが上場企業の使命です。したがって、株主還元も重要施策と捉えており、18年9月期に34円としていた配当を、19年9月期には38 円へと増額する予定です。より多くの還元を行ううえでは今後も安定的な成長を続けることが前提となり、そのためにも管理戸数の拡大が求められます。現在、当社では約1万4,000戸の管理を担っていますが、まだ開拓が進んでいないエリアへの出店などを通じて当面は1万5,000戸まで、さらにその先では、東京での事業展開を強化して2万戸の達成を目指します。